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田崎正巳のモンゴル徒然日記

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2017.01.21
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これらの例をもとにモンゴルを考えてみます。

北海道の人口密度は日本ではダントツに低く、1平方キロメートル当たり68人です。が、1.8人のモンゴルの40倍近くもあります。この差はかなり決定的とも言えます。

こうしたわかりきった事実をい言うまでもなく、モンゴルでは旅客輸送で鉄道事業を成り立たせることは不可能なのです。

単に収支という視点でいえば、ウランバートルの地下鉄を含めても、旅客輸送の新路線建設は採算は合いません。

ではもう一つの、資源輸送用はどうか?これは可能性がありましたが、もう無理でしょう。なぜか?

2008-2009年ごろにそんな議論があり、私もそういう議論に参加しました。が、当然ですが、長期的視野を持たないモンゴル政治家はそんな道は選びません。

一つの議論として、TTやOTで算出した資源を日本や韓国に輸出するためにサインシャンド経由でチョイバルサンまで鉄道で運び、その後はロシア鉄道に載せナホトカまで運ぶという案がありました。

私はこれを、既存の路線(ロシアと中国を結ぶ既存線)を南北線とし、この新線を東西線と呼んでします。チョイバルサンから東へいわゆる旧満州地域を横切って、中国の日本海側の港に運ぶというオプションもあります。

もちろん、既存ルートともいえるサインシャンド乗り換えで南北線で天津まで運ぶというルートもあります。

つまりこの東西線ができれば、ナホトカ、中国日本海側、天津と3つのルートができ、政治的リスクを回避しながら輸送コストを下げることができるという案でした。同じ中国内でも、地方政府が強い中国では、路線間で価格競争は十分に可能という話もでていました。

ですが、これらの案をほぼ不可能にしたのがTTと中国を直通で結ぶ鉄道建設です。私はこれを盲腸線と呼びました。

この盲腸線ができてしまうと、どの路線案も経済性で負けてしまうことになり、南ゴビで産出される資源のほとんどが中国へ向かっていくことになってしまいます。

この盲腸線建設にあたっては、当初はMCS主導で、その後政府主導に変わったり、当初はモンゴル国内線路との結合・ネットワーク化を考え広軌道との案でしたが、結局は中国と同じ狭軌道になったという経緯があります。

狭軌道にするということは、モンゴル国内の鉄道とのネットワークは考えず、ただひたすら中国に資源を運ぶだけの専用線になることを意味します。

そしてこれができることで、東西線の収益予測はほとんど不可能となり、誰もこの建設に投資をしようという人がいなくなることを意味します。

モンゴル政府はこの「絶対に利益が出ない東西線」への投資を日本に呼び掛けています。一番おいしいところは中国へ持っていき、赤字にしかならない案件だけを日本向けに提案するという、まことに失礼な話を持ち掛けているのです。

誰が考えても(現に、FSやってもだめだったのです)無理な案件に安倍さんが乗りそうになっていることには、疑問が湧きます。

仮に作ったところで、JR北海道を見るまでもなく、維持管理費用も出せないようなお荷物路線になってしまうことでしょう。もし安倍さんがこの案に乗った時は「別の目的を考えている」と考えてもいいと思います。

盲腸線を認めなければ、東西線維持もやりようがあったとは思いますが、盲腸線がほぼできてしまった今となっては無理でしょう。

というわけで、残念ながらモンゴル全国に広がる鉄道網の夢は、ここ当分、まあ2-30年は実現できなんじゃないでしょうか?

その後、モンゴル国が自力で税収を使って建設するならあり得ます。北海道新幹線だって、赤字になるとわかっていても作っているのですから、不可能ではありません。

ただ、旅客や貨物を載せて経済的に見合う路線は、残念ながらモンゴルではできそうにないのではないかと思っています。

(完)





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Last updated  2017.02.06 10:34:56
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