名古屋ボストン美術館の展覧会に行って参りました。
開国後、夥しい数の浮世絵が海外に流出しましたが、
今回はウィリアム・スタージス・ビゲローという方が
米国・ボストン美術館に寄贈したコレクション。
あまりにも膨大な量で、研究が追いつかず、このほどようやく、
日の目をみることになった作品群が、母国・日本に里帰りした展覧会です。
![ボストン美術館所蔵「美しき日本の絵はがき展」写真付き切手](https://image.rakuten.co.jp/wshop/data/ws-mall-img/timbre/img128/img10521371990.jpeg)
【ボストン美術館所蔵
「美しき日本の絵はがき展」写真付き切手】
版画で当時の風俗が紹介されることの多い浮世絵。
肉筆画は、さらに躍動感に溢れているように思います。
特に印象に残ったもののひとつが、北斎の描いた「
朱鐘馗図幟(しゅしょうきずのぼり)」。
魔除けの神さま・鐘馗(しょうき)が、端午の節句のためののぼりに、
鮮やかな
朱色で描かれています。
![六角巻凧【鎮馗】[産直新潟県]](https://image.rakuten.co.jp/wshop/data/ws-mall-img/fourseasons/img128/img1039714039.jpeg)
【六角巻凧 鎮馗】
☆鐘馗・・・唐代の伝説的人物。科挙に関した不正に抗議して
唐の宮殿の階段に頭を打ち付けて命を落とした。死後、名誉回復されたことを喜び
玄宗皇帝の夢枕で国を悪魔や疫病から守ると宣言。守り神に。
この鐘馗さま、
大きな長靴を履くのが特徴なのだそう。
東の魔除けの神さまがこの姿なら、西にはペローの猫さんも。
購入したビゲローさんも、もしかしたらこの東西長靴対決を面白く思ったのではないかしら?
この図が描かれるときは、
黒か朱のどちらかの色が用いられるそうで、
朱色の方は、
疱瘡(天然痘)を寄せ付けないと思われていたとか。
布の上の浮世絵は紙に描かれるものとはまた違った風合い。
のぼりの細工はもちろん手縫いで、当時の息遣いが伝わってくるようで見入ってしまいました。
幼くして命を失ってしまうことの多かったころ、
ひと針、ひと針に子供たちを守る願いが込められていたのでしょうね。
他にも色鮮やかな物語絵巻や美人画、絵日記風の屏風絵。
また、龍、虎、蛇の提灯絵を、骨から外して保存されていたのを、
懇切丁寧に、もとの形に再現した
大きな提灯も。
こちらも北斎の画で、やはり立体感のある作風が、戸外で家を守る図に合うのでしょう。
![葛飾北斎木版画「神奈川沖波裏」](https://image.rakuten.co.jp/wshop/data/ws-mall-img/takezasa/img128/img1034992951.jpeg)
【葛飾北斎木版画「神奈川沖波裏」】
巷に溢れて、新聞・雑誌のように情報を伝える役目を果たしていた
版画に対して、
超売れっ子の絵師たちに、時の裕福な好事家たちが描かせた贅を尽くした
肉筆画。
機会がありましたらぜひ、ご覧下さいね。
展覧会は8/27まで。また足を運びたいと思います。
「名古屋ボストン美術館」