カテゴリ:演奏会(2010年)
寒かったり暖かかったりとめまぐるしいこのごろ、いつのまにかもう3月ですね。だいぶ日にちがたってしまいましたが、2月に聴いた素敵なリサイタルのことを書いておこうと思います。
2月6日 武蔵野市民文化会館 小ホール レオン・ベルベン チェンバロ&オルガン・リサイタル (バッハと、スペインの古楽) プログラムの解説によると、レオン・ベルベンさんは1970年オランダ生まれの若い人で、あのムジカ・アンティカ・ケルンのチェンバロ奏者を数年間勤めたということです。 プログラムの前半はチェンバロ独奏で、バッハのフランス組曲、半音階的幻想曲とフーガなどが演奏されました。使用楽器は、18世紀初頭のドイツのモデルにならって1995年に制作されたチェンバロということでした。装飾が少なく黒を基調とした、いわばピアノ的なイメージの外観で、それに似てチェンバロとしては割合につやつやした感じの美音でした。 後半がオルガン独奏による、スペインの古楽(カバニーリェスという17世紀のバレンシアの作曲家の作品)とバッハ。僕はこのオルガン演奏に、とっても魅力を感じました。 この小ホールは残響が長めで、中型のパイプオルガンがあります。ここでパイプオルガンの国際コンクールが定期的に催されているほどですから、ホールとしてもかなりオルガンを重要視していると思います。 僕はここのオルガンを数回程度しか聴いたことがありませんが、それらのいずれにも、音色そのものにあまり魅力を感じたことがありませんでした。オルガニストによってはきつくうるさすぎたり、あるいは単調な感じがして飽きてしまったり。。。そういう体験が続いたので、ここのオルガンは僕とはあまり相性があわないのかなぁと思ったりしていました。 ところがレオン・ベルベンさんが弾くオルガンは、とても魅力的な音色で響いてきます。ストップの選択のセンスがいいということなのでしょうか。良くわからないけれど、ともかくオルガンの規模と特性を良くわかって、それをふまえて楽器に無理をさせず、しかし決して妥協しているというのではなくて、その楽器の良さを充分に出して、豊かに鳴らしているという感じです。 このオルガンはストップの組み合わせをあらかじめ記憶させておいて瞬時に切り替えるという機能がないようで、ベルベンさんは曲のちょっとした間合いですばやく沢山のストップを押したり引っ込めたりして、それはそれは忙しそうでした。そういう動作も見えるため、ベルベンさんが作っている音色なんだなぁ、すごいなぁという思いを、ことさら強く感じたのかもしれません。美しい音色によるスペインの古楽の響きにうっとりと浸ったひとときでした。 終演後、ロビーで何枚か売られていたベルベンさんのCDを見ていたら、「ウィリアム・バードの鍵盤音楽を、古いオルガンで」と題された1枚が目を惹きました。ジャケットには、小型のいかにも古そうなパイプオルガンが写っています。帯の解説には、「500年も前からある素朴なパイプオルガン。ヨーロッパに現存する歴史的教会オルガンでも最古の部類に属する、一段だけの手鍵盤とごく限られたストップしかない楽器」と書いてあります。ベルベンさんならきっと、こういう古くて小さいオルガンの魅力を十分に出せるのではないかと思って、このCDを買い求めました。レーベルと番号は、RAMEE (ラメー) RAM0704 です。 曲は、バードの、通常ならヴァージナルやチェンバロで弾かれることが多い鍵盤作品ということです。聴いてみると、とても素晴らしい音楽です。もとからオルガンのために書かれたと言われても納得してしまうような、オルガンの魅力にあふれた音楽で、これが古い小さなオルガンなのだろうかと驚くほど豊かな深みのある音色です。 500年の長きにわたって、ひとつの楽器が、何人もの奏者たちによって弾き継がれてきてるんですね。。。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.03.08 02:29:41
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