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カテゴリ:世界とモンゴル
5月9日の第二次大戦対ドイツ戦勝記念日式典にモンゴル政府として正式に参加するかどうかは、まだ決まっていないようです。
今回の林外務大臣のモンゴル訪問は、行くことを決めそうになっていた政府に再考を促すという意味では、一定の成果はあったようです。が、日本人が考えるほど、「そんな馬鹿馬鹿しい式典なんて断ればいいじゃないか?」とはすんなりいかないのが、モンゴルの悩ましい地政学的ポジションなのです。 出席要請はモスクワではなく、ブリヤードにあるウランウデなので近いことは近いですが、そういう距離や時間の問題ではないのは当然です。ちょっとここで言葉のおさらいをします。 私はモンゴル人との会話からブリヤード人と呼んでいますが、ネットで検索するとそのほとんどがブリヤート人とあります。ドとトの違いです。私の聞き間違いで今までずっと間違った言い方をしていたのかなと思ってしまいました。が、どうもそうではないようなのです。なぜか? ブリヤード人をブリヤード語(=モンゴル語)で書くとБуряадと書きますが、ロシア語で書くとБурятыとなります。同じキリル文字で最初の4文字は同じですが、そのあとは違うのです。ブリヤード語のдは英語で言えばDの発音ですが、ロシア語の方は見た通りTで、発音もTです。 なので、モンゴル人から聞いた発音をベースに日本語で書けばブリヤード(またはブリヤッド)のような発音になるのです。ネットを見てもこの違いを明確に示している文章を発見することができませんでしたので、もしかして今、私が最初に指摘した??なんて勝手に思っています。ということで、本ブログではロシア式ではなくブリヤード式を使うので、ブリヤード人と書きます。 本ブログ3月13日付け「ブリヤード・モンゴル人の悲劇」(https://plaza.rakuten.co.jp/mongolmasami/diary/202203130000/)で書いた通り、ロシア内のモンゴル人の多くが犠牲になっているのです。開戦後わずか2週間で多くのブリヤード・モンゴル人が亡くなっているのです。 もちろん、彼らには今もこちらのモンゴル国内に親戚もいます。モンゴル人にとっては、ロシアが勝手にやっている戦争ではあるものの、単なる政治的な問題だけではないのです。同胞、親戚がたくさん殺されているのです。 日本のとある記事を読みました。そこには「今、多くの遺体がそのロシア国内の出身地に送り返されており、テレビでいうプロパガンダとは全く違う様子が地方に伝わっている。」とありました。だが、「モスクワやサンクトペテルブルグに遺体が送られることはほぼない。」ともあります。「前線に送られる徴集された戦士の99%は、都会から遠く離れた田舎の若者である。モスクワやレニングラードの人たちにとっては全く戦争など関係ない生活をしている。」と。 そして、モンゴルから衝撃的な事実を知りました。ブリヤード人の戦死者数は民族別でなんと第2位だそうです。ロシアは多民族国家もいいところ、中国は55民族と言ってますが、ロシアにはその倍を超えるくらいの民族がいます。ロシア全体の人口は1億44百万人ですから、44万5千人しかいないブリヤード人の比率は1%どころかたったの0.3%しかいないのです。それなのに戦死者数では2番目に多いのです。 1位はどこかというと、タジク人だそうです。こちらはもっと少なくて、わずか12万人です!タジク人全体では、アフガニスタン、タジキスタン、ウズベキスタンなどに2000万人くらい入るようですが、ロシア内のタジク人は超少数民族です。 こんなに人口の少ない民族が戦死者数第1位なんて、どう考えても意図的に選んで戦地に送り込んでいるとしか考えられません。タジク人も元々はアジア系遊牧民族ですから、戦死者数1位と2位がアジア系遊牧民ということになります。 当然ですが、白人のロシア人は幹部らには多いでしょうが、未経験の若い兵士が最前線に送り込まれるなんてことはないのです。プーチンはよく「ロシア人とウクライナ人は兄弟だ」などと言いますが、正確に言えばロシア人ではなくロシア民族なのです。誰も好き好んでロシア人になりたくなかったブリヤード人らのことは、プーチンにとっては「ロシア人ではない」と思っているのでしょう。 中国も中華民族と漢民族を都合によって使い分けています。「中華民族の夢」って何?中華民族なんていないでしょ?国籍が中国だというなら単に中国人と言えばいい。モンゴル人もチベット人もウィグル人も自分を中華民族なんて思ってないし、それは単なる漢人の夢でしかないと思っているわけです。そもそも中華民族なんて歴史的にも一度も存在したことがないのですから。 ロシアもご都合主義で、ロシア人イコールロシア民族という前提で話す一方、戦争などで犠牲を強いられるのは、国籍はロシアだけどプーチンすらロシア人だと思っていないアジア系民族なのです。まさに人種差別をはっきりと見せつけているのです。 こんな同胞を意図的に殺している国に、まさに同胞のブリヤード人がたくさん亡くなっているこの時期に、どうしてモンゴル人が「77年前に勝利しました。ロシアおめでとう!!」などと言えるのでしょうか? それでも正式にロシアに対して未だ拒否はしていないようです。でも、当然のことながら誰も「行きたい」「行くべきだ」とも思えないのです。ここは外交の知恵の出しどころです。どうするか? やっぱりここはコロナに登場してもらうしかないだろうなという見立てがあるようです。要するに直前になって、「行く予定をしていた人がコロナになった」とか「急速にコロナが広まって、濃厚接触者が多く、ロシアに迷惑をかけられない。」とかでしょうかね。なので、実際にどうなるかは当日までわからないのかもしれません。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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