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じゃくの音楽日記帳

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2009.11.09
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小田原フィルハーモニー交響楽団によるマーラーの交響曲第3番を聴きました。
11月8日、小田原市民会館大ホール。

指揮 三河正典
アルト独唱 菅 有実子
児童合唱 南足柄ジュニア・コーラス
女声合唱 小田原フィルハーモニー交響楽団第100回定期演奏会記念合唱団
(協力:東京音楽大学   VOCE・SONARE)

管弦楽 小田原フィルハーモニー交響楽団


聴きにきて良かったです。指揮三河氏の棒のもと、皆が一体となって歌い上げたすばらしい音楽に浸り、心打たれました。

僕はマーラー作品なら全て好きですが、なかんずく偏愛しているのがこの3番です。3番の演奏会にはできるだけ聴きに行くようにしています。近年3番の演奏頻度が増えてきて、来日する海外オケ、国内のプロオケ、アマオケで、随分取り上げられるようになってきました。しかしこのところちょっと3番演奏会が途絶えていました。今回、友人から小田原フィルというオケが3番をやる、という貴重な情報を得て、矢も盾もたまらず、小田原フィルがどんなオケかは知らずとも、ともかく小田原に駆けつけることにしたのです。僕にとって約2年振りとなる、久々の3番演奏会です。

この日はいいお天気で、東京から約2時間、電車にごとごと揺られ、心地よくまどろみながら、小田原駅に到着しました。駅から市民会館までの道を地図を頼りに歩いて行くと、秋空にそびえ立つ小田原城天守閣がだんだん近づいてきて、やがて紅葉の始まった桜並木が並ぶお堀ばたに来ました。風情ある景観に、この街の歴史と伝統がにじみ出ています。

目指す小田原市民会館は、お堀からすぐでした。当日券を買って入場しました。会場は1階と2階の席からなる収容千数百人のホールです。1階席に座ってプログラムを見ると、「第100回記念定期演奏会」とあります!50年の歴史あるアマオケが、年2回の定期演奏会を積み重ねてきて、今回はその100回の記念演奏会、その節目にマーラー3番ということのようです。これは相当気合がはいった演奏になるだろう、と期待が高まりました。プログラムの曲目解説(トロンボーンパートの4人の共著)がとても楽しく読めます。またプログラムにはさみこまれた4ページにわたる「はみだし解説」が、調性の分析などマニアックで説得力があり、かつウィットにも富んでいて、とてもためになる解説でした。これを書いた方(チェロ奏者?)、相当なマーレリアンに違いありません。

プログラムには親切にステージの楽器配置図もあって、とてもわかりやすいです。それによると、女声合唱とアルト独唱はステージ上の下手側です。あとユニークなのは、児童合唱は2階席のエプロンボックスを使用する、と記載されているではありませんか!振り返って2階席を見上げると、なるほど舞台に向かって左前方の客席に児童合唱団用とおぼしきスペースがあり、そのそばにチューブラーベルも設置されています。これはいい配置です。一段と期待が高まります。

この曲のスコアには、鐘と児童合唱とアルト独唱と女声合唱は高いところで、と指定されていますが、それが守られないことが多いです。たとえばサントリーホールでのP席など、ステージの後方に客席があるホールでは、そこに合唱団を配置することで高い位置にすることは良くありますが、そのような座席がないホールでは、ほとんどステージの上を使うことになります。今回、ステージが狭くて全員が乗り切れないという事情があるにせよ、女声合唱はステージ上にして、あえて児童合唱とベルだけを2階席という高いところに配置するというのは、天上からきこえる天使の歌というイメージにあった、すばらしい方法です。指揮者のこだわりなのでしょう。

このような児童合唱の配置はかつて一度だけ、1999年12月のすみだトリフォニーホールでの井上道義/新日フィルの演奏会で遭遇したことがあります。このとき井上道義氏は、ホール客席の左側のすごく高いところにある通路のようなところに児童合唱団を配置して、児童合唱が上から降り注ぐようにして、すばらしい効果をあげていました。今回も、それと同様な配置なのですから、相当期待ができそうです。

さて開演時間が近づくにつれ、会場はほぼ満席に近くなるという盛況ぶりです。そして開演を告げるアナウンス。このアナウンスも良かったです。携帯電話ほかの通常の注意点をアナウンスしたあと、「楽章間の拍手はご遠慮ください」とはっきり放送していたのです。この曲、途中にアルト独唱が入場してくるときに、どうしても拍手が自然発生しそうになります。指揮者によってはあの手この手で避けようとするのですが、なるほどこういうアナウンスは正攻法ですね。ある程度の効果が期待できるかもしれません。

やがてオケが入場。ステージ一杯に、ハープ2台、コントラバス8台を含む大オケがぎっしりと並びました。念入りなチューニングのあと、体格の大きな指揮者三河正典氏が登場し、演奏が始まりました。

第1楽章は、やや速めのテンポで、輪郭のきっちりした引き締まった演奏です。第1楽章からすでにかなり楽器が鳴り、いい音がでています。アマオケとして相当すばらしい音です!特に打楽器がしっかりしていて、結構強い音でもうるさくなく響いていることがすごいです。

第2楽章は、第1楽章の疲れが出たのか、ちょっと精彩を欠いた感じがしましたが、第3楽章はふたたびいい演奏でした。舞台裏のポストホルンもとても頑張っていて、高い音への跳躍の難所をことごとく決めていました。

第3楽章が終わったところで、女声合唱とアルト独唱が入場し、舞台下手に並んだ椅子に着席しました。(児童合唱は見ていないけれど、ここで同時に2階席に入場したのでしょうか。)さきほどのアナウンスの効果で、アルト独唱の際に拍手は全く起こりませんでした。やはりここで拍手が起こらないのは音楽の流れから気持ちがそがれず、ここち良いものです。

そしてここから演奏された第4、第5、第6楽章が、心を打たれるすばらしい名演でした。

第4楽章、アルトの声質が深くで、曲想にあっていて、とても良かったです。

第4楽章が静寂のなかに消えていき、引き続いて第5楽章の冒頭です。児童合唱と鐘の「ビン・バン」が、実に鮮やなこと!僕は1階席でしたので、児童合唱と鐘(この鐘が強めにしっかり叩かれ、それがまたとてもいい音色です)が高いところから降り注いでくる感じで、その響きの美しさに包まれて、しばしぼーっとしてしまいました。

第5楽章の最後、女声合唱を座らせるタイミングにも、指揮者三河氏の工夫がうかがえました。第5楽章の終わる少し前、2小節ほどの休みがある間にさっとすばやく座らせ、そのあとの部分は座って歌わせたのです。これは2002年のシャイー/コンセルトヘボウの来日公演のときと同じで、最善のタイミングと思います。こうすれば、その後はずっと座ったままでいられるので、第5楽章から第6楽章へのアタッカの静寂の緊張を妨げないし、第6楽章の音楽の流れも妨げないですむからです。しかしこの方法は、これまで僕が接してきた3番演奏では、シャイーの他にはお目にかかったことがありません。その稀有な方法を、三河さんは実行したのです、すばらしいこだわりです。

こういった細部のこだわり、それから何といってもここまでの演奏自体の素晴らしさ、それらの効果で、第5楽章の最後の音が消えてから第6楽章が始まるまでの間(三河氏はここで指揮棒を構えたまま3~4秒くらいはじっと動かず、割合に長めの間合いをとりました)、会場からは咳一つ出ず、しんとしずまりかえり、その緊張感は相当なものでした。聴衆には小さな子供も少なからずいたのに、その全員をひきこんで、緊張感の張り詰めた静寂を実現してしまう、それほどの力がこの演奏にあったということです。

そして、第6楽章。驚異的な名演でした。弦の深い祈り、木管の情感、ときおりやってくるホルンとティンパニーの雷鳴の厳かな咆哮、これらすべてが有機的に結びつき、呼応しあい、音楽はどんどん高みに上っていきます。なんというか、優しさと、厳しさが、高次元で融合しているんです、すごいです。そしてとうとう最後近くの金管コラール。ここは安全を優先してテンポを速めにして通過してしまったり(大植さん/大フィルでさえそうでした)、あるいはプロでもトランペットの高い音をはずしたり抜け落ちたりすることが少なくない超難所です。三河氏は、妥協のないゆったりとしたテンポですすみ、それに一番トランペットを初めとする金管隊がみごとにこたえ、静かなコラールをきっちり歌ってくれました。

そこから、いよいよ盛り上がっていって、最後に主題を高らかに合奏する箇所に来ました。ここでテンポを速めてしまう演奏が少なくありませんが、三河氏は、ここも充分にゆったりと、悠然と進んでいきます。その結果生ずる崇高なまでのスケール感。大感動です。そして、さきほどコラールをしっとりと歌ったトランペット隊が、ここで(練習番号30)パワーをついに全開にします。なんと輝かしく力溢れ、高貴なトランペット。素晴らしすぎます。

そして最後のティンパニーの大いなる歩み。三河氏はここのティンパニをかなり力強く打たせましたが、しかしそれがちっともうるさくなく、充分な説得力をもって響いてきます。感動です。

・・・・このオケ、ずば抜けてうまい奏者がいて、はっとするような美しいソロを聴かせてくれる、というオケではありません。でも皆が力を合わせた合奏では、実にすばらしい音がする。これ、アマオケの理想形ではないでしょうか。そして声楽陣の充実振り。とくに児童合唱は絶妙な空間効果とあいまって、とても美しかったです。このような演奏を実現してしまう三河正典氏という人、なんとすごい指揮者なのでしょう。

三河氏と、演奏された皆々様。すばらしい音楽をありがとうございました。大きなエネルギーのお裾分けをいただいたような、とても幸せな気持ちになりました。この小田原のマーラー3番、忘れません。






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Last updated  2009.11.11 05:16:54
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