一つ前の記事「デュトワ&N響のマーラー3番を聴く」で、やぱげーのさんからいただいたコメントへのお返事の中で触れた、コバケンの書いた本と言葉について、改めて書いておこうと思います。本のタイトルは「指揮者のひとりごと」です。
この本の 第六章 楽聖への想い には、二人の作曲家、べートーヴェンとマーラーが取り上げられています。そのうちマーラーに関する文章は、「魂との語らいーマーラー」と題するものです。その一部分を抜粋・引用します。
(ここから引用)
”苦悩を超えて歓喜に至れ”それはベートーヴェンの生き様であった。・・・(中略)・・・
・・・歴史は調性に別れを告げる悲しい時ーカオスーへと進んで行く。その不安の時代に、ベートーヴェンと比肩できる巨人を歴史が用意してくれたことに、われわれは感謝しなければなるまい。
グスタフ・マーラー
”苦悩から歓喜”とは逆に、苦悩そのものが作品の中核を成している。それはまるで、雪国の(雪の)白さに真っ赤に吐血された嘆きのように・・・・。
(引用終わり 小林研一郎著「指揮者のひとりごと」初版1993年12月、騎虎書房 154ページより)
この本を今回久しぶりに引っ張り出してみたら、コバケンのサインをいただいていました。1994年3月とありました。サインをいただいたことを忘れていて、見てびっくりしました(^^;)。雪の中で血を吐くという表現が強烈だったので、それだけは僕の記憶に残っていたようです。このマーラーに関する文章、短いけれど、コバケンのマーラーに対する熱い想いがあふれていて、素晴らしいんです。