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カテゴリ:喫茶店
別に暇を持て余していたんじゃないのだけれど、なんとか時間のやり繰りやら各種言い訳を用意して一日自由になる日を確保できました。近頃、時間があっても財布が空っぽだとか、その逆だったりしてどうも歯車がズレているような気がします。この休みは両方が揃った稀有なタイミングだったのです。そして、ぼくの場合はよく予定外の行動であまりスケジュールを遵守せぬ方なのですが、それでも最初の一軒目の喫茶店をどこにするか、それから最初の呑み初めをどこにするかー昼呑みは別、これはその日の体調と出会った店次第ー、その通過ポイント程度は決まっていると、グンと充実した一日となる傾向があります。この日は手許に京王線のメモがあったのでそのメモを頼りに一日乗車券を駆使して回れるだけ回ってやろうという意気込みで家を出たのでした。
なので高尾線に乗り継いだはいいけれど、一挙に高尾山口駅まで向かったかといえば、もう少し作戦を立ててこの細やかな旅の成功を占う事にしたのでした。向かったのは、めじろ台駅です。何だかとてもおハイソな駅名が付いていますが、文京区の目白台とは全く趣を異にしております。全く持って郊外の住宅街の眺望で、眺望と書いたけれどこの語の喚起する俯瞰的で威圧的な印象は少しも感じられぬのです。駅の北側には多少なりとも呑み屋があったりしますが、基本的にあまり面白みはない。すぐに町歩きにも飽きてしまい、ちょうど開店時間を過ぎたばかりの「アン」に向かうのでした。この日の一軒目に相応しい店なのか、いくらかの緊張を伴って入店します。瞬間、カフェテーブルが目に止まり、これは少しも喫茶店らしい佇まいなど期待できぬコーヒーショップのような無機質で心無い内装かとガッカリしたのですが、いや奥の席に進むと壁のロゴ装飾などに、いわゆる喫茶店とは違ってはいるものの、時代遅れのスタイリッシュさが感じられ、これはこれでユニークなのです。奇妙な違和感が楽しい、独特の美意識のある駅前喫茶でした。 「モンシェリー パートII」は見当たらず、空き地か空き店舗のいずれかだったのでしょうが確認しようとも思わぬのでした。 次こそは時間が空いたので、折角だからと高尾山口駅まで行ってみました。次の上りの時間までしばらく時間があるのでしばらく駅前を散策することにします。「稲毛屋支店」は前々から来たいと思っているのですが、今回も見送ることになりました。駅前にいくつかカフェの文字が入った大きな看板を見ましたが、立ち寄るまでもなさそうです。第一まだ営業していない。ここで再び高尾駅に引き返すことにします。 高尾駅のそば、グルメシティーダイエー系列の複合スーパーですねーの2階にプチゴージャスな喫茶店があるそようです。店舗前には開店待ちの住人たちが群がっています。これ程までに慌ただしく開店待ちするという事は、この方たちの多くは近隣の飲食店の買い出しなのか。時間になり、自動ドアが開くと人々は足早に散らばりましたが、2階に向かうお客さんはぼく一人なのでした。「オルム」は秘密めいた階段を上がった廊下の突き当りにありました。遠目には飲食店というよりは、おばちゃま向けのブティックっぽく思われましたが、実際に店の半分はおばちゃんたちが好みそうな雑貨類を扱っていました。ママさんはちょうど湯を沸かしているところで、どうぞと通してくれました。奥のソファ席に腰を下ろすとここが旅先でもどこでもない場所にいるような気持ちになります。これは喫茶店の特殊な効果の一つです。店の印象がその立地が何処にあるか、東京なのかそれともどこかの地方都市なのかといった問を無効にするのです。場合によっては日本ですらない欧州に意識を運んでいってくれる事もあるのです。まさにここなんかは欧州のどこかの没落貴族の応接間に思えなくもない。本来であれば、ゆったりと茶を飲めるのが喫茶店の使命であるならば、和風のテイストがもっと普及するはずじゃなかろうか。かつての日本人の外国への憧憬が歪に拡散したというのは簡単だけれど、そんな変な日本人は捨てたものじゃないのです。ここもまたスーパーの二階とは思えぬ異空間で楽しめました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017/07/09 08:30:08 AM
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