ハーン銀行は多くのモンゴル関係日本人が知っているように、オーナーは日本人です。大手旅行会社HISの澤田秀雄会長の資産管理会社である澤田HDが、ハーン銀行の54.4%を所有しています。
ハーン銀行は元々は国営銀行でしたが、民営化の時に澤田さんがオーナーになりました。金融の経験はありませんでしたが、経営陣には欧米から金融のプロ経営者を集め、グローバルスタンダードの経営を進め、モンゴルのトップ銀行となりました。
私もモンゴルに住み始めた当初はゴルムト銀行でしたが、あまりに使い勝手の悪さでハーン銀行に変更した経験があります。
モンゴルにおける日系企業の成功例としてはこのハーン銀行とモビコム(住友商事とKDDI)が挙げらることが多いですが、10年も20年も経っても同じ名前しか出てこないのは残念です。その後に続く日本の大企業がほぼ皆無ということです。
で、このハーン銀行の過半を握る企業のオーナーが変わりそうなのです。これは秘密情報でもなんでもなく、半年前から公にされている事実のようです。どういうことか?
今年の2月から3月にかけて、ウプシロン投資有限責任組合というのが澤田HDの上場株式の50.1%を買い付けるというTOB宣言をし、実際に買い付けを始めたのです。TOBというのは、公開で企業買収をする、ということです。澤田HDは上場企業ですので、こうした動きは秘密ではなく公開情報となっています。
これが成り立つとどうなるのか?それはウプシロンが澤田HDの経営権を握るということになりますから、自動的にハーン銀行の経営権を握るということになります。つまりこれが成立したら澤田さんはハーン銀行のオーナーではなくなり、全く違う人がハーン銀行の経営権を握るということになるのです。
こうなると、いろいろ疑問が浮かんできます。
誰がハーン銀行のオーナーになるのか?
ウプシロン投資有限責任組合って何?そのバックには誰がいるのか?
今、そのTOBはどうなっているのか?
などなどです。
これらの疑問には推測などもありここでは書けない部分もありますが、はっきりしているのは、まだそのTOB、つまり買収は終了していないということです。3月までに終わっているはずなのに、なぜ8月の今でも終わっていないのか?
実はその買い付け期間はなんと12回も延長されているのです。なんとも不思議な現象です。ちなみに、この延長はコロナ騒動とは関係ないようです。なんで公開買い付けが終わっていないのか?というより、そもそもなんで澤田HDを相手にTOBがなされたのか?
澤田さんがオーナーである澤田HDの過半を買収しようというのですから、そもそも澤田さんが応じなければ成立しません。澤田さんが嫌だというのにTOBをかける敵対的TOBも考えられますが、今回のケースは澤田さんは応じる姿勢を見せているようです。
つまり澤田さんはハーン銀行株どころか、澤田HDそのものを売りたいと考えているということです。
(続く)