11歳女子、左下6、隣接面カリエス、外傷性咬合
実は隣接面カリエスがなぜできやすいのか?ということはよく分かっていない。一般にはよく磨けていないので、プラークが残っていて酸性に傾きやすいので、酸で歯が溶けるのでは?ということになっている。
ここで提唱している「虫歯の電気化学説」ではそれだけではない、
相対的に酸素濃度が低いところが虫歯になりやすいということがある。これを工業分野では酸素濃度差腐食と呼んだりしている。また隣接面は隣の歯と最も近いところという意味であり、電気の通り道となる。歯(ハイドロキシアパタイト)は水素イオン(プロトン)電導性セラミックスなので、プロトンが通りやすいところが虫歯になりやすいと言える。プロトンがハイドロキシアパタイトの構成物質のカルシウムから電子を奪ってハイドロキシアパタイトの結晶構造が崩壊する。これが虫歯だ。
この子はバスケットボールをやっていて、よく歯を食いしばってプレーしているらしい。これは一部で言われていることなのだが、歯をくいしばると、歯も多少はゴムまりのようにたわみ、隣接歯と押し合って接触部分に応力がかかる。これで大小のクラックが入り、そこから虫歯になりやすいと。
「虫歯の電気化学説」ではクラックの内外の酸素濃度差から酸素濃度差腐食が起こりやすい。
クラックの内外の酸素濃度差だけではなく、同じ一本の歯でも酸素濃度差があれば2つの電極ができる。腐食電極になった方が溶ける。
今回の画像ではクラックが比較的良く見えるのでご紹介しておきたい。
手前の乳歯が抜けて新しい永久歯が萌え揃う前に虫歯の治療をしておこうということになった。
虫歯の表面の着色部分を少し削ってみると、脱灰して白くなっているエナメル質をの中にひときわ溶けている部分が見える。これはクラック部分が見えている。
拡大してみると、クラック部分から虫歯が広がっていることがわかる。
よく見ると茶色に見える象牙質にもクラックが見えるのだが、
このままα-TCPセメントで覆とうすれば再硬化する
CR充填した。