ロウ・イエ「未完成の映画」シネマ神戸no27
ロウ・イエ「未完成の映画」シネマ神戸 ボクは、たしか「シャドープレイ」という、この監督の作品を見たことがあるのですが、中国の第6世代の監督、ロウ・イエの最新作らしい「未完成の映画」という作品をシネマ神戸で見ました。 始まりから、真ん中を過ぎるあたりまで、ドキュメンタリィ-映画だと思い込んで、イヤ、思いこまされて見ていたのですが、ホテルに、一人で閉じ込められているはずの主人公のチン・ハオの映像が、スマホの自撮り以外の別のカメラの視線で映っているという、まあ、実に初歩的な仕掛けに「あっ!これはドラマやん!」 と、ようやく気付いて、膝を打ちました。 ドキュメンタリィーだと思い込まされたのは、10年前に造りかけて完成しなかった作品として映し出されるシーンに若き日のチン・ハオ(ジャン・チェン)が映り、10年後の今、そのチン・ハオと監督のマオ・シャオルイが議論するという展開を見ていて、この監督がロウ・イエだと思い込んだ結果ですね。 二人が話し合うのは2019年、話し合いの結果、その年の暮れから2020年の1月にかけて、再制作の撮影が武漢の近くの都市のホテルで始まります。 北京から俳優のチン・ハオがやって来て、監督をはじめ、大勢のスタッフによる撮影現場が映し出されます。 で、2020年の春節を目前にした現場をコロナのパンデミックが襲います。そこからのスマホの映像が異様にリアルなんですね。政府の対応、街の状況、人びとの動きが、おそらく、その時の実写でしょうね。この映画のために撮られたドラマ映像にスマホ映像が重ねられるという、所謂、フェイク・ドキュメンタリィーの方法なのですが、実にうまいものでした(笑)。 ドラマとしての展開も見事ですが、現実に対する問いかけの鋭さ! が映画の後ろに渋い光を放っている印象の傑作だと思いました。拍手! チラシにロウ・イエ監督のコメントが載っています。 分断された世界の中で、それでもなお「映画をつくること」が何を意味するのか? 10年前に完成できなかった映画の、おそらくは政治的理由、コロナに対する政府の対応、全世界を巻き込んだパンデミックの実態、鋭い問いかけ! を感じさせながら、あくまでもリアルに徹している映像! に、ロウ・イエという監督の映像表現にかける覚悟!のようなものを、しかと受け取りました。監督に拍手!です(笑)。 監督・脚本 ロウ・イエ(婁燁)製作 マー・インリー フィリップ・ボベール脚本 マー・インリー撮影 ツォン・ジエン編集 ティエン・ジアミン ベンジャミン・ミルゲキャストチン・ハオ(ジャン・チェン)マオ・シャオルイ(マオ・シャオルイ)チー・シー(サン・チー)ホアン・シュエン(イエ・シャオ)リャン・ミン(アジェン)チャン・ソンウェン(タン)ヨウヨウ(パオパオ)2024年・107分・G・シンガポール・ドイツ合作原題「⼀部未完成的電影」・英題「An Unfinished Film」2025・05・16・no74・シネマ神戸no27追記 ところで、このブログをご覧いただいた皆様で楽天IDをお持ちの方は、まあ、なくても大丈夫かもですが、ページの一番下の、多分、楽天のイイネボタンを押してみてくださいね。ポイントがたまるんだそうです(笑)