|
カテゴリ:日本とモンゴル(文化・交流)
モンゴルから日本にお客さんが来た時に、私が食事の希望を聞くのは「寿司?焼肉?」と至ってシンプルです。
この好みも以前とは随分変わりました。昔(10年前?)であれば、「焼肉!」と答える人が圧倒的でしたが、最近はほとんど「寿司!」と言う人が多いです。 日本に留学や仕事で経験ある人であればそれも頷けますが、日本初体験の人までそう言ったのには少々驚きました。 私のクライアントであるモンゴル人の建設会社社長Bさんが、初めて日本に来た時のことです。このBさんは、私にとってモンゴルで初めてのコンサルティングのお客さんでした。 日本語ももちろんわかりませんし日本にも来たことありませんでしたが、私に会社の経営戦略立案を任せてくれました。結果としてプロジェクトは成功し、その後その会社は大きな成長を遂げました。 モンゴル出張の折にUBで会っていた時に、「あなたのいる日本に行ってみたい」と言ってたのです。 それが実現した時に、私はB社長を食事に誘いました。頭の中では「焼肉かな?しゃぶしゃぶ?すき焼きはちょっと面倒かな?」なんて思いながらも、一応「何が食べたいですか?」と聞いたのです。 すると意外な答えが!それは「サシミ」でした。私は「サシミ」と聞いても、まさかと思いながら「サシミって、生の魚ですよ。ご飯と一緒のはスシと言うんです。」と説明すると「そのサシミが食べたい」と言ったのです。 私は刺身ばかり食べられるもんではないですから、お寿司屋さんへ連れていき「まずは、刺身二人前お願いします」と注文しました。 食べ終わるころに「じゃあ、寿司にしますか?」とB社長に聞くと、「いや、このサシミがいい」と言うではないですか。結局、寿司は全く食べず、刺身だけ2回もお替りしました。(もちろん、違うネタで) これでもわかるように、「モンゴル人は肉しか食べない」とか「初心者には魚は無理」などというのは昔の話で、今のUBの人たちはなんでも興味を持って食べてくれます。もちろん、焼き肉が好きなのは今も変わりませんが。 そんなモンゴル人相手でも私から絶対に誘わない肉料理があります。それはジンギスカンです。羊料理なんですから、モンゴル人にはぴったりだという考え方もあるかもしれませんが、さすがにこの名前の料理を勧めるわけにはいきません。 そういう私の躊躇を明確にしてくれる記事がありました。それは「「ジンギスカンの料理名変えて」モンゴル出身教授の主張で物議「チンギス・ハンはモンゴル人にとっての天皇」という記事です。 モンゴル出身教授というのは「草原の墓標」で有名な楊海英静岡大学教授のことです。楊さん曰く「モンゴル人にとってのチンギス・ハンは日本人にとっての天皇家と同じであり、料理の名前にしてはいけない神聖な存在」なのです。 これは私の躊躇する感覚と同じですが、日本人全員が「なるほど!」と言ってくれるかどうかはわかりませんでした。しかしながら、楊さんは日本人に対して強烈な事例を示しました。 それはアメリカで補正下着ブランドとして商標登録された「Kimono」への日本からの痛烈な反発のことです。「Kimono」を下着に使うのは、「文化の盗用だ!」とか「日本の伝統衣装に失礼だ!」と騒いで、結局この商標の使用を止めさせた経緯があるのです。 「なるほど!」と思わず唸ってしまいました。事の重大性で言えば、「Kimono」よりは「ジンギス・カン」の方がずっと重いです。この投げかけには、日本人として返す言葉は見つかりません。 実際、日本にいるモンゴル人のほとんどは、この料理名に「不快」や「怒り」を感じたことがあるのではないかと思います。 ここまで浸透した料理名を変えることができるのか?実は一つだけ事例があるのです。それは「特殊浴場」といわれる、お風呂屋さんです。これは昭和の昔は「トルコ風呂」と呼ばれていました。 ですが、トルコから留学に来た青年がその意味を知ったとき、ショックで猛抗議したのです。たかが留学生一人の抗議というなかれ。マスコミに取り上げられ、トルコ国大使館なども協力し、名前の使用を止めるように政府やマスコミにお願いしました。 その結果、さすがにその手の場所の名前に国の名前をつけるのはおかしいということで、かなり短期間で全国的に変わってしまったのです。確かにあのまま放置していたら、外交問題にまで発展したかもしれません。 その時の成功の要因の一つに「じゃあ、どういう名前にすればいいのか?」でした。それがないと、切り替えるに替えられないからです。結局「ソープランド」という名前が登場して、切り替わって行ったのです。 この事例から考えると、ジンギス・カンの名称を変えるには、 ① 今回の楊教授の指摘を基に、モンゴル国も名前変更の依頼を正式に日本政府やマスコミにお願いする。(内モンゴルは中国ですから、この程度のことでは外交問題にはしてくれないでしょう) ② ジンギス・カンに変わる名称を決める。 ③ このまま変えないと、Kimonoで文句を言う日本人のダブルスタンダードがおかしいとか、外国の神聖な存在を日本人は料理名に使う無神経さがあることを世界に知らしえるとか、日本のイメージに傷がつくようなキャンペーンを行う。 などの方法で、変えられるかもしれないと思いました。 問題は、新しい名前ですね。「羊焼肉」ではつまらない。聞いただけであのチンギス・カン料理のイメージができるのがいいですね。何かいい名前はありますか? ちなみに、私はジンキス・カン料理はかなり好きです。「おひとり様」でも行くことがありますから。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[日本とモンゴル(文化・交流)] カテゴリの最新記事
|