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じゃくの音楽日記帳

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2010.11.24
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ヤンソンス&コンセルトヘボウのマーラー3番、まだまだ書きます。これからは川崎・サントリーの両公演を一緒に、声楽のこと、ポストホルンのこと、ヤンソンスのことなど書いてみたいと思います。

まずアルト独唱のアンナ・ラーソンさん。声の質が深く、言葉の発音がデリカシーに満ちていて、引き込まれずにはいられない名唱でした。アルト用に書かれているこの曲は、メゾソプラノでももちろんいい歌唱はありますが、やはり本来のアルトで歌われてこそ真に深い味わいがでるということを、まざまざと実感させてくれる、すばらしい歌でした。

このラーソンさん、1998年のアバド/ベルリンフィルの来日公演の3番でも歌っていらっしゃいました。また、2007年のアバド&ルツェルン祝祭管の3番のDVDでも歌っている人ですね。アバドの信頼があついのも、充分納得できました。3番の第四楽章の歌で僕がこれまででもっとも感銘を受けたのは、2005年に大植&大阪フィルと歌ったアルトの坂本朱さんの歌唱でした。そのときのことが思い出される、ラーソンさんの深い歌でした。

独唱者の配置も、良かったです。オケの中で、ヴァイオリンと木管(ピッコロおよびファゴット)の間あたりに位置していました。このようにオケの中に独唱を配置する方法は、たまに見かけます。マーラーの指定は、合唱、ベル、独唱をともに「高いところ」ですので、それとは異なるわけですが、独唱者がオケに囲まれてオケと自然に一体化したような感じがして、これはこれでとても好きな方法です。

独唱者の登場の仕方も、この配置の特徴を生かした、自然でさりげない登場でした。第一楽章と第二楽章の間合いで、なんとなくまだ雰囲気がざわざわしているときに、すっと出てきて、オケの中の席にすっと座りました。もちろんヤンソンスもこういう登場をさせようと思っていたわけでしょう、ことさらに独唱者を迎え入れるという態度をとることなく、ヤンソンスがふつうに楽章間の小休止をとっているときに、独唱者がさりげなく入ってくると言う、両者の息があった、「心得た」入場でした。川崎ではここで僅かに拍手が起こってしまいましたが、サントリーではここで拍手が起こりませんでした。ここで拍手が起こらないと、緊張感が保たれていいものです。

あと細かなことですが、いつものように起立と着席のタイミングについても書いておきます。独唱者の起立は、第三楽章と第四楽章の合間に、ヤンソンスの合図で立つという、ごくオーソドックスな方法でした。一方、着席のタイミングは普通より早めで、第五楽章の自分の出番が終わって少ししたときに、第五楽章の途中で座りました。

この曲の第五楽章は、独唱者の出番が終わるのが意外に早く、楽章の真ん中をちょっと過ぎたところなんです。以前3番の別の演奏会で、独唱者が自分の出番を歌い終わってすぐにさっと座ったことがあり、音楽の流れをまったく顧みない感じで、ちょっと違和感がありましたが、今回は歌い終わったあと少し間合いをとって、音楽の流れを配慮したところで座りましたので、まったく違和感がありませんでした。座り方ひとつでも、差が出るものですね。本当にラーソンさん、すべてにおいて素晴らしかったです。

あとこれは冗談ですが、ラーソンさんはかなり背が高いので、オケの中で立って歌っても、「高いところで」というマーラーの指示に、多少は近かったかもしれません(^^)。

次に合唱についても、細かなことですが、いつものように書いておこうと思います。(ここから先はかなり細かい話なので、ご興味ない方は読み飛ばして下さい。)

合唱団の入場と、起立・着席のタイミングは、川崎、サントリーとも全く同じです。演奏開始前に入場し着席して待機。そして第五楽章の開始時に、まず少年合唱団がばっと勢いよく起立すると同時に「ビムバム」と歌い始め、2小節ほど遅れて女声合唱が起立して、その後歌い始めました。

第五楽章開始時に合唱が起立すること自体はわりあい一般的な方法ですが、その場合普通は、児童合唱と女声合唱は同時に立ち、そして立ち上がってさらに歌う体勢を整えるまでの時間として1~1.5秒位の時間をとり、その後に第五楽章が開始されます。しかしヤンソンスは、この時間をとることを嫌って、立ち上がってすぐに歌うというリスキーな要求を児童合唱にしたわけです。そのため、出番が少し遅れて始まる女声合唱は、無理にそのときに同時に立たせず、ちょっと時間差をおいて立たせたのでしょう。ばっと起立して間髪をいれず歌い始めるというのは子ども達は大変だったろうと思いますが、良く頑張ってきっちりとこの開始をこなしていました。ヤンソンスのこだわりには敬意を表しますが、この方式よりは、僕としてはやはり、第四楽章の開始時にあらかじめ立たせておく方法(2002年のシャイー&コンセルトヘボウがやっていた方法)が、安全で、かつ第四・第五楽章間の移行の静謐と緊張感が最大限に保たれて、ずっと良いと思います。

合唱団の着席のタイミングは、ごく普通で、終楽章が始まって少しして、音量がやや盛り上がったところで普通に座りました。

あと合唱団の配置です。川崎では、舞台上に全員が乗って、女声合唱が舞台の奥の正面で、児童合唱が舞台の下手奥に並びました。チューブラーベルは児童合唱のそばでした。川崎では、雛壇があまり高くなかったので、児童合唱も女声合唱も、比較的低い位置で歌っていました。そのせいもあってか、児童合唱は音量的にちょっと小さめで、聞こえにくかったです。サントリーでは客席(Pブロック)を使いましたので、高い位置からとなり、児童合唱も比較的良く聞こえてきました。(ただしチューブラーベルは川崎と同じに、普通に舞台上で、下手奥でした。)

女声合唱(新国立劇場合唱団)は、いつもどおり、力ある安定したいい合唱を聴かせてくれました。今回、児童合唱が30人ちょっと、女声合唱が40数人でした。音量バランス的には、さらに児童合唱を増やすか、それが難しければ女声合唱を少し減らした方が良かったかもしれない、と思いました。

ところで、マーラーの指定は「少年合唱」ですが、日本の演奏では、多くは少年少女合唱団で歌われますね。今回のTOKYO FM少年合唱団は、日本では貴重な少年合唱団のひとつで、マーラー3番にもメータ/バイエルン、ゲルギエフ/キーロフ、アルミンク/新日フィルその他、数々の出演歴がある合唱団です。おそらく日本の少年合唱団で一番多く3番演奏に参加していると思います。これからも頑張ってください。

声楽陣はこれで終わります。次はいよいよポストホルン!次の記事に書きます。





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Last updated  2010.11.25 11:20:24
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