カテゴリ:近未来の根管治療シリーズ
40代女性、右下7、自発痛++、外傷性咬合
前回のつづき https://plaza.rakuten.co.jp/mabo400dc/diary/202405080000/ まず、この症例のような非細菌性の歯髄炎をどう考えるかということを抑えておかねばならない。天蓋を除去してみても出血するだけで腐敗臭はしない。細菌感染するような漏洩も見当たらない。 多くの歯髄が壊死するケースを見ていると根部歯髄はまだ生きているが冠部歯髄が溶けていることが多いことに気がつく。よく言われているように歯根尖から細菌感染が起こり始める上行性の歯髄炎というのは見当たらない。考えてみれば中枢側(根尖側)から感染で歯髄が壊死したら抹消側の冠部歯髄も同時に壊死するはずだ。 上行性歯髄炎というのは歯科界だけで通用する都市伝説に過ぎない。 非細菌性に壊死しているのは毛細血管の抹消にあたる冠部歯髄が多い。この部分に塞栓症が起こっていることを示唆している。脳梗塞や心筋梗塞と同じで血栓等によりその血管の支配領域が壊死する。 外傷性咬合の場合も強すぎる咬合力により根尖付近の血管が圧迫されて冠部歯髄の血流が滞ったり、血管が損傷して血栓やデブリ等が冠部歯髄の毛細血管に詰まることにより歯髄梗塞が起こりうる。 この症例でも冠部歯髄の一部が壊死していたが、壊死している部分は溶けているのでエアタービンの水で飛ばされる。飛ばされた後は炎症性に赤くなった歯髄が見える。これに触れると出血するが、ボスミン液で止血後、そのまま3MIX+α-TCPで直覆すれば痛みは治る。 治療の詳細はここにアップしている。 https://plaza.rakuten.co.jp/mabo400dc/17000/ このようにここではいわゆる根管治療(神経を取って根管を緊密に充填する)と直覆との区別はない。生きている歯髄は保存可能だからだ。不確実性の高い根管治療はする必要性は全くない。生きているところまで超音波スケーラーのエンドチップで洗浄し、出血すればそれ以上触る必要はない(リーマー・ファイルの使用も根管内の乾燥もしなくて良い)止血して3MIX+α-TCPで根管をゆるゆるで良いので充填するだけで勝手に根管(天蓋)は自然閉塞(閉鎖)する。 出血しても慌てずにボスミン液で止血する。麻酔拔髄する必要はない。 この時までもこれ以後も麻酔は使わない。なぜなら健全歯質を削る時は痛いので麻酔を使わざるを得ないのだ。虫歯は削っても痛くはない。MIのためには麻酔は使ってはならない。 遠心の天蓋も開けてみたが歯髄は生きているようだったので、深く追及せず そのまま3MIX+α-TCPで直覆(根管充填)する この後はCRで修復する。インレーやクラウンでの修復は辺縁封鎖性が悪く予後不良となるので考えない。 意図的に冠部歯髄だけ取り根部歯髄だけを残すことも可能だが、歯質切削量が多く歯髄症状の出やすいジルコニアクラウンを入れたいばかりに、悪用しないようにw 破折片は見当たらなかったので追求していない。 ストリップスなしでCR修復した デンタルフロスが入ることを確認 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024/05/10 11:02:05 PM
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