京橋というと都心でも有数の古い歴史を有する土地という印象があります。加えて高級な老舗店がさり気ない構えであったりして、あああの有名店はここにあったんだな、それにしても名の知られる店にしてはやけにショボいではないかと思わされることもしばしばのこと。画廊なんかも多くて自分にはあまり縁のなさそうな町でありますが実はさにあらず。ひと頃はこの近所に是非とも住みたいものだと本気で願ったものでした。その理由は簡単でそこに日本のフィルムアーカイブであるフィルムセンターがあるからで、月曜以外には、2回、特集次第では3回のフィルムが上映されしかも国立の組織ということもあって500円という廉価にて鑑賞できちゃうのでした。些細な個人的事情により映画からは遠ざかりつつありますが、定年したら近くに住んで、ぶらぶらと出掛けては毎日二回の上映を楽しんだ後に界隈の居酒屋でいっぱい呑むという野望を胸に秘め続けているのでした。
そんな京橋にも古い角打ちがあります。「枡久」は、安政2(1855)年酒屋創業の酒屋さんで、なんだかとんでもない老舗でありますが、実のところは平成22年に移転して、新しい建物となっており老舗らしさはほとんどありません。店内に飾られた数枚の扁額にその歴史を感じるしかなさそうです。角打ちにしては値の付け方にやや疑問もありますが、この界隈で抜群にお手頃に呑むことができる貴重なお店ではあります。定年を迎えるまであってくれることを願います。ただし、閉店時間が早いので映画を見たあとでは厳しいのが難点。