50代女性、右上6、脱離
従来型の神経を取って冠を被せるという治療法は非常に古く2000年前のローマ時代にはあったとかなかったとか、少なくとも200年前の歯科医学の本には載っているとか言われている。
ま、その頃の人生は50年でそれまで歯が持てばよいという話ではあったが、今はそうもいかない。
根管にポストを挿すというのは安易な維持方法ではあるのだが、セメント脱離しての2次カリエスや歯根破折は多い。
この形を見れば誰でも想像できると思う。ポストが咬合力で歯根に食い込み揺するわけだから当然だ。
脱離したポストだが、ポスト以外のセメントは脱離している。歯質と金属のヤング率(たわみやすさ)の違いで(歯質の方がたわみやすい)脱離や歯根破折が起こる。
機械工学的にはやってはいけない方法だということがわかるが世界中の歯医者は(気が付かないふりをして?)100年以上もやっている。
そろそろ高齢化時代を迎えた今、考え方を変えた方が良いと思う。
脱離直後、内部は汚れている。だいぶ以前から脱離していたことがわかる。
虫歯(軟化象牙質)をあらかた除去したところ。クラック(ヒビ)や歯肉縁下に及ぶ欠けがみられる。
かなり歯質は劣化が進んでいる。通常のポストを入れるとすぐに歯根が破折してしまう可能性が高い。
通常治療はできないか、予後不良が考えられるので抜歯となる。
クラックが2本見える
α-TCP50%クエン酸練り
ピンレッジドラウンドCRコアで印象
CRコアは塑像面にボンディングプライマーで接着するので外れにくいだけではなく歯質を守る。
また外れる時には躊躇なく脱離するので、歯質を2次カリエスや歯根破折から守る。
このような考え方をフェールセーフと呼ぶ。
必ず起こるトラブルによる2次被害を最小限に押さえるという考え方だ。
今までの歯科業界にはない考え方だが、他の業界に学ぶべきだろう。
つづく?