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カテゴリ:モンゴル国立大学・授業風景
今期(下期)やっている2つの授業のうち、「日本企業経営」という授業が昨日で終わりました。
この授業は週に2回やってます。1回当たり90分で、木曜日が講義で水曜日がゼミナールです。 ゼミナールというのは、私が日本で大学時代に経験したゼミというのとは違います。全部で8回あって、各回に向けて私から予めテーマを与えてあり、そのテーマに沿って生徒にプレゼンテーションをしてもらうというものです。 講義の方では、経営やマネジメント手法に重きを置いているので、ゼミナールのテーマはより広い観点や企業への馴染みやすさを考えました。 ですが、これが結構ハードなのです。3-4人のチームに分かれ、毎週全チームにプレゼンしてもらうのです。 毎週、資料を読んだり、ネットで調べたり、皆で議論してもらってパワーポイントの資料を作ってもらいます。しかも全部英語です。 日本で毎週英語のプレゼンを準備させる授業なんかあったら、そんなの取りたくないでしょうね。 しかもこのゼミナールとは別に講義もあり、予習してもらうことを「強く」勧めており、更にレポートも課してますから、生徒は大変でしょう。 モンゴル人はチームで仕事をするのがとても不得手なので、毎週の資料作りは多分かなりきついのではないかと思います。 課したテーマの例を挙げると、「ソニーについてのリサーチをしなさい」というテーマで、いくつか設問も出してます。 1、ソニーのユニークさ、歴史、哲学は何か? 2、主な製品の地域別シェア 3、ソニーの販売戦略、R&D戦略は? 4、なぜソニーブランドは世界中で強くなったのか? です。 元々、ほとんど日本企業に馴染みがないこともあり、こういう調査活動を通じて、日本企業に対する興味や知識を持ってもらいたいという狙いがあります。 学生はいろんな資料(もちろんモンゴル語のはなく、英語の資料しかない。)やインターネットの中から調べ上げます。 盛田さんや井深さんの話、ソニーという名前の由来(パナソニックのソニと実は同じ語源とか)意外な話まで探し当ててきます。 多分、プレゼンの内容はほとんど忘れてしまうでしょうけど、ソニーというのがかなりユニークな日本を代表する企業であることは、彼らの頭の中に残るであろうことを期待しています。 これ以外のテーマとしては、「日本企業の生産システムの特徴は?」、「三菱グループとは何か?系列、財閥とは?」、「日本の高齢化社会の問題。もう日本の成長は終わり?」などです。ソニー同様、ホンダについてもテーマにしています。 最終日のテーマは「モンゴルにおける日本企業について」です。その前に、「アジアにおける日本企業について」という課題を出しており、その時、東南アジアや中国でいかに日本企業が多く進出しているか、大きな存在となっているか、などを学びました。 それに反して、モンゴルにおける日本企業の存在感は非常に希薄です。ですので設問としては、 1、モンゴルにおける日本企業のプレゼンスはどうか? 2、モンゴルにおける日本企業の活動する主な産業分野は? 3、なぜ日本企業はモンゴルで少ないのか? 4、将来への課題は何か? としました。 これはもうほとんど資料もないので、特に設問の3と4は、各チームでそれぞれかなり議論して作ってきました。 面白いのは、3についてです。ほとんどのチームが、市場が小さいという事実以外に、モンゴル人の気質やモンゴル側の事情を挙げていたのです。 一般的な観点では、 ・日本などの外国は、モンゴル人は全員遊牧民だと思っているのではないか。 ・内陸国で運送費がかかりすぎる。 ・人口が少ないので、労働力が少ない。 ・法的な整備が不十分である、税制がすぐ変わる。 ・IT環境が不十分である。 を挙げてました。が、もうちょっと「モンゴル人」らしい観点は、 ・モンゴル人は時間通りに仕事をしない、仕事を先送りする、会議に遅れる。 ・一部のモンゴル人は仕事に対する責任感がない、法律や規則に従わない。(日本人は法律を守る) ・モンゴル人は短期的な視点で考える。(日本人は長期的) ・日本企業と何かやろうとすると、日本企業は意思決定に時間がかかり、短期志向のモンゴル人には忍耐力がない。 ・遊牧民の歴史を持つモンゴル人は、基本的に個人主義が強いので、チームを大切にする日本人と合わない。 などです。これらの観点はなかなか的を得ていて、多分モンゴルでビジネスを経験した日本人は苦笑しながら「確かにそうだようなぁ」と言うのではないかと思います。 私は、「モンゴル側の問題ばかりじゃなく、日本側にも問題があるんじゃないの?」と聞きましたが、市場性(小さい)の問題以外は、多くはモンゴル側に問題が多いと思っているようです。 私が「これらの問題は、将来まで続くの?それとも変わるの?」と聞くと、ほとんど全員が「変わる。いや、変える。」と答えました。 この4カ月の授業で、最初は日本企業に関する知識はほとんど皆無だった生徒たちも、かなり親近感を持ってくれたようです。 昨日の最終講義の一番最後に「日本企業の経営の仕方についてとても勉強になり、多くのことを学んだ」と皆がコメントしてくれました。 東南アジアのように、日本製品で溢れている環境とは全く違うこの国でも、少しでも関心を持ってもらえたら嬉しいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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モンゴル側に問題があるのかなあ?
恐らく多くの日本企業の戦略MAPにモンゴルは登場してきてはいないと思うが、これは市場として、または供給基地として認められないほどに、関心が低いからだと思います。 モンゴル人の気質が日本人と合わないからでは絶対無いと思います。市場や供給能力が員式されれば、日本人だって極めて忍耐強く相手に自分を合わせようとしますよ。 このブログ読者はモンゴル気質を理解しつつある人が多いと推測しますが、多くの人はモンゴル気質にも無知でしょうから。。 (2010.05.22 13:55:32)
東京Walkerさん、ありがとうございます。
全くその通りだと思います。私も日本の企業がそんなことで進出先を決めるとは思えません。ですから、日本企業からの視点での答えを予測していたのですが、彼らはモンゴル側に問題があると思ったということを書いたわけです。 面白い見方でしょ? (2010.05.23 00:13:16)
「日本企業経営」の講義終了、お疲れ様でした。
日本企業に関する経営の調査による学びもさることながら、チームでの仕事が不得手なのであれば、今回のグループワークは最初は大変だったのかもしれませんが、段々と慣れてきてこられたかもしれませんね。 自分で何でもできないと厳しい生活環境があった名残かもしれませんが、今は一人だけでは完結できない世の中に世界中がなりつつあるので、その意味でもいい機会だったと思います。 (相撲だけではなく)日本に関心を持つ人が増えるといいなぁと思います。 (2010.05.24 23:44:46)
Rubyさん、ありがとうございます。
はい、おっしゃる通り、プレゼンの中身よりもチームで短期間に結果を出すことを何度も繰り返したのは、結果としていい経験になったと思います。 モンゴル人は個人としてのサバイバル能力は確かに強いと思いますが、現代社会に必要なチームで仕事をするという部分は弱いです。 日本企業の存在感が希薄なこのモンゴルでも、日本や日本企業に関心を持つ人が増えてくれると嬉しいです。 ちなみに、朝青竜の引退後は、相撲中継をするテレビ局は減ったそうです。白鳳だけでは難しいのかもしれません。 (2010.05.25 00:13:28) |