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カテゴリ:現代文学一般
・前作「終わった人」は定年を迎えた男性がまだまだこれからとあがく話だったが、これは一回り年上の78歳になった女性が主人公。タイトルの「すぐ死ぬんだから」とか「このトシになったら楽なのが一番」「ナチュラルが好き」「人間は中身」という後期高齢者が良く言う言葉に疑問というか反感を抱いた著者、70歳をちょっとすぎたくらいの著者が書いた著作。(あとがきより)
・とはいえ、主人公ハナの「年相応にみられてはならない」という気持ちに縛られたケアやファッションに対する努力を痛く感じてしまって共感できなかった。裏表紙のおばあちゃん、やっぱり好きになれないなあと思って読んでいたら・・・
・日頃から妻である自分を愛して止まない人畜無害で酒屋の仕事と趣味の折り紙にしか興味がない人だと思っていた夫の岩造が突然亡くなった。悲しみに暮れていたのもつかの間、その夫に愛人とその子供までいたことが分かってブチ切れる。 ・そして話は一気に盛り上がって愛人とその息子相手に宣戦布告するわけだが、正直なところ主人公の言葉には違和感を感じてむしろ愛人とその息子のほうに感情移入してしまった。それが作者の意図だったのかどうかは分からない。どうなんだろう? ・愛人の森薫はとても強いのだが弱い面もあって魅力的な人だなと思う。その息子の岩太郎も素晴らしい人に育っていていいなと思った。その反面、ハナの家族はなんだかドタバタでTVのホームドラマみたいだ。 ・最終的には森親子とも心を通じるようになり、ハナの家族もうまくまとまるというやっぱホームドラマっぽいまとまりで終るので一安心? 〇ママを地獄の淵から助けてくれたのは、女だよ」 ●たしかに夫の浮気が発覚しなければ小説にもならかったが、ハナが生きがいをもって生き生きと人生を送ることはできなかっただろう。逆説的だけど。 〇もしかして、岩造は私との結婚生活が偽装だったのかもしれない ●本当の自分って何だろうっていう問い。きっと真面目な岩造だからハナとの表向きの生活も真実だったのだろうし、愛人である森薫との生活も真実だったのだろうか。ワシにはそんな甲斐性はない。医師として患者さんに対する自分、スタッフに対する自分、家庭での自分、一人になった時の自分、どれが真実の姿でどれが偽装というわけではなく、どれもが真実なのだと考えればいいのだとヒントをもらったような気がする。
・ところで「死後離婚」という制度があることをこの小説で初めて知った。(ちなみに死後結婚というのはないらしい) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2020.11.23 11:47:17
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