与之助の花(著者:山本周五郎|出版社:新潮社)
昭和十年代から二十年までの短編集。
いずれも、エネルギーと若さが感じられるが、小説としてのうまさという点においては後の作品には及ばない。
それでも、いずれも山本周五郎らしい作品。
わずか五ページの「友のためではない」など、短い中に周五郎らしさがぎっしり詰まっている。
表題作、「万太郎船」「噴き上げる花」と、発明にのめり込む主人公の話が三話。こういうのも書きたかったわけだ。ただし、発明が中心なのではなく、発明以外のことは些事として心の外におこうとする、主人公の真摯な生き方を書きたかったのである。