|
カテゴリ:在宅医療や緩和ケアをテーマにした本
・医療に関するものはジャンルにとらわれず読んでみたいと思っている職業医師の自分、うってつけの医療関係ミステリーのアンソロジーの存在を知って読んでみた。
・8つの短篇、著者のうち海堂尊、久坂部羊、知念実希人、山田風太郎の4人が医師。
・久坂部さんと知念さんの作品は既読。とはいえほとんど忘れていたので思い出しながら読んだ感じ。あまりにも著名な海堂さんは今まで気が進まずにあえて読んでなかったので初読みだった。 ・なんと読み終わって一番たくさん付箋が貼ってあったのは近藤史恵さんの作品だった。というかほとんどの付箋が張られていたのが近藤さんの「第2病棟の魔女」だった。これはまたこのシリーズを読んでみなさいという神のお告げのような気がするのです。 「エナメルの証言」海堂尊 ・海堂さんの作品は何となく避けていたので初読み。読んでスッキリするとか唸ってしまうとかいうことはないけど、歯の治療歴で個人を同定するというシステムが本当に確実なのかということに切り込んだミステリー。 「嘘はキライ」久坂部羊 ・久坂部さんも同業者ながらあまり好みの作家ではない。既読だったけどほぼ完全に忘れていた。読み返しても、主人公のウソを見破るというあり得ない能力が絡むだけで、医療ミステリーと言うよりも大学医局のゴタゴタが主題。 「第2病棟の魔女」近藤史恵 ・このアンソロジーの中で一番たくさん付箋が貼ってあったのが近藤史恵さんのこの作品だった。 〇ミュンヒハウゼン症候群は、自分を病に見せかけ、自分の身体を傷つける。だが代理によるミュンヒハウゼン症候群-MBPは、別の人間を病気に仕立て上げるのだ。 〇「パパもママも、病気の美雪の方が好きみたいだから」 〇「自分が注目を浴びたいんだと思うわ。難しい病気の子どもを、献身的に世話する母親のイメージとか、そういうものに憑りつかれているのよ」 ・モップを持ったシリーズはこんな感じ? 「人格再編」篠田節子 ・篠田さんは「夏の厄災」が初読みで気になる作家だった。これも当然ながら医療系の話、手術で脳にチップを埋め込んで記憶や性格が変えるっていうのはあまりリアリティがないSFだなと思いつつ、その結果起こるだろう世の中の反応にはリアルではないかもしれないけどなるほどなと思わせるところがあった。高齢者が老化してボケていかずに聖人のようにいい人であり続けて存在されたらその下の世代は・・・まあ正解はないな。問題提起としては面白い。着眼点が時代の先をいっていたのかな? 〇しかし堀は、かつて彼女が手がけた処置を親に施したいとは思わない ・脳にチップを埋め込む手術の名手である堀医師は、いろいろな経験を経て自分の親にはその処置を望まなくなっていた。 「人魂の原料」知念実希人 ・既読だったが内容も結末も忘れていた。とは言え主人公の小鳥遊(たかなし)と天久さんのキャラはよく覚えてましたよ~ 同業者の知念さん、もう臨床医は止められたのでしょうか?これだけ執筆していたら医者としての仕事なんてやってる暇ありませんよね!?と思わず心配してしまう。 「小医は病を医し」長岡弘樹 〇「喬木さんと同じ場所に」 ・元泥棒の主人公が良心から発したラストでのどんでん返しの言葉が最高だった。短編小説の妙なのかな。 「解剖実習」新津きよみ ・そう来たかと思った。医療ミステリーと言えなくもないが・・・ストーリーはやはり短編小説の妙だなという感じ。レイプを扱ったテーマの割には後味も良かった。 「厨子家の悪霊」山田風太郎 ・気持ち悪い作風だけど面白い風太郎さん。忍者もののほうが好みだな。
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2021.10.27 20:07:02
コメント(0) | コメントを書く
[在宅医療や緩和ケアをテーマにした本] カテゴリの最新記事
|