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カテゴリ:江戸時代を知る
昨日触れた「人情噺小判一両」の元の話。
近頃のことだという。 どういう者の身の果てなのか、両国橋で物乞いをする浪人が、四五歳の子を連れて往来で恵みを願っていたが、ある日、往来を通る者の情けもなくて、銭一枚も貰うことができずにいると、その子が空腹に也、しきりに泣いてやまない。親も不憫の思って辻に出ていた餅売りに、 「この者は空腹で嘆いているが、いまだに銭一枚ももらえずにいる。あとでもらったら払うから、一つくれますまいか」 と言うと、餅売りはそれを聞いて、 「わたしも今朝から売れずにいる。それはできない」 とつれなく行った所、ひどくその子が泣き叫ぶと、そばにいた雪駄直しの非人が、持ち合わせた銭を少し渡し、 「大変な御難儀ですね。立て替えます」 と行ったので、 「かたじけない」 とあつく礼を言ってその餅を買ってその子に与え、往来で頭を下げて銭を請い受け、その非人へ返し、その子を橋の上から川中へ投げ入れ、自分も続いて入水して果てたということだ。 なんだかあまりにも救いのない悲惨な話。 「人情噺小判一両」はもう一つの話を元にしているので、明日はそれを紹介しよう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2022.07.26 00:00:12
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