|
カテゴリ:葛飾区
亀有には「江戸っ子」をはじめとする都内でも指折りの名店と評される酒場もありますが、こうした有名酒場はどうしたって混み合っていて居心地という面では、余り好きになれません。仕事を終えての息抜きで酒を呑みに行って満員電車みたいな混雑した環境で過ごすのは、どうにも気乗りのしないことです。そりゃまあ、ぼくだってもともとはこうした酒場を狂ったように巡っては、それなりの満足を感じてもいた訳ですが、相応のストレスが身に掛かっていることは常に感じていたのです。思えばかつてやはり狂ったように通い詰めた映画にしたって、シネフィルたちが挙って押し寄せる上映ってのがあって、また開始時間のどのくらい前に行けば入れるのだろうか、それだけの時間を立ったまま並んで待つのは辛いだろうなあとか、そもそも入れるかどうかすら危うい場合も少なくなくて、辛うじて入れても立ち見だったりととにかく行く前も行ってからもストレスが終始付きまとっていたのでした。酒場巡りもそんなストレスを覚悟しなくてはならない場合もあって、少なくとも映画の場合は最低限、会場が閉まっているということはなく、かつては稀にプリントの状態が良くなくて上映中止もしくは上映作品そのものが別な作品に変更になったり、16ミリフィルムや酷い場合はDVD上映となったりする場合もあるけれど、酒場の場合は予告もなく平気で休んでいたりすることもあったりで、今ではそんなに遠征して呑むことも少なくなったから初めから余り強い期待感を抱かずに済ませられる程度の心の余裕を持てるようになりました。
ってな訳で、財布の問題さえ気にしなければ目当ての酒場がやっていなくたってそうそうにはへこまなくなっています。しかも目当ての酒場がやっていなかったりしてもむしろ予定外に好みに合った酒場に巡り合うこともあるのです。「小料理 梓」もそうした軽い気持ちで暖簾をくぐったのですが、店内の古びてはいるけれど、こざっぱりとしていていい雰囲気です。店の方も実に感じがいい。父娘なんでしょうか、オヤジさんは寡黙ですが注文したホタルイカが大量らしいなんて話をしているとそれに乗っかってきてくれて、でも邪魔にならない程度でスッと身を引いて仕事に戻るというできたお方なのだ。娘さん(?)もまた、明るく終始笑顔を絶やすことはなく、客たちとの会話も楽し気に交わしはするけれど、仕事の手を休めることもなく、父(?)とも良好な関係であることを匂わせる仕草や会話が微笑ましいのです。肴もシンプルな魚介中心ながらとても丁寧な仕事がされていて(と気取って書いてみる)、酒も種類は限られてはいますが、渋いところが用意されています。ぼくの財力では毎晩は無理だけど、時々通ってきたいなあと思わせてくれる良店でした。事実、その翌週にはまた訪れることになるのだから、ぼくもこういう目立たないけれど、ちゃんとしたお店がいいと思える年頃になったのかもしれないなあ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024/05/19 08:30:11 AM
コメント(0) | コメントを書く
[葛飾区] カテゴリの最新記事
|