年末年始恒例の奈良酒に大阪と山口を追加して長野県の辰野と諏訪に加えて和歌山産”世界一統のうめさけ”と塩尻ワインの新酒
今年ももう直ぐ終わってしまう。厳冬期のお楽しみであり友人達との新年会で必要なのが、日本酒であり個性的な奈良酒だ。年に一度の贅沢なので、廊下が保管庫となる今だけの生酒を中心に毎年5本程奮発しているのだけど、大体、日が伸びて寒いけど春の兆しが見えてくる頃になると全て消費している。香芝市の大倉本家の”特別純米あらばしり”は、酒は本来、素朴・端正をもって極上とする、という蔵の信念が伝わってくる。吉野杉で有名な吉野町の美吉野醸造の”花巴”も毎年外せない酒だ。発酵が進む多湿な森林地帯において、酸を抑制するのではなく開放する酒造りというのが良くわかる。今年初お目見えの”妙童鬼・無濾過生原酒”。花巴と同じ吉野町で作られる酒で、奈良県産のキヌヒカリを使った純米酒そのまま瓶詰。どれも奈良酒らしい酸のはっきりした個性派ぞろい。篠峰でもお馴染みの酒蔵の”純米・櫛羅”には参った。3日冷えた廊下に置いていた奴なのに、キャップシールを外した途端にキャップが吹っ飛んで暴発して天井にまで到達の大掃除。たまには威勢の良い奴と思いシャンパン位のものを覚悟していたのだけど、消火に使える位の威力があって、ちゃんとした開栓の方法が分からないので次回は普通の奴にする。御所市の千代酒造蔵の周囲にある、自社田の米を使い55%精白で50%に匹敵する酒を目指した櫛羅は、暴発しない奴はいい酒であるぞ。久しぶりの宇陀市の久保本家蔵の酔龍は、火入れの純米を買ってみたけど相変わらずのガツンとした味わいが嬉しい。辰年に酔龍ってのも良いんじゃないか。長野県産の”夜明け前・純米酒”は辰野の酒蔵で、少し辰年を意識して選んでみた。信州の冬みたいな辛口。大阪北部に位置する能勢町の秋鹿は、米作りから酒造りまで行う「農醸一貫」で、良い米が出来れば酒造りは半分終わりという元々純米しか作らない蔵だ。”純米酒/能勢・角福”は地元の能勢産山田錦に拘った酒。G20大阪サミットの乾杯では秋鹿の酒が供された実績あり。地元の諏訪産は奮発して”御湖鶴・ひとごこち・純米吟醸”を選んだ。松本産の”ひとごこち”という酒米を50%まで磨いた酒で味のバランスが見事で旨い。奈良酒があるので敢えて長持ちする火入れを選択したけど諏訪が誇る銘酒だ。その隣は暴発した櫛羅の代わりに用意した”獺祭・純米大吟醸”。行き付けの酒屋さんで久しぶりに年末特売で購入。画に描いたような吟醸香を放つ上品な酒なのだけど、野武士の様な奈良酒から見ればお公家様のようなものであるな。梅と言えば南紀だけど、当然ながら梅酒も色んな蔵で作られていてコンテストも開かれている。中でもコンテストで連続受賞して殿堂入りを果たしたという、南方弥兵衛氏が1884年(明治17年)に創業した酒蔵の、”世界一統”の梅酒は気になるではないか。植物学と民俗学の南方熊楠氏は弥兵衛氏の息子さんで、酒蔵の名称は大隈重信公により「酒界の一統たれ」と付けられた。”南紀のにごり梅酒(うめさけ)”は日本酒に梅を付け込んだ一品。”人生そんなに甘くない。梅酒だってこんなに辛い”は、梅酒とショウガを組み合わせたものでお湯で割ると実に温まる。今年の信州ヌーボーもいい出来だぞ。保存料の類を使わない相変わらず果実香がしっかりした、フレッシュなワインは今時分のお楽しみだ。実は試しに去年の完熟・’22年物を1年寝かせて開けてみた。料理酒かビネガーになっているかと思ったのだけど、少し濁りが出てフレッシュ感は弱くなったけど、柔らかい果実香とこなれた味の熟成感が良かった。