2年ぶりに劇場でジェラルドファントムとの
再会を愉しんできました。
TOHOシネマズ名古屋ベイシティさんの
ゆったりとしたシートにおさまって久しぶりに
キャンドルのオープニングを迎えるところから
五感すべてが引き寄せられます。
時に乾き、時に湿々とした肌の柔らかみ、
美の殿堂に篭りに篭った空気の重み、
燃やし尽くせぬままの烈情を抱えて去らねばならない
仮面の人の哀しみが、新たに胸に迫りました。
舞台や映画などに臨むときは、どの登場人物の視点で鑑賞するかで、
作品の印象や感情移入の度合いが違ってくるように思うのですが、
2005年の初鑑賞時からの、クリスティーヌよりもマダム・ジリー視点で
ファントムを追っている感覚を今回も覚えました。
マダム・ジリーはまだ少年のファントムが見世物小屋から抜け出すのを助け、
オペラ座での、いわば裏の生活を支えてきたわけで、彼が何をしてきたかを
全て知った上で受け入れている。
クリスティーヌに彼が感情を傾けているときは、どうぞ良き旅を、
上手くいっているときは彼のために喜び、たとえ彼が拒絶され
尾羽打ち枯らして帰ったとしても席を整え
鏡の向こうに続くダンジョンの先で待っている…
…などとマダム・ジリー視点でイメージして
映画が終わったあとも果てしなく愉しんでいるわけなのですが、
今回はほんの少し、クリスティーヌ視点でも拝見してみました。
彼女にしてみれば、オペラ座でスターになるのが一つの目標で
それを後押ししてくれる大きな存在が音楽の天使=ファントムでした。
ファントムの指導によって人前に立てるまでの実力を付けてしまった後、
次に必要なのは現実的なバックアップ。ラウルと結婚すれば名も実も、
愛も仕事も、生活の安定も劇場での後援も、双方が手に入る。
幼いときからの恋の成就というベールによって、
全ての事情が美しく包まれるとしたら、やはり彼女が選ぶのはラウルの方でしょう。
また、そのくらいの意志がなければ、オペラ座の中央に立ち続けることはできない。
舞台に立っていたとしても、おそらくは、早い段階から
指導者としての道を選んだと思われるマダム・ジリーとの違いは、明らか。
ただし、この物語が終わった後も、つまりはラウルとの結婚が成立した後も
いつのまにか全てを手に入れる行動を選択しているクリスティーヌのこと、
これまでのように夢と称してファントムと遭い続けることになるのかも、
なにしろ音楽の力の前では、いつも彼女の魂は彼を選んできたのですから。
ジェラルドファントムに惹かれ続ける方々と同じように。
***
つたない戯言、ご覧いただきありがとうございました。
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