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カテゴリ:家呑み
ぼくは俳句というものにどうしても興味を持てないのです(夏井いつきの分析は非常に楽しく拝見しています)。芭蕉やら一茶やらの大物の句には確かにいいって思えるのもあったりするけれど、それも感動というよりは気が利いてるなあと感心するといった質の良さに過ぎないのであります。だからといって俳人が書いた文章も嫌いって訳ではなく、近頃になって種田山頭火が好きで、気が向いたら青空文庫を繙いてみたりするようになりました。その文章に『漬物の味〔扉の言葉〕』があります。ぼくは小手先のレトリックというのに幻惑されやすい素朴な性質の持ち主なので、山頭火って結構、地の分ではレトリックを多用しているのですね。
-- 私は長いあいだ漬物の味を知らなかった。ようやく近頃になって漬物はうまいなあとしみじみ味うている。 清新そのものともいいたい白菜の塩漬もうれしいが、鼈甲のような大根の味噌漬もわるくない。辛子菜の香味、茄子の色彩、胡瓜の快活、糸菜の優美、――しかし私はどちらかといえば、粕漬の濃厚よりも浅漬の淡白を好いている。 よい女房は亭主の膳にうまい漬物を絶やさない。私は断言しよう、まずい漬物を食べさせる彼女は必らずよくない妻君だ! 山のもの海のもの、どんな御馳走があっても、最後の点睛はおいしい漬物の一皿でなければならない。 漬物の味が解らないかぎり、彼は全き日本人ではあり得ないと思う。そしてまた私は考える、――漬物と俳句との間には一味相通ずるところの或る物があることを。―― -- どの辺がレトリックであるかは、各々読み取っていただければよろしいかと思いますが、ぼくが取り分け好むのが列挙法と言われるテクニックであります。「辛子菜の香味、茄子の色彩、胡瓜の快活、糸菜の優美」という箇所ですね。この一節の切れ味はさほど良いとは思えないけれど、「胡瓜の快活」っていうのが的を得ているかはともかくどことなくユーモアを感じるのでした。ということで今回はきゅうりです。 ![]() 冷し胡瓜(監修:錫村よみ子/主婦之友 昭和十二年七月號附録「夏の和洋料理千種の作方」より) 【材料】 きゅうり(6mm厚)・水・塩・醤油・味の素・練り辛子 適宜 【作り方】 1. 器に塩水、氷、きゅうりを入れて醤油、味の素、練り辛子を添える。 ![]() パリパリ胡瓜(監修:岡本初枝/主婦之友 昭和十二年七月號附録「夏の和洋料理千種の作方」より) 【材料】 きゅうり(6mm厚/水に浸す/塩をまぶす)・塩・大葉(千切り)・醤油・わさび 適宜 【作り方】 1. 皿にきゅうりを盛って大葉を散らす。わさび醤油を添える。 この2品のレシピは、以下を参照しています。昭和のレシピを発掘、紹介している山本直味氏という方ですが、今ではHPの更新はほぼストップしていて、インスタグラムがたまに更新されるといった状態です。是非、バリバリ投稿して楽しませて頂きたいものです。 https://www.instagram.com/nawomayo/?img_index=1 で食べてみた感想ですが、これが驚いたことにすごく美味しいんですね。というかこれまで様々にきゅうりを調理して食べてきたけど、これがベストかも。何より手っ取り早く作れるのも素晴らしい。 ![]() きゅうりスープ 【材料】 きゅうり(斜め薄切り)・ちくわ(斜め薄切り) 1本/水 350ml/【調味料】エシャロットチップ・胡椒 適宜 【作り方】 1. 鍋に湯を沸かしてきゅうり、ちくわを加え、煮る。エシロットチップを加える。胡椒を加える。 台湾の食べ方とのことでどこぞやのHPで見掛けたものです。きゅうりに火を通してスープの具材にするってのは日本人には余り思い付かない食べ方ですね。冷や汁の具材にする場合があるけれど、あれはきゅうりは具材の一部に過ぎないからこれとはちょっと違ってますね。案外、地方によっては熱々の味噌汁の具にしたりしてたりして。 ![]() きゅうりサンドイッチ(Cucumber Sandwiches) 【材料】 食パン(クリームチーズを塗る) 2枚/きゅうり(斜め薄切り)・クリームチーズ 適宜 【作り方】 1. 食パンにきゅうりをのせて挟む。斜めに4等分する。 以前も書きましたが、ぼくにとっての究極のサンドイッチはきゅうりのサンドイッチです。水っぽいものとパンとは相性が悪そうですが、トマトやレタスなどもサンドイッチの具材として定番ですね。バターやこのスコットランド風にクリームチーズでパンをコーティングすることでべちゃっとなるのを防いでいるんですね。当然、乳製品との相性も考慮しているのだからなかなか良く考えられたレシピなのですね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024/07/05 08:30:13 AM
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