テーマ:懐かしい昔の話(540)
カテゴリ:父の麦わら帽子
私が子どもの頃に住んでいた村は山に囲まれた盆地のような土地だった。
真ん中に川が流れて、30戸くらいの家がひとつの集落としてかたまっていた。 私の集落は、その盆地のような地形の中にあって、一番川下にあった。 その川のもっと川下に町があった。 川沿いの道をバスが通るが、その道は、 農閑期には、男たちが自転車で町まで働きに行く道でもあった。 私たちの集落のバス停前には、子どもたち相手の駄菓子を売る小さな店があった。 私は1枚50銭の渦巻きのかりんとうのような硬いお菓子が好きで、たまたま運よく5円を手に入れると 渦巻きのお菓子を10枚買おうか、それとも6枚買ってあと2円で他のお菓子を買おうかと悩んでいた。 その小さな店は子どもたちにとって、楽しみな店であったが、現金稼ぎに町に自転車で出かける大人の男たちにとっても、 楽しみな店だった。 その店は、盆地の入口にあったので、ここまで帰ればあとは家はすぐという位置にあった。 そこで、男たちは、その日の労働と自転車で帰る通勤の労をねぎらうために、その小さな店で、 いっぱい飲んで帰るのだった。 小さな手に5円だの10円だの握りしめて行ったあの店は、 きつい男たちにひとときの安らぎを与えてあの店は、とうの昔の無くなってしまった 老夫婦でやっていた店で、子どもの私にとって、とてつもなく年よりに思えたあの老夫婦は、 ひょっとすると今の私より若かったのかも知れないと思ったりしている。 ・・・・・・・・・・・・・ ◎自然と人間が仲良く暮らしていたころの話です。 ★2012年4月26日*父の麦わら帽子:目次* ・・・・・・・・・・・・・・ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013.05.01 16:37:59
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