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カテゴリ:新宿区
牛込の辺りは職場があったわけじゃないけれどひと頃は毎日のように歩いていました。神楽坂は俗で好きになれないけれど、牛込の辺りは人通りもぐっと少なくて歩きやすいのも好ましい。とにかく人混みが鬱陶しいというよりは嫌悪もしくは恐怖すら感じるのであります。なのにどうして好き好んで都心になど住むのだと随分詰られた事もあったけれど、ぼくも好き嫌いだけで物事を判断するほどには分別を持たぬ者ではないのであります。それでも最寄り駅の人混みさえ解消されたら言うことないのになんて思ったりもしますけど。職場があったのではないと書きましたが、牛込を毎日のように歩いたのは、嘘ではないけれどやや誤魔化しめいた書き方で実際には通勤の中途であったわけです。職場には池袋から有楽町線に乗車するのでありますが、その混雑が嫌で嫌で仕方がなかった、だったら歩いてしまおうという至極納得のいく良い判断をしたのでありまして、飯田橋辺りから池袋方面に向けてのルートは実に選択肢が多いのです。何事においても選択肢が多い事はその余地がないことより断然恵まれたことであるのですが、どうも多くの人は決められた道筋を唯々諾々と従ったり、選択するとこそのこと自体を面倒と思ったりむしろ忌避する傾向があるというのだから、ぼくが世間からは幾分浮いてしまうのはやむを得ないことなのかもしれぬ。おっと、久し振りに文章を書いているのでいつも以上に無駄口が多くなってしまった。とにもかくにも馴染みある牛込でありますが、ここは歩く抜けるばかりの町で立ち寄ったり、時間を潰したりすることはついぞありませんでした。でもしかしなんとはなしに古い店がチラホラ見受けられることは分かっていました。だから遅まきながらも今後は機会を見つけて、明確な目的をもって散策することにしたのでした。
とりあえずは店の目安は立っています。入門編として角打ち巡りは悪くないのではないでしょうか。幸いにもこの界隈にけして近くはありませんが二軒の角打ちがあるらしいことを知っていたので、まずはその一軒を訪ねることにします。牛込神楽坂駅から3分ほど坂を下った路地に「飯島酒店」はありました。ここのことは最近、新聞記事で目にしていたのでした。日本各地の角打ちを巡る娘の連載記事は不定期ながらHPで公開されているので時折チェックしています。さて、都心の角打ちの多くが単に酒屋の片隅を開放するばかりで少しも酒場らしくないのに比すると、こちらは手作りらしい止まり木がいくつかあってそれなりに立ち呑み屋の風情があるのでまずは満足です。壁には古いポスターや扁額なども飾られ老舗らしいことが察せられます。奥のレジには意外やお若い店番の奥さんがおられて、お子さんの相手をされています。缶のビールに乾き物やらを買い込んで精算を済ますと、空いていた入口そばの止まり木に落ち着きます。酒も肴もそんな具合なので感想を述べるようなものではありませんので割愛。お隣には独りのサラリーマン、その先には常連三人組がいかにもこの店があってくれて良かったというように楽しげに語らっています。このお店は地元の方にとって絶やすことのできぬ社交場なのでしょう。 次の角打ちは、最寄駅はというと東京メトロ東西線の早稲田駅と神楽坂駅の大体中間、都営大江戸線の牛込柳町駅からも同じくらいでしょうか、つまりはちょっとばかり不便なのです。そんな外苑東通りの交差点そばにあるのが「升本小沢商店」です。小奇麗な店に入ると店番をするお母さんがいるので、念のためにここで呑んでもいいかと尋ねると、瞬間値踏みするような視線を寄こされますがすぐにどうぞと言っていただけました。樽をいくつも組み上げて作られたテーブルはまあさほどの感興をもたらさぬのでありますが、それはまあ置いておきます。立派な冷蔵庫にはそれなりに銘柄酒が揃っていて近頃よく耳にする酒もきっちり温度管理されているようです。角打ちらしく値段も手頃なのはありがたい。雁木5勺が350円をいただく事にします。うん、うまい。乾き物も用意はされていますが、旨い酒があれば下手な肴など雑味にしかなりません。なんて単にケチなだけですけど。早速呑み干してお代わりを。貴5勺も350円だったかな。白鷹の樽酒も樽のまま冷蔵庫で保存されています。お母さんに樽酒いいですねと声を掛けると呑まれますかと仰られますが、今晩は軽めにしておきますと夜道を再び家に向かって歩き出すのでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017/05/18 08:30:04 AM
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