40代女性、左上567、インレー形成後の仮封材のみの放置によるカリエス(虫歯)の進行
前回のつづき
https://plaza.rakuten.co.jp/mabo400dc/diary/202311030000/
今日は4.5年前の治療過程だ。今日は治療過程の解説を多めにしてみた。
辺縁封鎖性のない仮封材で長期間放置していたので、内部の象牙質はほとんど失われていた。外側の薄いエナメル質がかろうじて残っているだけだった。
歯牙というのは硬いエナメル質とある程度弾力があり強い咬合力に耐える象牙質の二重構造になっており、いわば日本刀のような構造になっている。
日本刀の内部のよくしなる鉄が無いとどうなるか?ということだ。外側の硬い刃部だけしかないと強い力がかかるとあっさり折れてしまうということだ。
CR+ボンディングシステムは物性は良くなって来ているとは言え、象牙質に置き換えられる程ではない。
では時系列で、鏡像と実像の2種類の画像をアップする。内部の象牙質はほとんどないということが分かると思う。
レントゲン写真から
左上5、6、7の治療だが、5、6は露髄ギリギリかもしくは露髄しているかもしれない。5番には歯髄症状が出ているようにも見える。通常治療なら神経を取らないと後で痛くなる可能性が高いのだが、3MIX+α-TCPセメントを使えば問題なく経過する。
接着力のない仮封材で長期間放置すると隙間から虫歯になると前医は伝えなかったのだろうか?
7番の隣接面にも虫歯がある
露髄しているように見える。軟化象牙質(虫歯)を全部除去するとエナメル質も含めて歯が無くなってしまうので、α-TCPの軟化象牙質の再硬化現象に期待することにして接着マージン以外はある程度残している。
見た目は綺麗だが、象牙質は虫歯だし、α-TCPセメントの歯質接着性は弱いし、ボンディング材の接着力だけでは薄いエナメル質は剥がれるように破折するはずだ。このことは患者には伝えるのだが、つい調子に乗って硬いものも弾力系の食品も食べてしまう。
次回は4.5年後どうなったかだ。
つづく