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カテゴリ:千代田区
近頃、神田で呑むことがめっきり減っています。いやそれは神田に限った話ではなく、新橋や浜松町、新宿や渋谷とか池袋もあまり行っていないなあ。とにかく人混みがうっとおしくて今挙げた町にはできることならあまり近寄りたくない。こんなことを書くと、じゃあ繁華街に住むじゃないよと身近な人にはよく言われるし、ブログを書いてることを知る知人は都内を代表するこれらの繁華街を避けて呑み屋巡りのブログなど書いていて満足なのかなどと、人の趣味をどういう権利を行使してか揶揄したりする輩もいたりするのです。そんな個人的な愚痴はとりあえず捨ておくとして、いずれの町も近頃足が遠のいているとはいえ、結構な軒数を経巡りしてきました。でもそれでもやはり見落としがあるようで、それも近いうちに行っておくべき宿題としてしっかりメモしていたにも関わらず、身に余るほどの宿題の渦に呑み込まれて、つい先ごろまでその存在を失念していたお店があるのでした。メモというものは、億劫がらずに翻って繙いてこそ価値が生まれるものであって、冷蔵庫に貼りっぱなしにしたり、データとして保存しておくだけでは一時の自己満足と安心感しかもたらさぬのです。
さて、メモには「巴家」という店名が記されていました。JRの神田駅からも地下鉄の小川町駅からも5分程度と交通網の過密な都心部だけあってさほど不便でもないのにこれまで来ていなかったのは、怠慢だと謗られても反論の余地がありません。それでも無くなる前に来れたのだから自分的には満足です。かつて御茶ノ水に勤務していた頃に訪れていれば何もこんなに慌てふためいて来る必要もなかったとどこまでもいじけた発言をしてしまうのです。やって来たのは昼下がりで、昼食時を大いに経過していました。この時間帯だと空いていて店を独り占めしているようで、気分が良いに違いありません。ぶっ通しの営業であることを調べてはいましたが、やはり店の前に来るまで不安でした。オフィス街の食堂なのでサラリーマンのいない土日や祝日にはやっていないのもこの店を訪れる機会を減ずるには十分な理由であります。ともあれ、外観からして神田界隈らしい風情溢れるもので、期待はグンと高まります。いそいそと引き戸を開けると想像以上に開店当時の面影を留めたー実際には開店した頃のことなど知る由もないのですがー店内の景色にまず見惚れてしまいます。本当ならじっくりと品書も見定めたいところですがそれどころではありません。清酒とランチセットを手早く注文すると、すぐに運ばれて来た菊正宗のガラスのお銚子にさえ嬉しくなりながら、ゆるゆると盃を口に運びます。店の方も暖簾の奥にチラホラ姿が見え隠れしますが、基本的に静謐な自分だけの時間を堪能します。こんなに優雅なひと時などそうそうありはしません。名物らしき焼売の付いた半ちゃんラーメンも届きました。焼売は普通に美味しい、大体焼売というのは100円ローソンのものだってそれなりに食べられるものだから良くできた食品なのであります。ラーメンは彩りのナルトやホウレン草が鎮座なさらぬのは、ちょっと寂しい気もしますが他の2品でバランスが取れていると見做しましょう。この麺が独特な食感で楽しいのです。プニっとした噛み心地の後には、唐突の歯切れの良さが待ち受けていてプニっ…プツンを繰り返すともう止まらない。焼売も炒飯も放り出してひたすらラーメンに突進です。辛めのそば出汁みたいに素っ気ない汁もコショーを大量に投下すると瞬く間に懐かしの中華そばに変貌します。常々、町の中華屋さんには特にコショーでお世話になっています。一転して炒飯は濃い目の味付です。どうでもない感じですが、でもまあ家じゃこの味出せないんだろうなあ。酒を挟みながらもほとんど一心不乱に一気食いしてしまいました。やはり前々から来ておけばよかったとシミジミと後悔するのでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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