NODA・MAP第14回公演「パイパー」
NODA・MAPだから観にいくというより、松たか子&宮沢りえという旬の女優2人を観にシアターコクーンへ。作/演出:野田秀樹出演:松たか子、宮沢りえ、橋爪功、大倉孝二、北村有起哉、小松和重、田中哲司、佐藤江梨子、コンドルズ、野田秀樹一昔前の日本のSFのような設定。今から約1,000年後の火星移民(火星からさらに移民した金星人も登場)たちの物語。新天地としての火星の開発から滅亡(に至りそうになるが、最後に復活?)までが描かれる。その頃、移民たちの故郷の地球では、とっくに人類は滅亡していることになっているので、これは現在の地球への警告のメッセージかな。文明批評ともとれる。そんな火星に住む、ある意味力強い姉妹を、松たか子、宮沢りえの二大女優が演じる。ストーリーが‘有りがち’と思う割には、珍しく面白く観れた。野田作品は、最近はひねりが少なくて、私にもとっつきやすくなってきた。どうやら、それを寂しく思うファンもいるようだけど。私は、やはりお目当ての2人にすごく満足。どちらも滑舌がよくて声そのものもいいし、体当たりの演技なのにがむしゃらすぎないところがいい。観ていて、‘賢い’人たちなんだな、と思う。役のキャラがすごく立っているけど、そのキャラを作っているかのような2人。特に宮沢りえは、これまでのイメージを裏切って、最初はドスの利いた低音でしゃべっていたので、久本雅美かと思ったくらい(笑)。圧巻なのは、荒れ果てた火星の様子を、この2人が早口で掛け合いのように語るシーン。目に見える映像や装置は何もない。だけど、戦災や震災の後を歩いているかのように、その風景を語る語る・・・。その緊張感がすごくて、速くて膨大な量の掛け合いのセリフを、息を止めて聞いてしまった。オペラなら、この後に「ブラヴォ!」と声を掛けるところだ。橋爪功はいい味を出したお父さん役だったが、そのお父さんを籠絡した佐藤江梨子の役は、誰が演じてもよかったような気がした。そもそもサトエリとも気付かないくらいだし。野田秀樹も、そろそろ自分で演じるのは止めておいてもいいんじゃないの?と私は思う。あのかん高い声や学生芝居っぽい演技がいいという人がいるけど、彼がうまいかどうかは別として、私は彼が出てくると自分が学生時代に小さくて汚い(すみません・・・)芝居小屋で観た先輩たちの芝居を思い出して、あんまりうれしくない。あの頃とは共感するものが違うので、やっぱりもっと極めたものが観たい。。。とは言え、この「パイパー」は観て面白いと感じた舞台だったし、松たか子はやっぱりすごい女優だし、宮沢りえも目が離せないと思うのだった。