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田崎正巳のモンゴル徒然日記

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2021.10.27
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日経新聞のGLOBAL EYEというページに、一面に大きくモンゴルの特集が乗っていました。題名は「モンゴルに迫る「資源の呪い」」です。内容的には、本ブログの読者であれば、何度かは耳にしたような内容です。

とはいえ、具体的な個人名(政治家など)まで書かれているので、こんな細かいことまで書ける日本人は誰なんだろうと思って、署名を見たらモンゴル人でした。

この記事は恐らくNIKKEI ASIAというアジア版から転用しているようなので、恐らく大元の記事は英語なのでしょう。書いた人は「ハリウン・バヤンツォグト」という人です。記事の中身を見てみましょう。

記事冒頭にあるのは、ロンドンの高級アパートメンツのことで、400万から800万ドルする豪華マンションの所有者の多くは、所有者の名義を隠すために会社名義にしているとあります。

ここはモンゴルの元首相スフバータル・バトボルドが2つの住戸を所有していることが明らかになった場所とあります。当然ですが、モンゴルの首相がどんなに真面目に働いて、どんなに倹約しても、こんなマンションを2つも買えるはずありません。

当然のことですが、モンゴルに蔓延している賄賂、不正によるものです。世界銀行によれば、モンゴルは2004年以降、280億相当の鉱物資源を算出したとあります。およそ3兆円です。それに対して、国民(モンゴル政府)が受け取ることができる税金と鉱山使用料は合計で90億ドルになります。およそ1兆円。採掘会社の経費や利益もあるでしょうから、そんなに悪くない数字です。これが本当にモンゴル国民に使われるなら。

ですが、実際には政府は87億ドルを借り入れ、残ったのはわずか2億ドルだけなのです。普通の国であれば「なるほど、将来の収入を担保にして政府が借り入れ、それを国民のために使ったんだな」と思うところですが、そこはモンゴルです。このブログでもたびたび登場しますが「お金を借りる」と「お金をもらう」というのは、ほとんどモンゴルでは同義語なのです。

私も経験ありますが、モンゴル人は1-2回しか会ったことない人にも気楽に「お金を貸してくれ」「その本貸してくれ」「そのパソコン貸してくれ」と言います。無返済を前提の「ください」はまず言いません。でも、結果は借りるともらうがほとんど同義語だということを知るのです。

この記事に関することを言えば、実際には政府が表立って借りたことにはなっていますが、それは政治家の手に渡って、どこに消えたかもわかっていないのです。何年前でしょうか、モンゴルの国会で「新たに稼いだ鉱山収入は、みんな過去の借金の払いに消えてしまう」「じゃあ、その過去の借金は何に使ったのか?「国で調べても、どこに消えたのかわからない」という議論がありました。まさに、この議論の中心が、この新聞に書かれている消えた87億ドルです。

これは「資源の呪い」と言われる典型的な現象です。私がモンゴルにいた時ですから、10年ちょっと前でしょうか。資源に関する国際会議があるから出席してほしいと言われ、ウランバートルの旧MCSのビルで行われた鉱山会議に出た時の話です。

出席者はインターネット会議を使って、チリやスウェーデン、カナダ、ボリビアなどの国々からも参加してました。テーマの中心はモンゴルの鉱山開発です。そこでは、多くの出席者が異口同音に「このままではモンゴルは資源の呪いで、決して豊にはなれない」と言っていたのを覚えています。

資源の呪いというのは、アフリカ諸国を見れば簡単に理解できます。コンゴやボツワナ、シエラレオネなど鉱山開発で巨万の富が産出されたのに、国民は何年たっても貧乏のままだという現象です。

民主主義が未発達の国が資源豊かな国だとどうなるか?
・鉱山は許認可事業であるので、政府権力者に大きな利権が生まれる。日本のような「公共事業の利権」とは比べ物にならないほどの利権です。総額や利幅が違うのです。
・国民にとっては、鉱山関係の仕事とそれ以外の仕事の間に大きな収入格差が生まれる。しかも鉱山関連は、自動車などの大規模製造業と違って、経済規模の割には大きな雇用を生まない。つまり貧富の差が生まれるのです。
・異常に儲かる一部の産業と、国際競争力がない大多数の産業が同居し、適正な為替レートが見えなくなる。鉱山関係者にとっては輸入品も気楽に買えるが、大多数の人にとっては輸入品が高くなって買えない。
・汗水たらして一生懸命働くよりも、鉱山関係にコネを作るほうが簡単に高い収入が得られるので、コネ社会が蔓延する。コネ社会は賄賂社会につながります。なので自己研鑽をしようという社会的風土ができない。
・若者の将来への希望がどんどん先細り、結果として犯罪、治安の問題が出る。
などなどです。

・日本、シンガポール、スイスなど資源に恵まれてない国は、国民が一所懸命に働かないと生きていけないので、唯一の資源が人となり、教育水準は高くなり、結果として資源豊富な国よりも競争力が高くなる。
というわけです。

モンゴルのことを少しでもご存じの方は、これらの呪いの定義のほとんど今のモンゴルが当てはまると感じると思います。私もその当時モンゴルの新聞などに、このままでは「資源の呪いで国はだめになる」という記事を寄稿したこともあります。モンゴルの友人によれば、その新聞がテレビのワイドショーや討論番組にも使われたと聞きました。反応は?

多くの一般国民は私の提言を支持する立場だったと聞きました。ですが、政治家だけが強硬に反対したとのことです。その理由は「時間がない」です。私の提言は、鉱山の利益を使ってインフラ整備、人材開発、そして原料のままではなく低いレベルでもいいから加工したうえで輸出すべきというものでした。

政治家によれな「そんなことやってたら、4年も5年もかかる。今、モンゴルに金が必要なんだ!」と叫んだそうです。3-4年?10年かかってもいいじゃないですか。

政治家が叫んだのは「今の私に現金が必要なんだ。政治家の任期中に金を持ち出すことが必要なんだ!」ということなのです。その時からこうなるとはわかっていましたが、一介の外国人教師の提言はそれで簡単に無視されたのです。

その記事には衝撃的な試算が書かれていました。モンゴルの現在の石炭、金、レアアース、ウラン鉱床の価値は2兆7500億ドルもあるそうです。日本円で300兆円!!モンゴル人全員が億万長者になれる金額です。

今の政治家は「ばら撒き」に熱心です。選挙前となれば、鉱山収入を担保にばらまき合戦が始まります。スキャンダルも頻発しています。韓国の大統領のほとんどが退任後、逮捕されたり、自殺したりしますが、モンゴルの首相も負けてはいません。

ほとんど有力政治家はこの美味しい話に絡んでいると言っていいでしょう。それに伴い、政治家ではない役人も、賄賂集めに熱心です。上に立つ政治家も自分のことを考えれば、役人にやめろとは言えません。

今後どうなるのか?記事にある「若い世代」はもう不正政治にはうんざりだという人が多いのは事実です。「鉱業への依存度を下げなければ、今よりもっと困難になる」と書かれています。ですが、それは10年前と全く同じだということです。

金権政治打破のために10年前に立ち上がった有望な政治家は、そのお金の力を前に苦しんでいます。鉱業への依存を下げるべき、と言いながら、有力者らは家族、子息らをなんとか鉱山ビジネスにかかわらせようとしています。

モンゴルはまさに「資源の呪い」の真っ最中の国と言えます。





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Last updated  2021.11.10 15:00:21
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