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じゃくの音楽日記帳

音楽を、とりわけマーラーの音楽を愛好するものです。演奏会の感想を中心に、感じたこと思ったことを書いて行こうと思います。(ずっと以前、ぼんとろさまのマーラー掲示板や、最後のころの招き猫に、じゃくの名前で書いていたことがあります。それらが惜しむらくも休止状態となって久しく、長年はじめようと思っていたブログ、生来の不精癖ゆえにまったく手付かずでした。今度やっとはじめることにしました。)
2019.12.30
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今回のギルバートの6番演奏を聴いたのを機会に、ハンマー3回についていろいろと調べてみました。この記事はその3(最終回)として、今回のギルバートの3回ハンマーについて書きます。


1  ギルバートの3回ハンマーの背景:二つの系譜?

さて、ギルバートが3回叩かせたのはどのような背景から出てきているのか、これを想像するとちょっと面白いです。やはり3回ハンマーを実行している佐渡さんと違って、ギルバートはバーンスタインの直接の弟子ではありませんが、ニューヨクフィルの音楽監督だったし、ご両親ともニューヨークフィルのヴァイオリニストですから、バーンスタインの影響が間接的にでもあることは想像できます。

ギルバートが生まれたのが1967年2月。バーンスタインがニューヨークフィルで6番を演奏・録音したのが同じ年の4~5月です。この録音に、ギルバートのお父さんは参加したのでしょうか。お母さんは産休中だったのでしょうか(^^)。

そしてその前にミトロプーロスがいたわけですね。

ミトロプーロス(1896-1960)は、1949年にニューヨークフィルの常任指揮者となり、1951年 から1957年まで音楽監督となりました。バーンスタイン(1918-1990)は、ミトロプーロスを引き継ぐ形で、1957年からニューヨークフィル首席指揮者に、1958年から1969年まで音楽監督を務めます。ウィキペディアによればバーンスタインは、ミトロプーロスの影響でマーラーの交響曲に興味を寄せ、マーラー作品を指揮するにあたってミトロプーロスに力づけられた、ということです。

バーンスタインが、ミトロプーロスの6番演奏、特に1955年の演奏(3回ハンマー)を聴いた可能性は高いと思うし、ミトロプーロスがバーンスタインに少なからず影響を及ぼしていると考えるのは自然だと思います。すなわち

ミトロプーロス→バーンスタイン→ギルバート

というニューヨーク・フィル音楽監督の系譜の可能性がひとつあります。

それから、もう一つの系譜の可能性があります。アラン・ギルバート(1967-)の英語版Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Alan_Gilbert_(conductor)


によると、ギルバートは1994年にゲオルグ・ショルティ賞というものを獲得し、ショルティの1週間のプライベートチュータリングを受けたということです。ですのでショルティとのつながりもあるということで、もしかしたらショルティの影響を受けて、ショルティ→ギルバートという系譜も考えられます。あくまで単なる想像(妄想)です(^^)。

ところでギルバートはニューヨークフィルでマーラー6番を2回振っています。1回目は2010年9月29日30日、10月1日です。2回目は2012年5月2日です。どちらも第2楽章アンダンテ。1回目のプログラムノートにギルバートが文章を寄せていて、それもニューヨークフィルのウェブサイトで見ることができます。一体どんなことが書いてあるのだろうと期待して読みました。楽章順とハンマーの回数はともにこの曲の解釈上重要、と書いてありましたが、どう重要なのか、ギルバートが第二楽章アンダンテとハンマー3回を選択した具体的な理由については、何も書いてありませんでした。ご想像にお任せということでしょうか。


2  今回のギルバート&都響の使用楽譜:改訂版に3回目のハンマーを追加

さて今回の都響との演奏でのハンマー3回は、バーンスタインやショルティと同じように、改訂版(全集版)にハンマーを追加したのでしょうか、それとも初期版(第1版、第2版)を使ったのでしょうか。

僕は初日の演奏会では3回目のハンマーに目がいってしまっただけで、他の楽器をみていませんでした。そもそもこの箇所の他の楽器のオーケストレーションの違いを理解していませんでした。そこで二日目の演奏会を迎える前に、金子氏の本を読み直し、スコアも眺めたりして、その1その2の記事に書いたようなことを整理しました。そのようにして準備を整え(^^)、二日目の演奏会に臨みました。

二日目にしっかり視認したところ、3回目のハンマーのところで、先行するチェレスタが入っていて、テューバとトロンボーンは参加せず、ティンパニは一人でした。ギルバートは改訂版(全集版)に単にハンマーを追加した(=バーンスタインやショルティと同じ)ということが確認できました。


3 ギルバートの3回ハンマーについての個人的感想

6番の楽章順については、個人的には第三楽章アンダンテを好みます。でも、それはそれとして、第二楽章アンダンテであっても、第三楽章アンダンテであっても、良い演奏は良いし、そうでない演奏はそうでない。当たり前ですけど、これまで聴いたいろいろな演奏から、そう思います。ハンマーについても同じと思います。当たり前ですが、ハンマーが2回でも3回でも、良い演奏は良いし、そうでない演奏はそうでない。このことに尽きると思います。

そもそもCDで聴くと、ハンマーが2回か3回かは僕には良くわかりません。しかしそれと対照的に、演奏会で聴くと視覚的効果が非常に大きいです。金子氏がそのあたりのことを的確に指摘しています。以下に引用すると、

”むしろ、音だけでこの作品を語る場合、ハンマーの数を云々すること自体が無意味に思えるほどだ。
 逆に実演だと、視覚的にハンマーが目立ち過ぎ、興味本位な方向に走りかねないのが問題となる。”
金子健志著「こだわり派のための名曲徹底分析 マーラーの交響曲」(1994年 音楽之友社、176ページ)

視覚的効果を逆手にとったと言う意味では、佐渡&日フィルの演奏が、打楽器奏者のパフォーマンスを含めて、印象に残るハンマーでした。当時の自分には好印象でしたが、嫌う方もいただろうと思います。

個人的な好みで言えば、マーラーが3回目のハンマーを削除するとともに、他のオーケストレーションもいろいろと変更しているのですから、そこにハンマーだけ追加するのは、ちょっと変な感じがします。しかしそうは言っても、他ならぬバーンスタインがやっていることですし、3回ハンマーの「重み」もわかります。バーンスタインの演奏を、視覚的情報を抜きにして音としてCDで聴いても、この部分の演奏に説得力があるのは、単にハンマーの回数ということを越えて、バーンスタインの情念の強さから来る説得力だと思います。

そういう点からすると、今回のギルバートの演奏は、前の記事にも書いたように、個人的には第一・第二楽章のやさしさ温かさに大きな魅力を感じた一方で、第四楽章は、どちらかといえば形の整ったすぐれた演奏と感じたものの、闘争を凄絶に描き切った第四楽章という感じは受けませんでした。このような演奏で3回目のハンマーを追加することは、全体の方向性とはあまりマッチしないように感じました。

もっとも、ギルバートが真に目指す6番演奏というか、3回ハンマーを必要とする内的拠点は、今回僕がわからなかったもっと深いところにあるのだろうと思います。さきほど二つの系譜の可能性を書きましたが、ニューヨークフィル音楽監督の系譜の可能性とはいっても、バーンスタイン以後7人いる音楽監督のうち他に3回ハンマーの指揮者はいなさそうだし、ショルティの系譜の可能性と言っても、他にもショルティから影響を受けた指揮者は大勢いることでしょう。ギルバートが第二楽章アンダンテの楽章順とともに3回ハンマーを選んだ内的必然性は、彼自身が言葉で語らずとも、わかる人にはわかるだろうし、わからない人にはわからないのだろうと思います。今後彼のマーラー演奏を聴いていくと、僕にもわかってくるのかもしれません。






Last updated  2019.12.30 22:57:23
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じゃく3@ Re[1]:井上道義&読響のマーラー3番を聴く(12/11) 嫌好法師さんいつもありがとうございます…
嫌好法師@ Re:井上道義&読響のマーラー3番を聴く(12/11) いやあ、いつもながら感心して読ませて頂…
じゃく3@ Re:関西グスタフ・マーラー響の3番を聴く(その1)(07/11) 自己レスというか、 間違いに気が付いたの…
じゃく3@ Re:アルディッティ弦楽四重奏団を聴く(12/05) 徹底して近現代のみのプログラム、潔いで…

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