「感じる脳」 情動と感情の脳科学よみがえるスピノザ
アントニオ・R.ダマジオ /田中三彦 2005/11 ダイヤモンド社 単行本 413p 原書2003
★★★★☆
著者のダマジオは、ポルトガル生まれの医学博士にして理学博士。世界的にその名を知られた脳科学界の奇才ということである。翻訳はレイ・カーツワイルの「スピリチュアル・マシーン」など多くの話題作を訳してきた田中三彦。
心の問題を、なんでもかんでも「脳科学」に還元してしまうことは、納得できないが、いずれはその世界も覗いてみなくてはならないと思っている。
本書においてもいろいろな能書きはあるが、特徴的なことは、17世紀最大の哲学者・汎神論を説いたスピノザを大きく取り上げているところ。
スピノザについてはネグリ&ハートのマルチチュード探訪のおりに関心を持ち、このブログでも、その世界にそろりそろりと近づいているところ。
スピノザの質素にして有徳な生活。その幾何学的でありながr超絶的な哲学。そのスピノザの世界と、ダマジオの脳科学がつながっていることに素直に感動する。「情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ」というタイトルも素晴らしいが、英語原文のタイトルは「Looking For Spinoza」はもっと素晴らしい。「スピノザを探して・・」が直訳だろう。このタイトルから類推するするだけでも、この本は読む価値がある、と判断した次第。
この本、このブログのカテゴリでは、どこに入れたらいいか迷ったが、敢えて108冊目の「ブッタ達の心理学」にいれておく。
「ブッタ達の心理学」のコンセプトそのものは今後も追及していくことになろうが、このカテゴリが、この一冊で終わることに、私はおおいに満足している。