週刊 読書案内 2024-no142-1064 ウォルター・アイザックソン「コード・ブレーカー(上・下)」(文藝春秋社)
ウォルター・アイザックソン「コード・ブレーカー(上・下)」(文藝春秋社) 今日の案内はウォルター・アイザックソンという、学者さんの「コード・ブレーカー(上・下)」(文藝春秋社)です。それぞれ300ページを越える大作評伝です。だれのかというと、副題にJennifer Doudna,Gene Editing,and the Human Race、なんとか訳すと ジェニファー・ダウドナ、遺伝子編集、そして人類の未来でしょうか。 で、この案内を読んでいただいてるあなたは、ジェニファー・ダウドナというお名前ご存知でしたでしょうか。ボクは知りませんでした。 ああ、それから、この評伝の書き手であるウォルター・アイザックソンはご存知でしょうか?「スティーブ・ジョブズ」(講談社文庫)で評判をとった人ですね。アメリカではベストセラー・メイカーとして評判の評伝作家で、まあ、ボクは名前しか知りませんでしたけど。 で、「コードブレイカー」ですが、主人公のジェニファー・ダウドナという人は2020年にノーベル化学賞をとっている人ですね。業績はCRISPR-cas9という遺伝子操作の技術の開発ですね。 遺伝子工学とかに興味をお持ちの方なら、即答でしょうが、40年前にライアル・ワトソンの「二重らせん」(講談社文庫)を読んで以来のじいさんにはポカンでしたね。 で、なぜ読んだかというと本棚に飾ってあるときの表紙の写真です。上巻と下巻の表紙を横に並べると双子の天使なんですね。「コード」って、ひょっとしてヒトの遺伝子?じゃあ、ブレイカーってどういうことよ? で読み始めたら、これがヤメラレナイトマラナイでした。 ほとんどの記述が「インタビュー」というか、メンドクサイこと抜きなのですね。最初はダウドナさんも「二重らせん」だったことから始まりますが、彼女のビルドゥングスの物語が出会った、その分野の世界中の学者とのやりとりや有名大学の研究室での活躍が、まあ、「実録」的に記述されていて、実に面白いんです。 ただ、二重らせん程度のオツムの老人には登場する学者たちの話題の中心になっているのが、なぜDNAではなくてRNAなのかという、なんとなくな疑問が解けないまま下巻に突入して、突如、「ええー、そうなん???」 でした。 上巻の山場は、ボクが読む所では、ダウドナをはじめとする世界の学者たちによるクリスパーの特許争いの内幕でした。ところが、下巻に入ってクリスパーの正体が素人の老人にもわかり始めるのです。 で、上で、いいましたが、上巻下巻の写真を重ねるとこうなります。 この双子の天使は、親が持っている遺伝病とか、その他のマイナスの遺伝的要素をすべて「ブレイク」 して生まれてきた子供なのでした。「クリスパー・キャス9」という遺伝子編集技術を用いればそれが可能であるようなのです。実際、37章では両親の遺伝病をブレイクした双子が、すでに誕生していることが報告されています。 愕然! ですよね。ご存知でしたか?ボク自身は、改めて、「コードブレイク」という書名にポカーンでした。 もう、人の遺伝子操作は始まっているんですね。垂水駅のプラットホームから「だれもが素敵なパパとママになれます」という不妊治療の看板が見えますが、あれって、まさかそういう宣伝なんじゃないですよね。 でもね、この本で、素人なりにわかったことは、コロナの最中に「ワクチン接種」ということが、頻りに叫ばれましたが、あのワクチンって、RNAワクチンなんですよね。まあ、こう書いてピンと来る方は現代医療について行っていらっしゃるのかもおしれませんが、「それって、何のこと?」 とお思いになる方は、まあ、こんな分厚い本じゃなくていいですから、「RNAワクチンの仕組み」の解説くらいはお読みになってから予防についてお考えになることも大事かもですね。 最後に、参考のためにということで目次を載せておきますね。【上巻】第1章 ハワイ育ちの孤独な女の子第2章 遺伝子の発見第3章 生命の秘密、その基本暗号がDNA第4章 生物学者になるための教育第5章 ヒトゲノム計画とは何だったのか第6章 フロンティアとしてのRNA第7章 ねじれと折りたたみ第8章 バークレー─自由でパワフルな環境へ第9章 反復クラスター第10章 フリースピーチ・ムーブメント・カフェ第11章 才能あふれる同志が集う第12章 ヨーグルトメーカー第13章 巨大バイオベンチャー─ジェネンテック第14章 研究室を育てる第15章 カリブーを起業第16章 エマニュエル・シャルパンティエ第17章 クリスパー・キャス9第18章 二〇一二年、世紀の発表第19章 プレゼンテーション対決第20章 ヒューマン・ツール第21章 競争が発明を加速させる第22章 中国出身の科学者、フェン・チャン第23章 常軌を逸した科学者、ジョージ・チャーチ第24章 チャン、クリスパーに取り組む第25章 ダウドナ、参戦第26章 チャンとチャーチのきわどい勝負第27章 ダウドナのラストスパート第28章 会社設立第29章 シャルパンティエとの関係第30章 クリスパー開発、英雄は誰か?第31章 特許をめぐる戦い【下巻】第32章 治療を試みる第33章 バイオハッキング第34章 生物兵器│米国防総省も参戦第35章 人間を設計するという考え第36章 ダウドナ参入第37章 賀フー・ジェンクイ建奎─赤ちゃんを編集する第38章 香港サミット第39章 容認第40章 レッドライン─越えてはならない一線第41章 思考実験第42章 誰が決めるべきか?第43章 ダウドナの倫理の旅第44章 生物学が新たなテクノロジーに第45章 ゲノム編集を学ぶ第46章 ワトソン、ふたたび第47章 ダウドナ、ワトソンを訪問する第48章 召集令状第49章 検査をめぐる混乱第50章 バークレー研究所第51章 マンモスとシャーロック第52章 コロナウイルス検査第53章 RNAワクチン第54章 クリスパー治療第55章 コールド・スプリング・ハーバー・バーチャル第56章 ノーベル賞に輝く 追記 ところで、このブログをご覧いただいた皆様で楽天IDをお持ちの方は、まあ、なくても大丈夫かもですが、ページの一番下の、多分、楽天のイイネボタンを押してみてくださいね。ポイントがたまるんだそうです(笑)