「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」 【監督 湯浅弘章。2018年】
吃音の主人公・志乃(南沙良)は、高校入学早々の自己紹介がうまくできずに苦しみ、同級生から奇異の目で見られるが、加代(蒔田彩珠)はからかったりせず、親しくなる。加代は音楽が好きで、ギターの練習をしているのだが、歌が下手なので人前で歌えない。 なぜか志乃は歌うことはできるので、二人でストリートミュージシャンのようなことを始める。 ここからの、二人のシーンが美しい。海辺の街が舞台なので、海沿いを走り、小舟の中で横になり、二人だけの時間の中に生きる。 歌うのは「あの素晴らしい愛をもう一度」。ギターは本人が弾いているのか、きちんと練習はしているがうまいというほどではない。あるいはプロがわざとそう聞こえるように弾いているのか。 この歌を歌いたくなるのはわかるのだが、3番で転調するので、実は初心者には難しい。 二人だけの時間は続かず、お調子者の同級生(萩原利久)の乱入などがあり、世界は壊れてしまう。 二人で目指していたはずの文化祭がクライマックス。 ここは私の好みではなかった。しかし、原作者の、吃音者としての願望の発露なのだろう。 主演の二人が自然で好感が持てる。非常に爽やかな青春映画だ。