奥田瑛二監督舞台挨拶付き初日に。
江原啓之さん、北村一樹さん、綾戸智恵さん、島田雅彦さん、そして
主演に監督の次女・安藤サクラさんと、充実した出演陣も愉しみに足を運びました。
【映画の内容に触れますので、お読みになりたくない方はどうぞスキップなさって下さいね】
【風の外側】
名門女子高に通う実業家の娘・岩田真理子(安藤サクラさん)は
フェリーで通学中に男にからまれ、鞄を海に落とされてしまう。
海に飛び込み鞄を拾ってくれた背の高い青年(佐々木崇雄さん)に惹かれ、
帰宅中のボディガードを頼む真理子だが、毎日顔を合わせるようになっても
彼の名前ひとつ知ることができない。
青年は趙聖文(チョ・ソンムン)という在日朝鮮人三世で、
夢みることを諦め、坂を転がり落ちるような毎日を送っていたが
オペラ歌手を志す真理子のひたむきさに彼もまた惹かれてゆく。
そんな二人の前に、それぞれの出自による大きな壁が立ちふさがり…
予告でもご覧になれるように、冒頭は息をのむようなシーン、
足元からストーンと恋におちる効果満点で、このあとも
「青春映画」と銘打たれるに相応しい展開が続きます。
一方、社会の病巣を描くことを常としている奥田監督ならではの、
時に目を覆いたくなるような、それでも目を背けてはならない場面も同時進行し、
物語に深い陰影を加えています。
下関が舞台のこの作品は、同じく下関オールロケで撮られたとのこと。
女子高や在日の方たちの町も、すべて下関に存在していたようで、
脚本通り、イメージ通りの出会いが数多くあったようです。
危機の絡む偶然の出会い、待ち伏せ、港や灯台、丘の上での語らい、
互いの境遇の違いという壁を乗り越えて…といった
青春恋愛物語の常道を踏んだ場面は、描き方によっては
面映いような陳腐さに陥る危険性もあるのですけれども
役者の方たちの輝きを引き出す演出と、下関の潮流にも似た激しさと静けさの混在する
彼らの身体的、精神的表現を活かし切る巧みなカメラワークで
最後まで完全にひきつけられてしまいました。
(舞台設定や取り上げられたモチーフからみて、三島由紀夫原作の
「潮騒」と比較してみるのも面白いかもしれません。)
清濁ともに深く味わえる上質の映画、ぜひご覧くださいね。
続きます。
「風の外側 下関スカラ座HP」
「長い散歩 観賞」