私家版　さいたまの石仏

[酒井 正 石仏画の世界] カテゴリの記事

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  石仏画集 希少塔編 緑区上野田 日光御成道路傍

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら46P目 緑区 御成街道上野田交差点北路傍の石塔 文化2(1805)角柱型の石塔の三面の上部を舟形光背の形に彫りくぼめて、それぞれに石仏坐像を浮き彫り。その下の銘文を見ると、三つの面それぞれに全く違った内容の銘文になっていて面白い。県道105号線、日光御成道の上野田交差点から岩槻方面に進む。100mほど先、道路右手に小堂があって、中に二基の石塔が並んでいた。左がスケッチの石塔 文化2(1805)正面上部に薬師如来坐像。像はかなり風化が進み顔もはっきりしないが、左手に薬壺を持つ形に見える。両脇に天下泰平・日月清明。中央には「爲諸病悉除村中安全」村に病がはやらないようにと祈ったもの。いつの時代でもヒトは祈るしかないのかもしれない。両脇に造立年月日。下の台の正面に「念佛講中」と刻まれていた。右側面の上部には阿弥陀如来坐像。こちらも像は風化のために漠然としているが、どうやら阿弥陀定印を組んでいるようだ。その下に「百万遍供養」念仏供養塔ということになる。施主は個人名が刻まれていた。左側面上部には聖観音菩薩坐像。その下に先祖とあり、その下は戒名だろう。両脇の紀年銘は命日。右下に守屋三代目分、続いて俗名。左下に七代目 施主とあり、右側面と同じ個人名が刻まれていた。酒井さんの推察どおり、四代前のご先祖の供養をしたということなのだろう。右 地蔵菩薩立像 宝暦6(1756)静かにたたずむ丸彫りのお地蔵様。顔の一部、錫杖の先、宝珠などに欠損が見られる。首筋に補修の跡があり、たぶん廃仏希釈の折に被害にあったのだろう。痛ましいことだ。蓮台の下、石塔部の正面に「奉造立地蔵尊」と刻まれていた。右側面に造立年月日。左側面には武州足立郡南部領 新染谷村講中と刻まれている。希少塔編も残すところ2ページ。ラス前の47P目 浦和区岸町 稲荷社境内の庚申山石塔。白幡の医王寺の東を北へ向かう一方通行の道を上り切って突き当りを右折すると、左手に稲荷社があった。社の左脇にスケッチの石塔が立っている。自然石の正面上部に「庚申山」その下に「佐田彦大神」「大宮比大神」と二神を祀った石塔。佐田彦＝猿田彦で、調べてみると稲荷三神の一柱であるという。大宮比のほうも伏見稲荷の祭神であるらしい。石塔の裏面に文字らしいものが見えるが、たぶん紀年銘だろう。残念ながら読み取ることはできなかった。48P目 希少塔編の掉尾を飾るのは緑区東浦和 清泰寺の甲子供養塔 元治元年(1864)自然石の正面に「甲子供養塔」こちらの甲子塔については2019年2月27日の記事の中で触れているが、その時は造立年不明と書いてしまった。自然石の石塔の場合、裏面に銘が刻まれるのはよくあることで、なぜ見落としてしまったのだろう。今朝は早起きして清泰寺まで行ってきた。スケッチの甲子塔は境内西の一角に300庚申の親庚申塔と並んで立っている。裏面にはっきりと紀年銘が刻まれていた。見落としが許されるようなレベルではなく、恥ずかしい限りである。以上で酒井さんの石仏画集の紹介を終わらせていただきます。記事にして162回、約1年かかりました。酒井さんの残された素晴らしい作品を少しでも多くの人に見ていただきたいと、このシリーズを始めたのですが、私自身、酒井さんのお仕事の跡をたどるように多くの石仏を見直すことができて、本当に勉強になりました。酒井さんとの出会いには感謝しかありません。あらためて、ご冥福をお祈りいたします。さて、4月からは新しいシリーズ「新座市の石仏」に入ります。よろしくお願いします。

  2020.03.31

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  石仏画集 希少塔編 総覧 38P~45P

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら38P目、39P目と寄居町の石仏が続く。いまだ取材の機会がなく、今回も酒井さんのスケッチを鑑賞していただきたい。左下の地図を見ると、旧秩父道から羅漢山まで多くの石仏が見られるようだ。いつか訪れてみたいと思う。三宝荒神塔というのは初めて見る。頭上に馬頭はないがその様子は馬頭観音とよく似ている。ここに取り上げられた二基の三宝荒神像はほとんど同一と言ってもよいだろう。四基の像塔は同時に造立されたものだろうか。40P目 富士見市諏訪 山室会館前の大黒天像 天保7(1836)以前紹介した山室地蔵堂の近くの石祠の中にあるらしいのだが、うかつにも気がつかなかった。また後日確認したい。41目は寄居町の毘沙門天塔 享和元年(1801)こちらも未取材。42P目 桜区下大久保 大六天塔 明治32(1899)埼大通り下大久保交差点の北東角にあるらしいが、こちらも確認できていない。43P目 南区内谷氷川神社の拝殿右脇の「女神石」造立年は不明。こちらには他に「あんざんまもり石」「大祓一万度塔」「奉納地刮石塔」と三つの珍しい石塔があり、あわせて四基の石塔が並んでいる。44P目は山梨県の武川 神代桜で有名な実相寺境内にあるという珍しい石塔。「天地水田大神」とは何だろう？45P目 桜区新開 真光寺の疱瘡神 文化3(1806)真光寺はこのブログでは2014年6月12日と2019年10月29日に紹介しているが、こちらの石塔は祠の中にあるためにまともな写真は撮れなかった。酒井さんのスケッチはいつもと変わらず丁寧な仕事で細部まで美しく描かれている。

  2020.03.29

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  石仏画集 希少塔編 桜区上大久保・緑区東浦和 二つの弁財天塔

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら36P目 桜区上大久保路傍の弁財天塔 宝永5(1708)角柱型の石塔の上に八臂の弁財天坐像が乗っている。石塔部の銘から、こちらは巳待供養塔として造立されたものとわかる。新大宮バイパスの上峰交差点から埼大通り埼大前交差点を結ぶ県道215号線。大泉院通りとの信号交差点の100ｍほど手前、道路左側にブロックに囲まれて石塔が立っている。県道は交通量も多く、現場は一見ごみ置き場のような雰囲気で、ブロックの中の石塔に気がつかずに何度か通り過ぎてしまった。こちらがスケッチの石塔。角柱型の石塔の上に八臂の弁財天坐像という構成は、酒井さんのコメントにもあるように上峰の円福寺釈迦堂脇の石塔とよく似ている。(2019年12月13日の記事参照)円福寺の弁財天像と比べるとこちらは保存状態が悪かったのか、顔や宝剣など一部が欠けていた。頭上に蛇身をいただき座る弁財天。八臂の持物や全体の様子は本当によく似ていて、造立年も同じであり、この二つの弁財天像は同じ石工の作品ではないだろうか。石塔部に刻まれた銘は酒井さんの解説の通り。「奉供養巳待一結衆」とあり、巳待供養塔ということになる。37P目は東浦和5丁目 西谷自治会館の弁財天塔 文化6(1809)こちらは文字塔である。東浦和駅前通りをまっすぐ北へ向かう。坂を下り切ったあたり、駅前から400ｍほどの交差点を右折、すぐその先を左折してしばらく進むと道路左側に西谷自治会館があった。会館の北と西は墓地になっている。門をはいってすぐ、右手に二基の石塔が並んでいた。左がスケッチの石塔である。弁財天塔 文化6(1809)自然石の正面に「辨才天」裏面に造立年月日、願主名が刻まれていた。自治会館から西の墓地に入るすぐ手前に庚申塔 安永5(1776)が立っている。駒型の石塔の正面 日月雲 青面金剛立像 合掌型六臂。合掌した手の先が欠けていた。足元には正面向きでM字に腕を張る邪鬼。その下は三猿と思われるが、今ひとつはっきりしない。塔の右側面「奉建立庚申」続いて造立年月日。左側面には見沼領大間木村 西ヶ谷戸とあり、さらに願主澤野武大母と刻まれていた。

  2020.03.28

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  石仏画集 希少塔編 総覧 26P～35P

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら26P目は浦和区大東2丁目 不動堂の不動明王坐像。こちらは2019年7月27日の記事で紹介している。27P目 大宮区土手町 四恩寺裏 堂の中に祀られる閻魔大王坐像 宝暦14(1764)スケッチは細部まで実に丁寧に描写されている。中山道の一本東の通り、大宮税務署の南に日蓮宗の寺院 四恩寺がある。入口からお寺の脇を通り裏に回る。右手には墓地が広がっていた。お寺の裏には塚があって、石階段の先の閻魔堂の中にスケッチの閻魔大王像が祀られている。お堂の中は意外に狭く、前のさい銭箱にも邪魔されて、閻魔像の全体を写すことはできなかった。詳細については酒井さんのスケッチを鑑賞していただきたい。28P目は中央区上峰、大宮バイパス上峰交差点角に立つ閻魔大王の文字塔 文化14(1817)2020年1月23日の記事の庚申塔の前に立っている。29P目 東京都豊島区雑司ヶ谷 鬼子母神堂境内に立つ石像の鬼子母神像 明治13(1880)鬼子母神堂の本尊の鬼子母神像は木造で本堂内に安置されている。10年ほど前にこちらを訪れた時は池袋駅のほうから歩いていったので、境内の裏の入口から入り、東のほうを回って本堂の正面に出た。その時の記憶ではこちらのスケッチの石像は、本堂の右手の木立の中にひっそりと立っていたように思う。今回は再取材はできなかった。30P目、31P目は調布深大寺の石仏。今回は未取材のためスケッチのみ見ていただく。「角大師」というのは初めて聞いた。31P目は「お賓頭盧様」の坐像。過去には川口市西立野の西福寺などで見たことがあるが、確かに数はそう多くない。いずれ折を見て上の「角大師」と一緒に取材してみようと思う。32P目 中央区大戸3丁目 大戸不動尊の猿田彦大神塔 天保14(1843)酒井さんのスケッチでは門前となっているが、私が見た時には門の中、すぐ左側に立っていた。大戸不動尊は境内に多くの庚申塔をはじめ貴重な石仏が並んでいて、これをすべてここで紹介するのは難しい。境内の庚申塔などについては2014年1月15日の記事で結構詳しく紹介しているので興味のある方はそちらの記事を見てください。33P目は長野県 木曽の御嶽山のふもとの双体道祖神。さすがにここまでは取材には行けない。道祖神は全国広い範囲に分布しているが、なかでも関東甲信越地方に多く見られるという。34P目は 岐阜県の馬籠宿の道祖神。木曽11宿の一番南の宿場町で島崎藤村の「夜明け前」の舞台となった馬籠宿。山深い木曽路を旅する人たちもこの道祖神を目にしたのだろうか。35P目 中央区上峰 円福寺釈迦堂脇に立つ弁財天供養塔 宝永5(1708)角柱型の石塔の上に八臂の弁財天坐像が乗る。こちらは2019年12月13日の記事の中で紹介している。

  2020.03.26

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  石仏画集 希少塔編 大宮区三橋3丁目 共同墓地

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら25P目は三橋3丁目 共同墓地前の不動明王坐像 慶応2(1866)江戸時代後期によく見られる「成田山不動明王」である。新大宮イパス円阿弥北交差点からバイパス東側の歩道を北に進み、すぐ先を斜め右に入ってゆくと、道路左側に整備された墓地がある。その入口近くに小堂が並んでいて、手前の小堂の中にスケッチの不動明王塔が祀られていた。不動明王坐像 慶応2(1866)真っ赤に彩色された炎の光背に細長い宝剣と羂索を手にした不動明王を浮き彫り。不動明王が座る磐座は中央に滝、両側に二童子を配し、成田山不動明王塔の典型的な形。その下、石塔部正面に大きく「成田山」。さらに下の台の正面に「邑内安全」と刻まれている。石塔部左側面に造立年月日。続いて武州足立郡牛飼村。台の左側面には「講中」と刻まれていた。塔の右側面、かなりのくずし字だが「天下泰平 國土安穏」だろう。台の右側面には「世話人」と刻まれている。不動明王の小堂の奥に六地蔵の小堂が立っていた。六地蔵菩薩立像 享和2(1802)丸彫りの石地蔵の宿命というべきだろうか、頭部は後から補われたものらしく、それもほとんどがのっぺらぼうという状態である。下の台は三つに分かれていて、それぞれに二体のお地蔵さまが乗っていた。右の台、足立郡牛飼邑 善男女 講中。続いて造立年月日が刻まれている。真ん中の台は一部に剥落が見られ、文字の読み取りは難しい。右のほうの銘はよくわからないが、左のほうは「百万遍念佛善男女□供養」だろうか。左の台には多くの戒名が刻まれている。「子どもの守り神」お地蔵様らしくほとんどの戒名が童子だった。六地蔵の奥に名号塔 嘉永元年(1848)江戸時代後期に活躍した念仏行者徳本上人の独特の書体で「南無阿弥陀佛」と刻まれた「徳本名号塔」である。江戸近郊を中心に多くの念仏講を組織し、その活動範囲は関東から北陸、近畿にまで及んだという。下の台の正面には「念佛講中」と刻まれていた。小堂の左端 回国供養塔 天明5(1785)角柱型の石塔の正面 阿弥陀三尊種子の下「奉納大乗妙典六十六部日本廻國」上部両脇に「天下和順 日月清明」続いて造立年月日。右側面に戒名が刻まれていて、こちらは個人のものらしい。

  2020.03.24

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  石仏画集 希少塔編 中央区八王寺 浅間神社北 レジデンス脇

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら24P目 中央区八王寺 浅間神社北 交差点南東レジデンスの不動明王坐像。炎の光背に両手の先を欠いた不動明王坐像を浮き彫り。新大宮バイパスの赤山通り交差点を西にはいり、ホームセンターを通り過ぎた先の信号交差点の南東角、レジデンスの入口に「この奥不動明王像 ご自由にご参拝ください」と書かれた立札が立っていた。このレジデンスのすぐ南に浅間神社(八王寺神社)がある。奥に入ってゆくと小堂が立っていて中央にスケッチの不動明王坐像が祀られていた。右手前にこの不動明王の由来が書かれている。それによると、ここは東覚院というお寺の跡地で、東覚院の火災の折、ご本尊に火の手が迫ったが、にわかに火勢が変わり、ご本尊は難を逃れ、その代わりというようにこの不動明王の両手は失われたという。本来の台を失っているためか紀年銘は見当たらず造立年などは不明。牙をはやした不動明王は目をいからせ憤怒相を表す。光背の火焔、不動明王の衣装など、彫りは細部まで丁寧で生き生きとしている。右肩の上に宝剣の先が、左足のももの上に羂索の一部が残っていた。左後ろに立つ角柱型石塔。正面上部に「奉修」とあり、享保5年(1720)の紀年銘と「護摩二千座成就攸」さらに寛政8年(1796)の紀年銘と「護摩二千座供養塔」いずれも下のほうに小さく行者の名前が刻まれている。東覚寺は真言宗の寺院だったのだろう。塔の左側面上部に村々施主、その下に近隣22ヶ村の名前が刻まれていた。西区の多くの村をはじめ、桜区の西堀、田嶋、上大久保などある中に、下内間木、南畑という荒川を越えた現在の富士見市、朝霞市の地名も確認できる。不動明王像の後ろに二基の板碑が並んでいた。どちらもひどく破損している。右の小さなほうは銘も確認できない。左の板碑は前面にいくつか梵字が刻まれているが、はっきりわかるのは「バーンク」と「アーンク」くらいであとははっきりしなかった。

  2020.03.21

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  石仏画集 希少塔編 大宮区大成町 普門院

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら22P目 山梨県、八ヶ岳山麓にあるという野趣あふれる不動明王坐像。巨岩の上というのも魅力だが、取材は難しい。23P目は大宮区大成町普門院の不動明王立像。普門院については庚申塔編(2019.04.03の記事)観音菩薩編(2019.12.05の記事)と二度にわたって紹介したのだが、希少塔編にこちらの不動明王像が取り上げられていることに気がつかなかった。大宮区大成町 曹洞宗大成山普門院。門を入ると正面に山門が立ち、その奥に本堂が見える。山門に続くよく整備された参道の両脇に二基の角柱型の石塔が立っていた。右は戒壇石 寛延2(1749)左は正面に「大成山道」と刻まれた道標 嘉永7(1854)である。山門の左側、塀の前に六地蔵菩薩が並んでいる。六地蔵菩薩像は真新しいものだが、朝早くからお線香があげられ、お花、水が供えられていて、丁寧にお世話されていた。脇に立てられた六地蔵についてのお寺さんの解説もとてもわかりやすく親切だ。山門を入ってすぐ右側、「夢違い観世音菩薩」が祀られていた。その右脇奥に石仏が並んでいる。塀に沿って一列に並ぶ五基の石仏。両脇に不動明王像。中の三基は庚申塔だった。右端がスケッチの不動明王立像。ダイナミックな炎が彫られた光背。右手に剣の柄の部分、左手に羂索を持つ。彫りは細かく力強い。銘は見当たらず造立年など詳細は不明。光背上部が大きく前にせり出していているのは寛文期あたりの石仏に多くみられる特徴。前回の西区飯田 光善寺墓地の不動明王の時にも書いたが、独尊の不動明王立像は江戸時代初期のものが多い。剣の一部は欠けているものの、他に大きな欠損も風化の様子もないのはやはり江戸時代初期石仏の固い石質のためと思われるがどうだろうか。2番目 庚申塔 延宝4(1676)板碑型、中央付近に並んで座る素朴な三猿が可愛らしい。三猿の下の部分には12名の名前が刻まれていた。3番目 庚申塔 宝暦6(1756)笠付き角柱型の石塔の正面 日月雲 青面金剛立像 剣・ショケラ持ち六臂。像は風化のために解け始めている。青面金剛は二匹の邪鬼の頭を踏んでいた。その下は不明瞭だが三猿だろう。側面に地名が刻まれ道標になっている。4番目 庚申塔 元禄8(1695)美しい形の舟形光背に日月雲 青面金剛立像 合掌型六臂。二鶏、邪鬼、三猿がそろうが、邪鬼がやけに小さい。三猿の下、こちらはひらがなと漢字の名前が混在、男女23名の名前が刻まれていた。左端 不動明王坐像 明和5(1767)下の石塔正面に「日本廻國六拾六□□」とあり、回国供養塔ということになる。

  2020.03.18

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  石仏画集 希少塔編 西区飯田 光善寺墓地

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら19P目は桜区宿、観音寺墓地の宝篋印塔 寛永18(1641)外反した隅飾、著しく発達した相輪部など江戸時代初期の宝篋印塔の特色をよく表している。こちらは2019年8月4日の記事で紹介している。20P目 緑区高畑、高畑神社の水天宮石祠 嘉永5(1852)高畑神社は埼玉スタジアムの周辺の整備のために移動を余儀なくされていたが、今は元の場所、スタジアムの北に戻っている。21P目は西区飯田 光善寺墓地の不動明王立像 寛文8(1668)江戸時代中期以降に成田山不動信仰が盛んになって、不動明王といえばよく目にするのは二童子を従えた三尊像。その場合不動明王は例外なく坐像だった。酒井さんは不動明王の立像は珍しいとコメントされているが、江戸時代もはじめの頃にかぎっては、独尊で不動明王立像というのも、いままでに結構見かけたように思う。水判土から二ツ宮、治水橋方面へ向かう県道56号線、二ツ宮交差点の400ｍほど手前、左側の交差点の角の所に墓地があった。墓地の南西にある入口からのぞくと、石塔が一列に並んでいるのが見える。左から庚申塔 正徳3(1713)駒型の石塔の正面 日月雲 青面金剛立像 合掌型六臂。白カビが多く風化もあり、銘は読みにくい。足の両脇に比較的大きな二鶏。足元には小さな邪鬼が頭を向かって右に横たわる。その下に三猿。さらにその下の部分、右端に飯田村とあり、11名の名前が刻まれていた。続いて 阿弥陀如来立像 宝永5(1708)舟形光背に来迎印を結ぶ阿弥陀如来像を浮き彫り。紀年銘以外には喜屋 浄住？、あとは飯田村とあるだけで、こちらは墓石なのかもしれない。その隣がスケッチの不動明王立像 寛文8(1668)舟形光背に剣と羂索を持った不動明王を浮き彫り。石質が良いためだろう、風化、損傷なく細部まで生き生きと美しい。光背上部に炎を線刻。両脇に僧の戒名と命日。右の清和は私年号と思われるがこのあたりはよくわからない。下部両脇に飯田村、大久保村と刻まれていた。続いて丸彫りの地蔵菩薩立像 正徳3(1713)敷茄子に女中 西入とあり、いくつか名前が刻まれている。西入は地名だろうか？その隣 六地蔵菩薩文字塔 明治34(1901)六地蔵菩薩の個々の名称については宗派によって違いがあるようで一定しない。ここでは右から地獄道、餓鬼道、畜生、修羅、人間、天上を担当するお地蔵様。名前の上にはそれぞれを表す梵字が刻まれている。奥には二基の住職の墓石が並んでいた。

  2020.03.16

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  石仏画集 希少塔編 桜区西堀 日向不動堂

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら18P目は桜区西堀の日向不動堂、尊勝陀羅尼塔(宝篋印塔)宝暦12(1762)厚みのある笠を持つが相輪部を欠いている。県道57号線の日向交差点からまっすぐ北へ向かう県道165号線は、埼大通りを横切り芸術劇場の東を通り与野の本町通りにつながる古くからある主要な街道だったようだ。日向交差点から北へ250ｍほど、坂道を登り切ったあたりを右折し、すぐその先のT字路を左折すると、住宅街の中に不動堂の入口があった。境内に入ってすぐ左には地蔵菩薩像が祀られた小堂が立ち、さらにその先の参道脇にも多くの石塔が並んでいる。小堂の中に七体の地蔵菩薩立像。小堂の柵の隙間からのぞいてみると、右端のお地蔵様だけ敷茄子の位置が違っていた。横から見ると、七体のお地蔵様は同じように穏やかな表情でたたずんでいる。奥の三体の頭部は新しいもので、どうやら後から補われたもののようだ。足元を見ると右端のお地蔵様だけが台の様子が違っていた。残る六体は同じような台の上に立っていて、こちらは六地蔵なのだろう。右端の台に西堀村 日向 施主、次の台に明和5年の紀年銘、さらに左端の台に「念佛講中」と刻まれている。参道左脇には二基の石碑と、三基の同じような構造の石塔が並んでいた。左端の石碑は、昭和63年の新住居表示制度によって、由緒ある「日向」の地名が無くなるのを惜しんで建立されたものらしい。「城址」となっているが、山城だったのだろう。この辺りはかなり標高の高い地域で、さいたま市の最高地点はこの近く、中島2丁目にあるという。2番目 武州足立郡日向十景碑 天保12(1841)自然石の正面 上部は漢文で読み解けないが、下部は和文で「富士の雪」「荒川帰帆」「柊森夜雨」「鴻沼秋月」「上宮夕照」「浅間山夕煙」「筑波山暮雪」「平野晴嵐」「聖沼落□」「龍海寺晩鐘」を十景として挙げている。当時はなにも遮るものもなく、この高台から荒川を行き来する舟が見られたのだろう。三基の宝篋印塔のうち、左がスケッチの尊勝陀羅尼塔 宝暦12(1762)三基ともそろって相輪部が欠けていた。塔身部正面に「尊勝陀羅尼塔」他の三面に経文。薄い台座の上に二段の台。下の台の正面には陀羅尼講中 三拾五人 願主 理性 西堀村 日向と刻まれている。台の左側面に本宿村から始まって与野町まで、近隣12の町村名、また裏面にも同じように12の村の名前が刻まれている。右側面には酒井さんによると寄進者の名前があるらしいのだが、字が薄くなっていてうまく読み取れなかった。その隣 宝篋印塔 享保12(1727)塔身部四面に戒名が刻まれていて、こちらは墓石のようだ。台の左側面に「三界萬霊」の銘が見える。右 宝篋印塔 享保10(1725)こちらの塔身部には「宝筐印陀羅尼経曰」で始まる願文が、台にはたくさんの戒名が刻まれていた。不動堂の左脇に小堂が立っていて、中には大型の丸彫り地蔵菩薩立像 享保10(1725)が祀られている。顎が張った四角い顔をしていて、像は厚みもあり、威風堂々といった印象を受ける。足元の台の正面に二匹の猿が彫られていた。江戸時代初期によくみられる地蔵菩薩を主尊とする庚申塔ということになるだろう。台の左側面に造立年月日。右側面には西堀村 里講中と刻まれている。

  2020.03.14

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  石仏画集 希少塔編 総覧 12P～17P

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら12P目は東京都中央区八重洲 一石橋たもとの標石 安政4(1857)「迷い子の標石」というものを私はこれまで耳にしたことがないが、酒井さんによると浅草寺境内にもあるという。13P目 緑区大門 大興寺の弘法大師供養塔 天保5(1834)大興寺の山門を入ると、塀に沿って地蔵菩薩塔、庚申塔をはじめ多くの石仏が並んでいる。(2014年5月18日の記事を参照ください）本堂の入口近く、徳本上人六字名号塔の隣にひときわ高くそびえたつこちらの石塔。両側面に経文が梵字でびっしり刻まれていた。14P目 浦和区瀬ケ崎 東泉寺薬師堂墓地の阿弥陀三尊板碑 文明3(1471)こちらは2019年10月17日の記事で紹介済みである。15P目 大門の大興寺 境内にあるという阿弥陀三尊板碑。こちらは本堂左手前の小堂の中に安置されていてしっかり施錠されていた。お寺のほうにお願いすれば拝見できるのかもしれないが、いまだその機会を得ていない。酒井さんのスケッチを見ると、身部いっぱいに阿弥陀三尊像が大きく陰刻されている。16P目 緑区上野田 宝永墓地の阿弥陀三尊板碑 延慶3(1310)図像板碑としては旧浦和市最古のものらしい。17P目は緑区大崎 国昌寺の阿弥陀一尊種子板碑。紀年銘が削り取られていて造立年などは不明だが、その形状、彫りの様子などから鎌倉時代初期のものと考えられるという。(2020年1月12日の記事で紹介しました)

  2020.03.11

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  石仏画集 希少塔編 大宮区三橋 旧満福寺墓地

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら11P目 大宮区三橋 旧満福寺墓地の丸彫りの地蔵菩薩立像 享保12(1727)敷茄子と反花のついた台座に華やかな装飾が施されている。新大宮バイパスの三橋二丁目交差点から道路東側の歩道を北へ50ｍほど進むと斜め右へ細い道が分かれる。この道に入ってすぐ先を右折、次の角右手に墓地があり、その北西の角に小堂が立っていた。小堂の中の左端 スケッチの地蔵菩薩立像 享保12(1727)丸彫り像は欠損もなくきれいだが、よく見ると蓮台から下の部分と石材が異なり、像のほうは後から補修されたものと思われる。蓮台以下の部分に施された装飾が素晴らしい。四角い台座の上に六角形の台、その上は亀が彫られていて、さらに敷茄子、蓮台が乗る。この部分を見ると前回見ていただいた長伝寺の地蔵菩薩塔とよく似ている。場所的にも近く、造立年も5年しか違っていないところから、同じ石工、または同じ工房の作品ではないだろうか。敷茄子には巻き付くように龍が、その下の六角形の台の正面には天女、その右の面には猿が彫られていた。天女の面の左の面には飛び出すように兎を浮き彫り。後ろの三つの面に戒名と紀年銘が刻まれている。後ろの面に刻まれた紀年銘を見ると三月吉日となっていて、こちらは故人の命日ではない。その他に銘は見当たらず本当のところはわからないが、もしかするとこの石塔は墓石としてではなく、なにかの供養塔としてつくられたものかもしれない。続いて丸彫りの六地蔵菩薩立像 文化2(1805)六体はよくそろっていて状態も良い。左のお地蔵様よりサイズは一回り小さいが、石材も像の様子も比較的似ていて、左の地蔵塔の像の部分はこちらの六地蔵造立と一緒に補修されたもののようにも思えるのだがどうだろうか？台は三つに分かれていてそれぞれに施主名などが刻まれている。右の台の右端に造立年月日。続いて「念佛講中」と刻まれていた。

  2020.03.10

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  石仏画集 希少塔編 中央区本町東 長伝寺

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら10P目は与野の本町東 長伝寺の地蔵菩薩立像 享保7(1722)造立年を考え合わせると驚くほど凝った作りのお地蔵様である。上峰の芸術劇場あたりからまっすぐ北へ向かう本町通り(県道165号線)与野七福神巡りでもおなじみの通りで、通り沿いに南から円乗院、一山神社、正円寺、長伝寺、氷川神社と多くの寺社が散在する。赤山通りを越え八幡通りの少し手前を右折し東に進むと長伝寺の門の前に出る。参道の左側に鐘楼と大きな無縁塚があり、その奥一帯が墓地になっていた。本堂の脇あたりに、とりわけ広い区画を占める個人の家の墓地が並んでいる。有力な檀家さんなのだろう。左の墓地の中央 大きな基壇の上に巨大な丸彫りの地蔵菩薩立像 貞享3(1686)端正で堂々たる立ち姿は気品にあふれている。蓮台の下、反花のついた台の正面「三界萬霊六親眷属有無縁等」三界萬霊塔としと建立されたものということだろう。裏面右のほうに武州江戸 小船町と見える。日本橋小舟町か？施主として丸氏はじめ三名の名前。左に造立年月日が刻まれていた。同じ墓地の西の一角に丸彫りの猿の坐像 貞享3（1686）が東向きに立っていた。右足を立て、首をかしげて合掌する猿。愛嬌があってかわいい。背中に造立年月日が刻まれている。墓石を挟んでその奥のほうに、対になる猿が左足を立てて座る。合掌する手の先は破損。頭部は後から補修されたものだろう。こちらも背中に紀年銘が刻まれていた。二匹の猿像はサイズも同じで左右対称になっている。前回の江古田の富士塚の猿像のスケッチの中で、酒井さんはこの長伝寺の猿像について言及されていた。それによると、この一対の猿は墓地中央の巨大地蔵菩薩像と同じ造立年月日で、その脇侍であるという。その隣の墓地も古く立派な石塔が多い。中央よりやや左に丸彫り坐像、右奥にスケッチの地蔵菩薩塔が立っていた。阿弥陀如来坐像 正徳3(1713)重厚な敷茄子、蓮台の上に丸彫りの坐像。彫りも細かく美しい。その下の角柱型の石塔の正面を彫りくぼめた中に三つの戒名。塔の左側面に造立年月日が刻まれていた。墓地の右奥にスケッチの地蔵菩薩塔 享保7(1722)とてもユニークな石塔で、鋭角的な駒形の光背の中に舟形光背を彫りだし、そこに亀の背中の上、蓮台に立つ地蔵菩薩立像を厚く浮き彫り。さらにその下部にも凝った装飾が施されている。光背の右脇に戒名。左脇に造立年月日。よく見るとお地蔵様の頭の後ろの輪光背も非凡だ。蓮台の下に生き生きと亀を彫りだし、その下の台の三面に椿、梅、竹をあしらい、さらにその下にしかめ面をした鬼？細部までこだわった仕事は秀逸。また、これだけの優れた石仏を造れたということは、それだけの経済的な余裕があったということになるだろう。

  2020.03.08

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  石仏画集 希少塔編 総覧 1P～9P

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら今日から最後の一巻、「希少塔編」に入ります。こちらは全部で48Pですが、取材の難しい県外の石仏もあり、これまでにすでに紹介済みのものもあり・・・ということで、今回はスケッチだけをいくつかまとめてみていただくことにします。1P目 江の島の「群猿！庚申塔」角柱型の石塔の四つの面に36匹の猿を浮き彫りしたもの。御幣や扇子などを手に踊る猿たち、棒に登ったり、綱渡りをしたり、スケッチを見ているだけで楽しくなる。いつか実物を見ることができるだろうか？2P目 江古田の浅間神社にある富士塚の猿像。富士塚には山の神の使いとされる猿像や、山岳信仰に関連して天狗の姿をよく見かける。3P目 桜区田島 御嶽社の雷鳥像。昭和47年に建立されたごく新しいもの。雷鳥像というが、確かに鶴のように見える。4P目は浦和の調神社の兎像。つきじんじゃの「つき」から「月に兎」ということか？5P目 別所沼公園 沼に突き出た先にある弁天社の狛犬。狛犬も時代時代で特徴があって、見比べると結構面白い。6P目 目白不動の倶利伽羅庚申塔。初めて見た時は衝撃的だった。2019年1月29日の記事で紹介済み。7P目 与野の大戸、新六間道路沿いにある金精社に祀られる男根石。多産、豊穣を祈ったものだろう。8P目は浦和区岸町 起志乃天神社の天満宮石祠。こちらは2014年2月14日の記事で紹介した。9P目 与野本町西 正円寺の輪廻車付き地蔵菩薩塔。こちらは2019年8月28日の記事でもう一基の丸彫り地蔵菩薩立像と一緒に取り上げられている。

  2020.03.05

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  石仏画集 納経供養・石橋供養・道標編 西区三条町 自治会館前

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら納経供養・石橋供養・道標編の最後、47P目は西区三条町自治会館前の敷石供養塔 天保3(1832)江戸時代末期の石塔なので風化が進み銘も読みにくいのだが、酒井さんは細かいところまでしっかり確認されている。県道57号線を島根交差点から治水橋方面へ進み、大宮南高校を過ぎてすぐ左の細い道に入ると、その先に三条町自治会館がある。防災倉庫の前に二基の石塔が並んでいた。左 小堂の中、庚申塔 宝暦7(1757)唐破風笠付き角柱型の石塔の正面 日月雲 青面金剛立像 合掌型六臂。立派な笠に比べて石塔部が短く、ちょっとアンバランスな感じを受ける。像の表面は摩耗、細かい彫りは消えかかっていた。頭上に蛇。釣り目の青面金剛。合掌した手の先もかろうじて残っているという感じだ。下部には頭を右にはいつくばる邪鬼と正面向きの三猿が彫られていた。。塔の側面の銘を小堂の側板の隙間からのぞく。右側面中央に「奉造立庚申像一躯」両脇に造立年月日。右側面には「信心道俗男女」と刻まれているが、こちらは初めて目にする銘、たぶん他に例がないだろう。続いて三条町村とあり、その下に願主三名の名前が刻まれていた。右がスケッチの敷石供養塔 天保3(1832)角柱型の石塔の正面、中央に「敷石供養塔」石塔の上部は風化が目立ち、「敷」の字はなんとか読める状態。両脇に造立年月日が刻まれている。塔の右側面、一部にひびが入り、上部は白カビが厚く覆っていて銘は読みにくくなっている。酒井さんによると上部に三条町村中 七 八人となっているのだが、現場では確認が難しかった。左側面は角のあたりが剥落、ただこちらは白カビが少ないので銘は読み取りやすくなっている。以上で納経供養・石橋供養。道標編を終わり、次回からは最後の一冊「希少塔」編に入ります。もう少しお付き合いください。

  2020.03.03

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  石仏画集 納経供養・石橋供養・道標編 中央区本町東 赤山橋たもと

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら46P目 赤山通り、鴻沼川に架かる赤山橋のたもとに立つ石橋供養塔 享保11(1726)古い石塔だが正面中央に薬研彫りされた「石橋供養塔」の文字は陰影がはっきりしていて迫力がある。国道17号線の赤山通り交差点から西に進む。中央通りを越えた先、鴻沼川に架かる赤山橋のたもとにスケッチの石橋供養塔が立っていた。石橋供養塔 享保11(1726)中央に薬研彫りされた「石橋供養塔」の文字が力強い。その下の部分にかすかに文字が見える。下部中央 導師 長傳寺 速譽上人。右に願主とあり、続いて人名が刻まれているようだが、文字が薄くこちらは読み取れなかった。塔の両側面に細かい文字で多くの町、村の名前が刻まれている。酒井さんのコメントによると近在105ケ村ということだが、石塔の表面に細かい凹凸があり、村の名前のほとんどがうまく読み取れない。塔の右側面、1段に5つの町村名、全部で10段ほどなので、片面に約50の村名が刻まれていることになる。右側面の最上部、右から下落合村、上落合村、浦和町、大宮町、与野町中と読める。塔の左側面も同様だが、少しは読めるところもあり、上から順に写真を並べてみることにした。(よかったら皆さんも読み取りチャレンジしてください。)1段目2番目は八王子村、2段目左端は三条村？このあたりは該当する村名がほとんど思い浮かばない。中尾村？山久保村？岡村？西堀村？田嶋村？内谷村？町屋村？一番下の部分、飯田村？白幡村？いずれもあてずっぽう。いずれにしても多くの村々の協力があったことだけは間違いない。裏面上部に造立年月日。ここだけは文字も大きくはっきりしている。その下に圓乗院 長傳寺 普門院 東明院。ここまではなんとか読めるが、その下はやはり判別はできなかった。最下部にも多くの村の名前らしい銘が刻まれているがこちらも残念ながらはっきりしない。先日紹介した同じ赤山通りに立つ与野東中学校正門脇の石橋供養塔も多くの村々の協力を示す銘が見られた。当時の人々にとって交通の安全をもたらす「石橋」の重要性は大きく、またその造立は広範囲の人々の助力を必要とする大事業であったということだろう。

  2020.03.01

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  石仏画集 納経供養・石橋供養・道標編 新座市 野火止用水伊豆殿橋たもと

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら44P目 新座市平林寺の南を走る陣屋通り、伊豆殿橋脇の石橋供養塔 安永8(1779)駒型の石塔の上部に八臂の馬頭観音坐像を浮き彫り。平林寺の西、野火止用水沿いの道を南下して陣屋通りにぶつかる交差点、北西の角にスケッチの石塔が立っていた。上部に馬頭観音坐像。下部中央に「石橋供養塔」両脇に造立年月日が刻まれている。風化が進み像容はあいまい。合掌した手の形がふっくらとしていて馬口印らしく、頭上のふくらみはいま一つはっきりしないが馬頭だろう。八臂の持物は酒井さんの解説どおり、下の手が与願印に数珠持ちというのは珍しいと思う。伊豆殿橋の東のたもとに丸彫りの地蔵菩薩像が立っている。地蔵菩薩立像 享保3(1718)バランスの良い美しい立ち姿。鼻の先が欠けているが、錫杖、宝珠ともに健在。左手前に小さな角柱型の石塔がぽつんと立っていた。蓮台の下、石塔の正面に「施主十五人」両脇に造立年月日。塔の左側面 武州新座郡 野火止 西屋敷 門前と刻まれているが、いずれも平林寺周辺の村名だろう。左手前の石塔の正面に「石橋建立當村中」と刻まれていた。その銘の書体など石塔部の銘とよく似た感じがする。となるとやはりこの地蔵菩薩立像も石橋供養塔として造立されたものなのだろうか。

  2020.02.27

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  石仏画集 納経供養・石橋供養・道標編 中央区上落合 与野東中学校正門脇

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら42P目は静岡市、東海道丸子宿の道標。取材は難しいのでスケッチだけ見てください。43P目 中央区上落合 与野東中学校正門脇の石橋供養塔 宝暦6(1756)側面に刻まれた銘はとても読みにくいのdが、酒井さんはしっかり確認されているようだ。国道17号線の赤山通り交差点から東へ150ｍほど進むと、見沼代用水西縁の向こうに与野東中学校がある。その正門左脇にスケッチの石塔が立っていた。石橋供養塔 宝暦6(1756)下の台は新しいもので、その左側面にこの石橋供養塔の由来が刻まれている。角柱型の石塔の正面上部に浮き彫りされた坐像。蓮台に座り合掌しているが頭部がひどく破損していてはっきりしない。石橋供養塔に地蔵菩薩坐像というのはよく見かける組み合わせで、酒井さんもこれを地蔵菩薩坐像としているが、その衣装の様子はどうも観音菩薩のように思われる。削れた頭部の形、合掌する姿から考えると馬頭観音のような気がするのだがどうだろう？石塔の右手前にある教育委員会の解説では「石仏」となっているが・・・坐像の下 中央に「石橋供養塔」両脇に造立年月日。右下に上落合村 願主明譽。その下にも文字が見えるがはっきりしない。さらに左下、同宿水金□・・このあたりも願主名だろうか。側両側面は狭くて写真も撮りにくい。右側面上部、右端に村々施入志、その隣に先祖菩提とあり、10名ほどの戒名が刻まれている。下部には細かい字で多くの村名が刻まれているが、私にはその一部しか読めなかった。解説によると21の村だという。左側面にもたくさんの村名が五段に刻まれている。現在の中央区の村々はもちろん、西区、桜区、大宮区、浦和区、さらに東のほうは緑区の大間木村なども確認できた。こちらは全部で66町村らしい。この橋の建設にあたって、驚くほど広い地域の人たちが助力したことがうかがえる。

  2020.02.25

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  石仏画集 納経供養・石橋供養・道標編 緑区宮本 氷川女體神社

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら41P目 緑区宮本 氷川女體神社境内に立つ道標 弘化2(1845)もともとは大間木の赤山街道に立っていたものだという。見沼代用水に架かる朱塗りの氷川女體橋の先、長い階段の上に鳥居が立ち、その奥に氷川女體神社の拝殿が見えた。石段を登り切り鳥居をくぐると静かな境内が広がる。右手を見ると参道の右脇、大きな基壇の上に石灯籠が立っていた。境内は古木が多く薄暗い。台の側面に岩槻の名石工、田中武兵衛の名前が刻まれていた。拝殿の左手前、大きな木の下にスケッチの道標が立っている。道標 弘化2(1845)角柱型の石塔の正面に「女體宮道」右脇に武蔵國一宮とある。男神スサノオノミコトを祭神とする大宮氷川神社、女神クシナダヒメを祭神とする氷川女體神社、さらにその真ん中に位置する中山神社(中氷川神社)三社を総称して「武蔵國一宮 氷川神社」としたものだろう。拝殿にも「武蔵國一宮」の扁額がかかっている。塔の左側面に造立年月日。右側面には「宮本まで是よ里五町」と刻まれていた。社殿の周りには多くの境内社、末社が立っている。拝殿の前から右奥に進むと、境内社の近くに二基の石塔が並んでいた。手前 順礼供養塔 文政13(1830)二基の石塔の並んでいる様子から見ると写真左の面が正面のようだが、銘を調べてみるとその左の面は無銘で、他の三面に銘が刻まれている。本当のところはわからないが今回は写真右の面を正面として見てみよう。角柱型の石塔の正面中央「大山石尊大権現五拾五度参」両脇に天下泰平・郷中安全。江戸時代に盛んだったという「大山参り」それにしても55回というのはそれだけの経済的、時間的余裕がなければなしえないことだろう。左側面中央「越立山 富士山 湯殿山 嶽々 坂東 秩父 西國 拝禮供養塔」順礼姿で日本全国を回ったのだろうか？右側面に造立年月日。続いて願主とあり、個人名が刻まれている。左 榛名山 三峯山 供養塔 文久2(1862)角柱型の石塔の正面「榛名山 三峯山大権現」右側面に造立年月日。左側面に一天平定 日月清輝。台の正面には「宮本同氣」と彫られていた。

  2020.02.22

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  石仏画集 納経供養・石橋供養・道標編 西区指扇 荒沢不動尊前三差路

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら39P目は市川市の江戸川近くの道標。角柱型の石塔の正面上部に大黒天像、その下に凝ったデザインの三猿を浮き彫りという珍しい石塔で、まだ取材はできていないが、いつか実物を見たいものだ。40P目 西区指扇 荒沢不動尊前三差路の百観音供養塔 寛政4(1792)二つの寺社へ向かう道の分岐点にあり、道標になっている。水判土観音の裏あたりから佐知川の台になった地域を北西にまっすぐ続く道を進んでゆくと、佐知川から指扇に入るあたりで道は左右に分かれ、その三差路のところにスケッチの石塔が立っていた。百観音供養塔。角柱型の石塔の正面上部を舟形に彫りくぼめた中に観音菩薩坐像を浮き彫り。像は風化が進みあまりはっきりしないが、左手に未敷蓮華を持ち右手を添える形のようだ。下部中央に「百ヶ所供養塔」両脇に造立年月日。塔の右側面 右 あきば道。中釘にある「関東総社」秋葉神社への道を示す。下部に数名の名前が刻まれている。左側面には左 くわんをんミち。この「観音」は宝来にある福寿庵百観音のことらしい。こちらも下部に数名の名前が刻まれていた。道を挟んだ向かいに荒沢不動尊、そのお堂の左、木々が生い茂った中に庚申塔が祀られている。庚申塔 正徳元年(1711)唐破風笠付き角柱型の石塔の正面 日月雲 青面金剛立像 合掌型六臂。木立の中は薄暗く、ピントは合わせにくい。目を吊り上げた青面金剛。元禄期を中心によく見られるのだが、青面金剛の足元は邪鬼ではなく磐座のようだ。二鶏は比較的大きく立派。三猿もしっかりと彫られていた。塔の左側面 武州足立郡指扇領内五味貝戸村。下のほうに施主とあり、十二名の名前が刻まれている。右側面に造立年月日。下部にはやはり十二名の名前が刻まれていた。

  2020.02.19

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  石仏画集 納経供養・石橋供養・道標編 大宮区三橋 旧川越道公民館跡

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら38P目 三橋二丁目、旧川越道にある公民館跡の敷石供養塔。風化が進み、多くのくぼみ穴も穿たれている状態で、紀年銘は確認できない。この種のくぼみ穴はこれまでもいろいろな石塔・石仏で見かけたが、これほど多数のくぼみ穴は確かに珍しい。新大宮バイパス三橋二丁目交差点から片道二車線の広い道を東へ進むと大宮駅西口に出る。交差点のすぐ先を斜め左に入る道は桜木町を通り氷川神社に至る旧道。入ってすぐ、左側の公民館跡のブロック塀の前にスケッチの石塔が立っていた。敷石供養塔。角柱型の石塔の正面、深く穿たれたくぼみ穴のためにほとんど文字が見えないが、「敷石□新供□塔」と銘の一部はかろうじて残っている。塔の右側面 西 川こへ、南 引又 大山 道。左側面には南 よの 江戸、東 大ミや いわ津き 道と刻まれていた。

  2020.02.17

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  石仏画集 納経供養・石橋供養・道標編 緑区東浦和 吉場橋北

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら37P目は緑区東浦和 吉場橋北の華見堂供養塔 享保4(1719)今までもいくつか見てきたが、華見堂供養塔というと主尊は地蔵菩薩立像が多かったように思う。こちらは駒型の石塔で地蔵菩薩坐像が彫られている。東浦和駅の南、見沼代用水西縁にかかる吉場橋のすぐ北、マンションの陰にスケッチの石塔が西向きに立っていた。駒型の石塔の正面を彫りくぼめた中、舟形光背を負った合掌型の地蔵菩薩坐像を浮き彫り。像の下、中央に「華見堂供養成就之所」両脇に造立年月日。下部、左右の蓮の花弁に施主三十七人。塔の右側面 是よ里右大ミや道。左側面はブロック塀との隙間が狭く写真を撮るのは難しいが、是よ里左うらわ道と刻まれている。

  2020.02.15

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  石仏画集 納経供養・石橋供養・道標編 緑区北原 庚申堂脇

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら35P目は北浦和駅東口に立つという道標 文化元年(1804)地図に示された場所は、見沼区や岩槻区方面へ行くときになんども通ったことのある道で、かなり丁寧に探したのだがこれがどうしてもみつからない。あさひ銀行は今は埼玉りそな銀行になっているが、酒井さんがこの石塔を見た2002年から現在の間にどこかへ移動したのか、それとも私の探し方が間違っているのか？いつかみつかる日は来るのだろうか。36P目 緑区北原 庚申塚の石灯籠供養塔 寛政7(1795)そこに記された道標の里程から、酒井さんはこの石塔が本来立っていただろう場所を推定している。スケッチ右下の想像図が美しい。浦和方面から大門へ向かう国道463号線。大崎クリーンセンターを越え見沼代用水東縁のあたりから急な坂を上り切った先、道路左側に小堂が立っていた。小堂の右脇、大きな切り株の近くにスケッチの石灯籠供養塔 寛政7(1795)角柱型の石塔の正面「奉納石燈籠」その下に北原村。右脇に右 大門宿 十一丁、左脇に 左 大間木 十八丁。塔の左側面に造立年月日。右側面には「乃みち講中十一人」とあるが、その意味はちょっと分からない。小堂の中 庚申塔 元禄7(1694)駒型の石塔の正面 日月雲 青面金剛立像 合掌型六臂。風化のために表面は丸くなっている。像の右脇「奉造立庚申悉地成就祈所」左脇に造立年月日。風化が進んでいるものの、近づいてみると、その風貌はなかなか迫力がある。足の両脇に二鶏。足元には正面向きの邪鬼。その下にはやはり正面向きの三猿が彫られていた。

  2020.02.12

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  石仏画集 納経供養・石橋供養・道標編 見沼区片柳 西山通り墓地

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら33P目は西区島根 東光院の馬頭観音文字塔 文政12(1829)こちらは2019年12月30日の記事で紹介した。34P目 見沼区片柳 西山通り沿いの墓地の馬頭観音塔 寛政9(1797)台の正面に道標銘が刻まれる。北宿通りから見沼たんぼを抜けてさらに北へ向かう西山通り。芝川を越えて一キロ近く坂道を登りきったあたり、西山バス停の脇の路地の先に墓地があった。奥のほうに石塔が並んでいる。路地に向かって立つ石仏。右端がスケッチの馬頭観音塔だった。馬頭観音立像 寛政9(1797)慈悲相、二臂。頭上の馬頭は大きく明確。光背右脇に「奉造立馬頭觀世音菩薩爲現當二世安樂」左脇に造立年月日。その下に足立郡見沼領と刻まれている。下の台の正面に大きく「山村講中」両脇、右中(山道)左日光(道または街道か）と道標銘が刻まれていた。その隣 丸彫りの地蔵菩薩立像 享保7(1722)首に補修跡があり、後から補われた頭部も損傷が著しい。蓮台の下、台の正面に「奉造立地蔵菩薩」右脇に造立年月日。左脇に講中男女四拾人と刻まれていた。一番奥に舟形光背型の六地蔵菩薩立像 天明6(1786)右から4番目の延命地蔵の光背に造立年月日が刻まれている。

  2020.02.10

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  石仏画集 納経供養・石橋供養・道標編 大宮区三橋天神社

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら32P目 三橋天神社の庚申塔 寛政8(1796)角柱型の文字塔。庚申塔の文字塔というと、江戸時代前期には板碑型がほとんどで、中期以降はこのような角柱型が多くみられるようになる。大宮区三橋4丁目、大宮西高校の東にある三橋天神公園。敷地の中に三橋四丁目自治会館と天神社が立っている。天神社の隣に稲荷神社、さらに大小二つの小堂。手前の小堂の中にスケッチの庚申塔が立っていた。庚申塔 寛政8(1796)角柱型の石塔の正面、大きな文字で「庚申塔」下の真四角な台の正面には銘は見当たらない。塔の右側面、中央に「奉納 坂東 西國 秩父 百ヶ所供養塔」右脇に造立年月日。左脇には願主だろうか、二名の名前が刻まれていた。左側面にセハ人一名の名前。続いて助力 八人、さらに同 一銀仁朱とあり個人の名前が刻まれている。酒井さんのコメントによると裏面に武州足立郡側海斗村と刻まれているらしい。現在は裏面は見ることができず、残念ながらこちらは確認できなかった。下の台の両側面に道標銘が刻まれているが、堂の壁との間の空間が極端に狭く写真はうまく撮れない。右側面には北 ひら方 加わごへ ミち、左側面には南 よの 江戸道と刻まれていた。

  2020.02.08

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  石仏画集 納経供養・石橋供養・道標編 中央区 常盤中学校西路傍

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら31P目 中央区新中里 常盤中学校西路傍の庚申塔 享保5(1720)上部に合掌型六臂の青面金剛坐像ということで、1月23日の記事で紹介した上峰の庚申塔と雰囲気がよく似ている。造立年が近く、立っている場所も比較的近く、二つの庚申塔は兄弟塔かとも思ったのだが、細部をよく見るとその構造など、いろいろなところが異なっていた。中山道の中里(北)交差点から東に入った先、常盤中学校の西の住宅街の中、スケッチの庚申塔が北向きに立っていた。両側をコンクリートの壁で囲まれた狭い空間で、正面近くまで行かないと石塔は目に入ってこない。庚申塔 享保5(1720)上峰の庚申塔は台の上に角柱型の石塔、その上に青面金剛坐像を浮き彫りした駒型の石塔が乗り、どこにも三猿はいなかった。それに対してこちらは下部に三猿が彫られていて、上部の青面金剛像から下部の三猿までが一石から彫りだされたものだった。上部、駒型の部分に浮き彫りされた青面金剛坐像は上峰の庚申塔とよく似ている。頭上に蛇を乗せ、額の上にいくつか小さく三角に髪を結いあげ、どんぐり眼で三眼。口をへの字に合掌、結跏趺坐。青面金剛だけ見ると同じ石工の仕事のようにも思えるのだがどうだろうか？石塔の正面中央「奉造立庚申供養塔」両脇に天下和順、日月清明。その下に三猿。下の台の正面には中里邑 施主 講中九人と刻まれている。塔の右側面に造立年月日。左脇に是より北 よの町みち。左側面は隙間が狭く確認できないのだが、是より南うらわみちと刻まれているという。

  2020.02.06

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  石仏画集 納経供養・石橋供養・道標編 南区大谷口三差路

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら29P目は箱根湯本の庚申塔 宝暦12(1762)笠付き角柱型の石塔の正面「庚申塔」その下に三猿を彫る。右側面が道標。右とふのさわは何とか読めるが、左のほうは酒井さんのコメントでゆもととわかるものの、自分の力ではとても読み取れない。もし箱根に行くことがあったら実物を見てみたいものだが・・・30P目は大谷口路傍の文字庚申塔 明和7(1742)両側面に二方向二地名が刻まれる。第二産業道路の大谷口陸橋交差点から北西に花月方面へ向かうさいたま川口線、交差点から300mほど進むと道路左側、三差路の角にスケッチの庚申塔が立っていた。庚申塔 明和7(1742)駒型の石塔の正面を彫りくぼめて、上に日月雲、中には梵字「ウーン」の下に「庚申供養塔」と刻まれている。塔の左側面 木崎領大谷口村講中廿五人、続いて従是左 千住道。現在の第二産業道路と同じ道筋で、川口の道合、鳩ケ谷を通り日光街道に向かう道だったのだろう。塔の右側面に造立年月日。その脇に従是右 戸田道。こちらは円正寺、川口の芝を通り、蕨、戸田方面に向かう古道。ここはその二つの道の分岐点だったようで、この庚申塔は道標として大きな役割を果たしていたものと思われる。

  2020.02.04

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  石仏画集 納経供養・石橋供養・道標編 大宮区桜木町西交差点西路傍

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら28P目 大宮桜木町路傍の庚申塔 享保16(1731)大きな宝珠を乗せた唐破風笠付き角柱型の石塔の正面に日月雲 青面金剛立像 合掌型六臂。中山道の桜木町交差点から県道2号線を西に向かう。次の桜木町西交差点は五差路になっていて、ここから斜め左に入る道は、古くは大宮と川越を結ぶメインストリートだったという。交差点から200ｍほど先、道路右手の四つ角に小堂が立っていた。小堂の中 庚申塔 享保16(1731)オーソドックスな青面金剛庚申塔。堂内にはいつも折り鶴などの奉納品が絶えることなく、長い年月、地元の人たちに大事に守られてきたものらしい。日月雲 青面金剛立像 合掌型六臂。像の表面は風化のためにやや丸みを帯びている。頭上に蛇を乗せた三眼の青面金剛。足元には邪鬼と三猿が彫られていて、二鶏は見当たらなかった。小堂の中、塔の側面は隙間が狭く写真が撮りにくい。右側面に三方向、三地名。是より東 大宮町道、是より南 与野町道、是より西 川越ミち。大宮氷川神社の市の日には与野、川越方面から多くの人たちがこの道を歩いて行ったという。左側面中央に「奉造立庚申供養塔」両脇に造立年月日。右下に施主 小村田村、左下に講中二拾人と刻まれていた。

  2020.02.01

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  石仏画集 納経供養・石橋供養・道標編 桜区五関 県道57号線枝道四つ角

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら26P目は与野本町通り三差路の庚申堂の中の庚申塔 元禄3(1690)角柱型の石塔の上に丸彫りの青面金剛坐像が乗る。ここまでにいくつか似たような構成の庚申塔を見てきたが(2019年2月10日の記事参照)その中でも最も古く、貴重な庚申塔といえるだろう。ただし、この庚申堂はいつ行っても扉は鍵がかかっていて中に入ることができなかった。今までその機会がなかったが、いつか管理されている方にお願いして堂内の様子を取材できたらと考えている。27P目 桜区五関 県道57号線西路傍の文字庚申塔 文化8(1811)二方向、三地名が刻まれた道しるべになっている。埼大通り下大久保交差点から宿、島根方面に向けて北上する県道57号線。浦和北高校を過ぎてすぐ、斜め左に枝道を進むと、次の交差点左手にスケッチの庚申塔が東向きに立っていた。庚申塔 文化8(1811)角柱型の石塔の正面、大きな字で「庚申塔」下部両脇に五関村 講中と刻まれている。塔の右側面 上部に造立年月日。その下に世話人とあり、四名の名前。左側面には、東 よのミち、南 はねくら 大山道と刻まれていた。

  2020.01.30

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  石仏画集 納経供養・石橋供養・道標編 見沼区堀崎町 稲荷社

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら25P目 見沼区堀崎町の稲荷神社、庚申塔 文政8(1825)角柱型の文字塔で台のほうに三猿が彫られている。見沼区役所の北にある堀崎町団地。その一番南の区画に隣接して稲荷社があった。(見沼区堀崎町1203)東向きに立つ朱塗りの鳥居の先、敷地の北側に石塔が並んでいるのが見える。フェンスの前に南向きの並ぶ五基の石塔。右端がスケッチの庚申塔だった。庚申塔 文政8(1825)塔全体に点々と白カビがこびりついている。角柱型の石塔の正面 日月雲の下、大きく「庚申塔」台の正面に三猿。両端の猿が外を向く形は珍しい。塔の左側面には武州足立郡堀崎村 講中。右側面中央に造立年月日。右脇に北  あげを はらいち 道、左脇に東 いわつき 江戸道と刻まれていた。

  2020.01.28

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  石仏画集 納経供養・石橋供養・道標編 緑区下山口新田 民家園

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら24P目 緑区下山口新田 浦和くらしの博物館「民家園」の文字庚申塔 享和3(1803)三方向三地名の刻まれた道しるべになっている。もともとは南区の沼影にあったものをこちらに移したらしい。酒井さんは当時の沼影村周辺の交通を調べて、この庚申塔が立っていたであろう場所を推定している。国道463号線、大崎クリーンセンターの西、芝川のすぐ東の国道南側に浦和くらしの博物館「民家園」があった。園内には古民家がいくつも立っていて、見物のためにぐるっと散策路が設けられている。入口から散策路を右回りに進むと右手に二基の石塔が並んでいた。右 庚申塔 安政3(1856)角柱型の石塔の正面 線刻された日月雲の下に「庚申塔」台は二段になっていて、上の台の正面に可愛らしい三猿が彫られている。塔の左側面にはシンプルに造立年月日が刻まれていた。右側面は左側面とは対照的ににぎやか。中央「奉再位馬場稲荷大明神」庚申塔で稲荷大明神との習合は初めて見る。その右脇に大願成就。左脇の銘がなかなか難しい。まず正一位とありその下に宝暦2年(1752)の紀年銘。続いて馬場位とあり、こちらは嘉永6年(1853)、さらに雨屋再建とあり、こちらは天保4年(1833)と刻まれている。これらの銘はどう解釈したらよいのだろうか？下部には三室村馬場組、社主 個人名。大宮宿在 八王子産、幼名などが刻まれていた。左がスケッチの庚申塔 享和3(1803)荒彫り角柱型の石塔の正面を駒形に彫りくぼめた中に「庚申塔」その下に是よりゑど ミち。塔の右側面 右ハ よのミち。その下に沼影村 願主とあり、細渕氏の名前が刻まれている。左側面 うしろハ 引きまた みち。その下には造立年月日が刻まれていた。

  2020.01.26

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  石仏画集 納経供養・石橋供養・道標編 中央区上峰 新大宮バイパス交差点角

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら23P目 新大宮バイパス上峰交差点西南角の庚申塔 宝永8(1711)大きな角柱型の石塔の上、正面に青面金剛坐像を浮き彫りした駒形の石塔が乗っている。新大宮バイパス上峰交差点の南西角、歩道脇に石仏が集められていた。右奥に真新しい聖観音立像、左のほうには古い石仏が並ぶ。手前から、庚申塔 造立年不明。日月雲 青面金剛立像 剣・ショケラ持ち六臂。続いて地蔵菩薩立像 寛政12(1800)光背に東 大山と刻まれている。その後ろは閻魔大王塔 文化14(1817)一番奥がスケッチの庚申塔になる。庚申塔 宝永8(1711)台まで含めると高さ約160ｃｍ。人通りの多い交差点でかなり目を引く。最上部、駒形の石塔の正面 日月雲 青面金剛坐像 合掌型六臂。目を剥き口はへの字、頭上に蛇がとぐろを巻いていた。中央部、角柱型の石塔の正面中央、梵字「ウーン」の下に「奉造立庚申尊像 願主敬白」右脇に武州足立郡上峯村。左脇に造立年月日。塔の左脇にこれより 江戸みち、右側面に これより 加う志うみちと刻まれていて道標となっているが「加う志う」＝「甲州道」というのはこのあたりではあまり見かけない。下部、台の正面には三猿だけが彫られていて、邪鬼、二鶏の姿は見当たらなかった。

  2020.01.23

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  石仏画集 納経供養・石橋供養・道標編 大宮区大成町 八幡自治会館脇

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら22P目 大宮区大成町の八幡自治会館脇の庚申塔 安永9(1780)角柱型の文字塔。大きな台の三面に与野、川越、岩槻、大宮、原市、上尾など地名が刻まれ、里程標、道標になっている。大成町1丁目、中山道から西に100ｍほど入ったあたりに八幡神社がある。その敷地の北西の位置に自治会館が建っていた。入口脇、交差点のところの小堂の中にスケッチの庚申塔が祀られている。庚申塔 安永9(1780)角柱型の石塔の正面大きな字で「庚申塔」下部両脇に二名の名前。講の世話人だろうか。下の台の正面、従是西 與野三十丁 川越三里 道。塔の右側面に造立年月日。その下に講中とあり、さらにその下に10名ほどの名前。左側面には武州足立郡下大成邑。こちらもその下に講中とあり、やはり10名ほどの名前が刻まれていた。台の右側面、左から右へ、是方 東 大ミや六丁 岩つき二リ みち。台の左側面 右から左へ 是より北 原市二里 上尾二里 道と刻まれている。かなりしっかりした里程標で、本格的な道標と言えるだろう。

  2020.01.21

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  石仏画集 納経供養・石橋供養・道標編 桜区田島 氷川神社参道

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら21P目は桜区田島 氷川神社入口の幟立石柱 安政6(1859)角柱型の石塔、二基がセットになっていて合わせて四基、参道両脇に立つ。志木街道の田島火の見下交差点のすぐ東、信号機の近くに石鳥居が立っていた。田島氷川神社の一の鳥居で、ここからまっすぐ北へ向かって長い参道が続き、朱塗りの二の鳥居を越えた先、やはり朱塗りの橋を越えた正面に氷川神社がある。一の鳥居と二の鳥居の間、参道両脇にスケッチの幟立石柱が立っていた。四基とも入口から見て正面の面には銘は見当たらない。右の二基の外側、右側面(東向きの面)に「伊勢代二」と刻まれていた。江戸時代後期、お伊勢参りが盛んになって各地に伊勢参詣のための「伊勢講」が組織されたという。ときどき「伊勢太太講」とか「太々講」などという銘を見かけるが、調べてみると伊勢神宮に太太神楽を奉納することから伊勢講＝太太講ともいわれるらしい。まれに「代代講」というのも見たような気がするが太太講の当て字だろうか？「伊勢代二」は初見。右外側の石塔の北向きの面に「天下泰平 國土安穏」右内側の石塔の西向きの面に「同行九拾人」と刻まれていた。その下の銘は薄いが、武州足立郡田嶋村 講元らしい。左内側の石塔の東向きの面に造立年月日が刻まれていた。時はまさに幕末、黒船来航、大地震、「安政の大獄」など、幕藩体制の崩壊期、田嶋村の人々はどのような日々をおくっていたのだろうか。左外側の北向きの面「五穀豊穣 萬民快樂」西向きの面にも「伊勢代二」と刻まれているが、住宅の塀との隙間が狭く写真を撮ることはできなかった。

  2020.01.19

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  石仏画集 納経供養・石橋供養・道標編 緑区北原 無量寺

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら17P目は桜区宿 観音寺の阿弥陀三尊像、18P目は中央区下落合 落合霊園の善光寺参拝供養塔、19P目は西区植田谷本町 林光寺の足立八十八ヶ所標石、いずれも紹介済みですが、今回もスケッチを再掲しておきます。⇒2019年8月4日の記事⇒2019年6月10日の記事⇒2019年6月8日の記事20P目 緑区北原 無量寺の六阿弥陀標石 寛政10(1798)六阿弥陀というと江戸六阿弥陀が有名だが、それにならって各地に六阿弥陀が設けられたらしい。越谷市増林の林泉寺では「新六阿弥陀」標石 天明8(1788)を見たが、このころ六阿弥陀参詣が盛んにおこなわれたようだ。国道463号線、大崎のクリーンセンターの東、見沼代用水を越えたすぐ先の道路北側に無量寺の入口がある。入口あたりは新しく鐘楼門などがつくられきれいに整備されていた。その左脇の路地の奥右側に境内の入口があり、その向こうに本堂の大きな屋根が見える。入口から入ると正面に六地蔵の小堂が立っていて、六地蔵の左脇にスケッチの石塔が立っていた。六阿弥陀標石 寛政10(1798)角柱型の石塔の正面 梵字「キリーク」の下に「足立 六阿彌陀 三番」塔の一部には剥落、ひびが見られる。左側面は右上が崩落、御詠歌の一部が欠けていた。右側面にも御詠歌が刻まれる。裏面には造立年月日が刻まれていた。

  2020.01.15

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  石仏画集 納経供養・石橋供養・道標編 緑区大崎 国昌寺

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら16P目 緑区大崎 国昌寺 出羽三山供養塔 文化3(1806)舟形光背に聖観音菩薩立像を浮き彫り。この時期の順礼供養塔で像塔は珍しく貴重なものではないだろうか。緑区宮本、三室方面から東へ向かい日光御成道に突き当たる広いバス通り、芝川を越え左へ大きくカーブするあたりから細い道を東に進み、見沼代用水東縁を越えた先、道路左側に国昌寺の入口があった。南向きに立つ菊の御紋付きの山門は、江戸時代中期のもので市指定文化財、欄間の龍の彫り物は左甚五郎作と伝えられる。山門はいつも閉まっていて、境内にはその脇から入ることになる。山門のちょうど真裏あたりに多くの石仏が並んでいた。六地蔵の小堂の脇、東向きにスケッチの出羽三山供養塔が立っている。舟形光背、日月雲の下に聖観音菩薩立像を浮き彫り。台は二段になっていて、上の台の正面に般若供養塔とあるがこちらは初めて見る。下の台の正面には講中と刻まれていた。与願印の聖観音菩薩。光背上部両脇に「月山 湯殿山 羽黒山 三社大権現」下部両脇に造立年月日。出羽三山順礼成就を記念して建立された供養塔だろう。その奥の小堂の中、中央に大きな丸彫り地蔵菩薩立像、両脇に小型の丸彫り六地蔵菩薩立像。中央のお地蔵様を含めて七つの台の正面に「大崎村中」と刻まれ、中央のお地蔵様の台の側面に享保4(1719)の紀年銘を確認できる。本堂寄りに大きな板碑が立っていた。上部、月輪のなかに大きく「キリーク」を刻む。下部は紀年銘など一部が剥落して詳細は不明だが、鎌倉時代初期のものと伝えられているという。

  2020.01.12

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  石仏画集 納経供養・石橋供養・道標編 南区松本 真乗寺

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら13P目は 見沼区片柳 根木輪公会堂の百観音供養塔、14P目は同じく見沼の膝子一里塚の百観音及び四国霊場供養塔。それぞれ丸彫りの阿弥陀如来坐像、弘法大師坐像が乗る角柱型の石塔でどちらも紹介済みです。⇒2019年11月16日の記事⇒2019年8月20日の記事15P目 南区松本 真乗寺の霊場供養塔 明和5(1768)こちらの石塔の上には丸彫りの聖観音菩薩立像が乗っている。新大宮バイパスの田島団地前交差点から西に向かうと、200ｍほど先、次の信号交差点の南西の角のところに真乗寺があった。交差点を左折してすぐ右に入るとお寺の入口に出る。本堂右手前、墓地入り口に六地蔵の新しい小堂が立っていた。境内は最近整備されたもののようで、5年前とは大きく様子が変わっていて驚いた。両脇を六地蔵に囲まれて中央にスケッチの石塔が立っている。前回来た時には六地蔵の小堂は本堂手前左側にあって、その時には六地蔵も石塔の上に立っていたのだが、今回は蓮台の下の石塔部分は無くなっていた。角柱型の石塔の正面、右のほうに奉誦普門品供養講中とあり、続けて願主 二名の名前。左のほうには「奉納 湯殿山 西國秩父坂東 富士山 諸願成就処」と刻まれている。塔の左側面 上部に造立年月日。その下に十名の名前、右側面にも十名の名前が刻まれていて、正面の願主二名と合わせて講中二十二人ということになるだろうか。真乗寺の東の道を越えた向かい側に真新しい墓地があった。以前来た時はここは「埋め墓」で雑然とした雰囲気があったが、現在は整備されて様子が一変している。その入口左手に庚申塔が立っていた。庚申塔 明和元年(1764)唐破風笠付き角柱型石塔の正面 日月雲 青面金剛立像 剣・ショケラ持ち六臂。冠型の髪の真ん中に蛇。足元には二鶏・邪鬼・三猿がそろう。塔の右側面 中央に「奉造立青面金剛供養塔」両脇に造立年月日。左側面には武州足立郡笹目領松本村 講中。さらに左上に十方助力とあり、その下に願主一名の名前が刻まれていた。新しく整備されたこの「東墓地」の一番奥に多くの石仏が並んでいた。その多くは無縁仏のようだ。「無縁塔」と刻まれた石塔のすぐ左に石橋供養塔 宝暦6(1756)角柱型の石塔の正面を彫りくぼめた中、上部に地蔵菩薩坐像を浮き彫り。その下に「奉懸石橋於當村七箇所成就供養」両脇に造立年月日が刻まれている。塔の右側面中央に「十方施主二世安樂」脇に世話人 當村とあり個人名。左側面には武州足立郡笹目領松本村 願主とあり、二名の名前が刻まれていた。さらに如意輪観音、地蔵菩薩、聖観音菩薩など、像塔の墓石が続く。その一番奥、三基の墓石の前に六基の石塔が並んでいた。それぞれ戒名が刻まれるが、一番左の石塔の正面には十方施主とあり、明和5年の紀年銘が確認できる。上面には丸く穴の跡があり、いろいろ考え合わせると、どうやらこの六基の石塔は境内に並んでいた六地蔵のものと思われる。それにしてもなぜ切り離されてしまったのだろう？

  2020.01.10

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  石仏画集 納経供養・石橋供養・道標編 見沼区片柳 万年寺門前

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら10P目 富士見市の山室地蔵堂、11P目 南区大谷口の旧安楽寺墓地で、どちらもすでに紹介済みです。今回もスケッチだけ再掲しておきます。富士見市山室地蔵堂 大乗妙典回国供養塔 明和6(1769)⇒2019年9月9日の記事南区大谷口 旧安楽寺墓地 大乗妙典六十六部供養塔 享保17(1732)⇒2019年11月3日の記事12P目は見沼区片柳 万年寺門前の百ヶ所観音供養塔 天保13(1842)万年寺の石仏は「庚申塔編」で二度取り上げている。万年寺の朱塗りの門の右手前にスケッチの石塔が立っていた。、百ヶ所観音供養塔 天保13(1842)角柱型の石塔の正面、上部を舟形光背の形に彫りくぼめて、その中に観音菩薩坐像を浮き彫り。その下に「奉拝禮 秩父 西國 坂東 供養塔」下の台の正面には7名の名前が刻まれ、左端の名前の上に世話人とあった。さて、尊像の観音菩薩だが、酒井さんはスケッチの中のコメントでこれを馬頭観音としている。一面六臂の「変化観音」であることは間違いないと思われるが、頭上の馬頭はいま一つはっきりしない。あるいは准胝観音か？塔の右側面に造立年月日。左側面に武州足立郡見沼領 片柳村と刻まれている。

  2020.01.07

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  石仏画集 納経供養・石橋供養・道標編 西区島根 大泉寺墓地

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら皆様、よいお年をお迎えのことと思います。新年早々いろいろと仕事がたてこんで、こちらの更新が予定より一日遅れてしまいました。頑張って春には新たなシリーズ「新座の石仏」を始めたいと思っています。今年もよろしくお願いします。9P目 前回紹介した東光院のすぐ東、大泉寺墓地の大乗妙典供養塔 正徳3(1713)高さ2ｍを超える緑泥片岩の石塔。板碑などに使われよく見かける石材だが、この時期のものは珍しいのではないだろうか。県道57号線の島根交差点から西へ進み、次の交差点を左に入った先、道路右手に墓地があった。入口近くに二つの小堂が見える。手前の小堂の中には二基の庚申塔が並んでいた。右 庚申塔 宝暦3(1753)笠付き角柱型の石塔の正面を彫りくぼめ、外に日月雲、中に青面金剛立像 合掌型六臂。三眼、福耳、ふくよかな顔立ち。独特の髪型の中には蛇だろうか？合掌した手の先は破損している。足元に二鶏、邪鬼、三猿。こちらもやや摩耗している感じだ。比較的小型の邪鬼は頭を傾けて頭と腰のあたりを踏まれている。三猿は言わ猿と聞か猿が左向きに座り、左の見猿だけが右向きという変則的な構図だった。下の台はコンクリートの下に多くの部分が埋まっていて、見えるのは正面に「講」の文字だけ、たぶん「講中」だろう。塔の右側面に造立年月日。左側面に武州足立郡植田谷領嶌根邑 願主とあり、三名の名前が刻まれている。左 庚申塔 享保3(1718)駒型の石塔の正面 日月雲 合掌型六臂。塔の下の蓮台のあたりは上の石塔とも下の台座とも様子が異なる。隣の庚申塔とよく似通っていて、いずれもあとから補われたものではないだろうか。発達した瑞雲の下、三角の髪型の真ん中に蛇が見える。像の右脇「□造立青面金剛像庚申供養所」左脇に造立年月日。その下に結衆敬白。さらにその下に嶋根村と刻まれていた。足元に二鶏、邪鬼、三猿。やはり摩耗していて漠然としている。こちらの三猿は中央が前を向くノーマルな構図だった。その奥の小堂の中には二基の丸彫りの地蔵菩薩像塔が並んでいる。右 地蔵菩薩立像 宝暦4(1754)角柱型の台の上、蓮台に立つ丸彫りの地蔵菩薩立像。大きな欠損もなく悠然と立っている。台の正面中央に「當村中念佛講男女」両脇に造立年月日。右側面には植田谷領嶋根村と刻まれていた。左 地蔵菩薩立像 享保3(1718)右のお地蔵さまとほぼ同じ規模の丸彫り立像。こちらのほうが30年ほど古いものになるが、こちらも目立った欠損がなく美しい状態を保っている。台の正面を彫りくぼめた中に「講中敬白」両脇に造立年月日。右側面に嶋根村と刻まれていた。ここに並ぶ講中によって造立された二基のお地蔵様。江戸時代から現在まで、代々の村の人たちにずっと大事にされてきたものなのだろう。入口左側のブロック塀の前、庚申塔と向き合うように舟形光背型の六地蔵菩薩立像 寛政元年(1789)が並んでいた。左端の地蔵塔の光背右脇に造立年月日が刻まれている。ブロック塀に沿って墓地の中ほどまで進むと、右側に二基の石塔が並んでいた。右の背の高いほうがスケッチの石塔。蓮田馬込の「寅子石」の小型版といった趣がある。左 日本回国供養塔 天保7(1836)角柱型の石塔の正面 梵字「カーン」の下に「弘法大師」その右脇に薄く足立八十八ヶ所十番、左脇に十一番ﾆ十丁と見える。塔の左側面には造立年月日が刻まれ、続いて嶋根村 願主とあり一名の名前。右側面 阿弥陀三尊種子の下に「日本回國供養塔」両脇に天下泰平・日月清明と刻まれていた。その隣 一枚の写真では収まり切れない高さの大乗妙典供養塔 正徳3(1713)最上部に梵字「ア」その下に「大乗妙典六十六部成就所謹白」上部両脇に造立年月日。下部、右に武州足立郡嶌根村、左に回國行者とあり一名の名前が刻まれていた。

  2020.01.05

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  石仏画集 納経供養・石橋供養・道標編 西区島根 東光院

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら8P目 西区島根 東光院の大乗妙典六十六部回国供養塔 明和2(1765)屋根型笠付き宝篋印塔の形式をとるが、どこにも「宝筐印陀羅尼経」の銘はない。33P目にこちらの馬頭観音文字塔 文政12(1829)が紹介されている。下の台の四面にたくさんの名前が刻まれているが、酒井さんはその全てを細かく調べ上げていた。加茂川団地の南を通るバス通りが県道57号線とぶつかる交差点から南に入って100ｍほど、よく整備された東光院の入口がある。(西区島根689)参道の先に山門、その奥に本堂が見える。参道右脇、寺標の向こうに角柱型の石塔が立っていた。スケッチの馬頭観音塔 文政12(1829)正面中央に力強く「馬頭觀世音」両脇、日天・月天の下に天下泰平・國土安全。下の台の正面中央に「村々助力」とありその両脇に塚本村、大久保村、白鍬村、美女木村、佐知川村など多くの村の人たちの名前が刻まれている。塔の右側面 北 あきばへ一リ半、西 かわごへ二リ半。下の台の右側面には中之林村、三条町村、飯田村などとあり、70人あまりの名前が刻まれていた。中に本村 林光寺などと寺院の名前も見える。塔の左側面 東 よのへ一リ 南 はやぜへ三リ。台の左側面は側海計村、八王子村、在家村、宿村などから、こちらも70人あまりの名前が刻まれている。塔の裏面に造立年月日。下の台のほうは、右端に武州足立郡植田谷領嶋根村とあり、続いて中央 世話人１２名の名前、左には願主 馬喰とあり１名の名前、さらに左端に与野町 石工 佐藤太四郎と刻まれていた。さて、四面に刻まれたこのおびただしい数の名前を酒井さんはしっかりと調べ上げていて、まとめてみると世話人13人、勧進村33ヶ村及び３ヶ寺、施主186人ということになるという。参道を進むと山門手前左側にたくさんの石塔が並んでいた。その多くは馬頭観音文字塔で、江戸時代から昭和までの紀年銘が確認できる。以前は村内に各々立てられていたものが集められたものらしい。後列左から3番目 駒形の石塔の正面に「地先祖馬頭觀世音 牛頭観世音」と刻まれていた。昭和12年建立の珍しい石塔。他に似たような石塔を見たことはない。山門近くに唯一の像塔、聖観音菩薩像 安永4(1775)丸彫りの坐像のように見えるのだが・・・左手に未敷蓮華を持ち、開花を促すようにつぼみに右手を添える聖観音菩薩。どうやら像の下半分が切断されたもののようで、もともと立像だったのだろうが、上半身だけが蓮台に乗っていた。首にはセメントで補修された跡が見える。石塔部正面には「通山顧心庵主」とある。墓石だろうか？右側面に造立年月日。左側面には四行の願文が刻まれていた。山門手前右側には六地蔵の小堂が立ち、その右脇に宝篋印塔が立っていた。小堂の中 六地蔵菩薩立像 文化6(1809)像、蓮台、敷茄子、石塔部ともにそろっているが、頭だけはその下の部分と明らかに石の色が違っていて、あとから補われたものと思われる。右端の石塔の正面に施主十方 願主當村 善男女と刻まれていた。小堂の右脇に大乗妙典六十六部回国供養塔 明和2(1765)宝篋印塔の形式をとるが「経曰・・・」で始まる願文もなく、宝篋印塔とは言い難い。塔身部四面には梵字ではなく、「佛」「法」「僧」「寶」と漢字で刻まれていた。基礎正面中央に「奉納大乗妙典六十六部日本廻國供養塔」両脇、日月の下に造立年月日。基礎左側面には武州足立郡植田谷領 嶋根村願主とあり個人名が刻まれている。基礎右側面 湯嶋天神前、江戸春木町、目黒、駒込町などの地名が並び十人ほどの名前が刻まれているが、嶋根村出身の人たちだろうか？裏面 上段には大成町、与野町、五味貝戸村、田嶋村などの地名が並び数人の名前、中段と下段には當村などとあり、合わせて二十数人の名前が刻まれていた。山門をくぐってすぐ、参道左脇にお堂が立っていて中に石塔が見える。二基の五輪塔 永禄13(1570)やや赤みがかった石質で、素朴な印象を受ける。堂内で詳細は確認できなかった。お堂の脇に立っていた解説板によると、戦国時代に建立された「逆修」供養塔ということのようだ。さて、今年も押し詰まり、明日は大みそか。毎度のことですが、せわしない年末を過ごしています。次回のアップは1月4日あたりを予定しています。来年もよろしくお願いします。それでは皆さん、よいお年をお迎えください。

  2019.12.30

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  石仏画集 納経供養・石橋供養・道標編 緑区大間木 附島共同墓地

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら今日から「納経供養・石橋供養・道標編」に入ります。これまで見てきたものと内容が重複するものも多くなっていて、これまでの画集に収めきれなかった「その他の石仏編」という感じもします。さて1P目から6P目までは以前の記事で紹介したものになりますがスケッチだけでも再掲することにしましょう。1P目 中央区上峰 円福寺 大乗妙典六十六部納経供養塔 文化3(1816)尊像は地蔵菩薩坐像⇒2019年12月13日の記事2P目 南区文蔵 薬師堂 大乗妙典六十六部回国供養塔 宝暦9(1759)尊像は地蔵菩薩立像⇒2019年5月14日の記事3P目 緑区東浦和 清泰寺 大乗妙典六十六部回国供養塔 宝暦8(1758)尊像は地蔵菩薩坐像⇒2019年10月8日の記事4P目 緑区原山 薬師堂 大乗妙典六十六部供養塔 宝暦8(1758)尊像は地蔵菩薩立像⇒2019年9月1日の記事5P目 大宮区大成町 普門院 大乗妙典六十六部回国供養塔 明和5(1768)尊像は不動明王坐像⇒2019年4月3日の記事6P目 桜区宿 観音寺 大乗妙典六十六部供養塔 正徳5(1715)尊像は阿弥陀如来立像⇒2019年8月4日の記事7P目 緑区大字大間木 附島共同墓地の大乗妙典六十六部回国供養塔 安永6(1777)角柱型の石塔の上、重厚な蓮台の上に丸彫りの金剛界大日如来坐像。JR東浦和駅から駅前通りを南に500ｍほど進む。下り坂の途中、道路右側に城壁のようにブロックが積み上げられ、左脇から階段を上ってゆくと上は墓地になっていた。バックには大きなマンションが建っていて、こうやって見るとまるで本当のお城のようだ。墓地の中央あたり、個人の墓所の中にスケッチの石塔が立っていた。大乗妙典六十六部回国供養塔 安政6(1777)像、蓮台、石塔部いずれもかなり白カビが目立つ。智拳印を結ぶ丸彫りの金剛界大日如来坐像。頭に宝冠をして、右肩を出す偏袒右肩という着方。近寄ってみると首には補修跡が残っていた。角柱型の石塔の正面中央に「奉納六十六部供養塔」両脇に天下和順 日月清明。塔の右側面に造立年月日。続いて爲四恩法界と刻まれている。

  2019.12.27

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  石仏画集観音菩薩塔編 緑区下山口新田 稲荷神社

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら37P目 緑区下山口新田 稲荷神社脇の六地蔵菩薩供養塔 文政4(1821)角柱型の石塔の上に乗る丸彫りの石像は両手で経典を開き(文殊菩薩)象の上に半跏で座す(普賢菩薩)という二つの菩薩像の特徴を持っている。JR東浦和駅から「通船堀」に沿ってその南を東へ向かう「赤山街道」見沼代用水東縁との交差点の左側角に稲荷神社がある。同じ敷地内に下山口新田自治会館が建っているが、その西の一角に庚申塔と六地蔵の小堂が立っていた。小堂の中、中央にスケッチの石塔、両脇に六地蔵菩薩立像が並ぶ。六地蔵菩薩立像 文政4(1821)上部が鋭く前に突き出した独特の舟形光背を持つ六体のお地蔵様。そのいくつかには戒名と宝暦6(1756)から文政2(1819)の命日が刻まれていた。中央にスケッチの六地蔵菩薩供養塔。角柱型の石塔の上に磐座を置き、その上に主尊の坐像という構成である。少し気になるのは石塔部分とその上の部分が石質が違っているように思えることだ。磐座の上の坐像がこちら。風化は見られず細部まで美しい。頭の後ろに輪光背があった跡があるがそのほとんど欠けていた。足元の動物？は長い鼻を持ち、牙があり、耳も大きくやはり象であろう。両手で経典を開き持ち、文殊菩薩のようにも見えるが、調べてみると普賢菩薩象の中には、経典を手にするものもあるということなので、こちらは酒井さんの判断通り普賢菩薩とするのが正しいと思う。石塔部は明快。正面中央に「奉建立六地蔵大菩薩」その両脇に文政４年の紀年銘。願主 清心と刻まれていて、銘の字体、その彫りの様子は六地蔵の光背の銘と酷似しており、六地蔵塔とこの供養塔(石塔部)は同時に造立されたものと判断してよいのではないだろうか。一方、上の普賢菩薩坐像のほうはあとから補われた可能性も考えなくてはならない。やはり六地蔵菩薩の中央で主尊としてふさわしいのは延命地蔵だろうか。その造立年なども合わせて今後の研究が待たれるところだ。さらにもう一点、六地蔵のほうにも供養塔のほうにも地名や講名などは見当たらず、その由来についてはいま一つはっきりしない。先日土地の方に教えていただいたのだが、少人数ではあるが年配のご婦人たちが講を続けているということなので、いつかお話が伺えたらと考えている。観音菩薩塔編の最後38P目と39P目は寄居の石仏で11月６日の記事で紹介済みですが、この二体の石仏は普賢菩薩像と文殊菩薩像で今回の記事の参考までに再掲いたします。これで観音菩薩塔編を終わり、あとは「納経回国供養・石橋供養・道標編」「希少塔編」を残すのみとなりました。だいぶ長くなりましたが、もう少しお付き合いください。

  2019.12.24

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  石仏画集観音菩薩塔編 浦和区本太 延命寺

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら34P目は桜区田島 覚了坊の二十三夜塔、主尊は丸彫りの聖観音菩薩立像で９月16日の記事で紹介済みです。35P目は中央区新中里 大日堂の千手観音菩薩塔で7月13日の記事の中で取り扱いましたが、こちらのほうはその折に酒井さんのスケッチを載せていませんでしたので今回スケッチと写真を見ていただきます。千手観音菩薩像 造立年不明。舟形光背の中央、ちょうど首のあたりに断裂跡。上部にご詠歌を刻み、その下に八臂の観音菩薩像を浮き彫り。36P目は本太 延命寺の千手観音菩薩立像 元禄16(1703)古仏であり、また千手観音像塔じたいが非常に少ないだけに貴重な一枚。塔の左側面に「奉讀誦大乗妙典壱千部所願成就攸」とあり大乗妙典供養塔ということになる。浦和駅東口から北東に約500ｍ、仲本小学校の東に延命寺の入口がある。(本太1-42)坂道を上った先に立派な本堂が立っていた。坂の途中、左側ブロック塀の切れ目当たりにスケッチの石塔の笠の上の相輪だけが見えている。脇の寺標とブロックの隙間は木の枝が密生していて、まともに石塔全体を見ることはできなかった。左手で枝を抑えながら覗き込み、右手でシャッターを押す。角柱型の石塔の正面、上部に阿弥陀三尊種子。その下に千手観音菩薩立像を浮き彫り。風化は少なく美しい立ち姿。細かい持物などは酒井さんのスケッチで確認していただきたい。下部は蓮台までで精一杯。足の先まで彫りは細かく丁寧な仕事がされている。塔の左側面はブロック塀との隙間が少なく、銘は見えるものの撮影はできなかった。墓地のほうに入って右側面と裏の面を見る。右側面は梵字「ア」の下に願文、裏面には造立年月日が刻まれていた。酒井さんのスケッチは細部まで観察がゆき届いていて素晴らしい。日付は03.10.16 16年前にはもっとオープンな場所に立っていたのだろうか。坂を上り切った先、左側には墓地が広がっていて、その入口に石仏が集められている。新しい子育て地蔵の下には無縁仏が並んでいた。その脇に六地蔵菩薩立像 宝暦5(1755)丸彫りの六体の地蔵像。彫りの様子、蓮台とその下の台の銘など、よくそろっている。左から2番目の台の正面に造立年月日。中央には講中五十五人と刻まれていた。六地蔵の左 大乗妙典供養塔 延宝元年(1673)塔の正面 梵字「バク」の下に「大乗妙典一千部供養塔」と刻まれている。

  2019.12.21

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  石仏画集観音菩薩塔編 南区太田窪 浦和太田窪団地脇路地

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら32P目 産業道路の太田窪北交差点の南、団地脇の路地に立つ月待供養塔 宝永6(1709)勢至菩薩を主尊とする二十三夜塔である。県道35号線 通称「産業道路」太田窪北交差点の150ｍほど南、道路右側に浦和太田窪団地がある。その脇の路地にスケッチの月待供養塔の小堂が立っているのだが、写真でわかるように木々の間に隠れていて道路のほうからはよく見えない。路地の中に少し入らせてもらってやっとブロック塀の前に小堂を確認できた。スケッチの二十三夜塔 宝永6(1709)形の良い舟形光背だが、経年のために縁がところどころ欠けている。バランスよく彫られた勢至菩薩像も、一部が摩耗していて顔立ちがはっきりしない。光背上部に梵字「サク」右脇に「奉建立廿三夜待二世安樂所」左脇に造立年月日。その下に武州足立郡太田窪村とあり、施主は個人名が刻まれていた。

  2019.12.19

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  石仏画集観音菩薩塔編 緑区代山 不動堂

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら31P目は緑区代山の不動堂の普門品供養塔 安政3(1856)普門品とは観音経のことで、その供養塔ということから観音菩薩塔編にこの記事を残されたのだろう。馬場、宮本付近から東に進み、やがて五斗蒔橋を越えて日光御成街道にぶつかるT字路交差点から100ほど南、御成街道の東側に不動堂がある。。お堂の右側奥、塀の前に石塔が並んでいた。一番手前がスケッチの普門品供養塔 安政3(1856)角柱型の石塔の正面に「普門品一万巻供養塔」下の台の正面に草書体で「講中」と刻まれている。大きな木の陰でかなり暗いためにピントがうまく合わない。塔の右側面にやはり草書体で大きく日月清明、風雨以時。左側面に造立年月日。続いて武州足立郡代山邨と刻まれていた。中央に小型の丸彫り地蔵菩薩立像。銘は確認できず、造立年など詳細は不明。首にセメントで補修された跡が残る。左 地蔵菩薩立像 享保5(1720)錫杖、宝珠ともに健在だが、やはり首には補修の跡があった。蓮台の下、石塔部正面に「代山村中」塔の右側面に造立年月日が刻まれている。

  2019.12.15

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  石仏画集観音菩薩塔編 中央区上峰 円福寺

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら29P目、3０P目は寄居の馬頭観音文字塔で11月26日の記事で紹介済みです。31P目は上峰の円福寺の聖観音菩薩立像 寛文9(1669)舟形光背の上部が大きく欠けている。納経供養塔編の1P目にこちらの大乗妙典供養塔 文化3(1806)が取り上げられている。以前見た時には変わった形の石塔だと思ったものだが、蓮台の下は六部さんの姿を模したものだったとは、酒井さんのコメントを読むまでは全く気が付かなかった。新大宮バイパス上峰交差点から道路東の歩道を北へ100ｍほど進み右折して細い道に入ると円福寺の山門の前に出る。門の左脇に大きな石塔が立っていた。スケッチの大乗妙典供養塔 文化3(1806)台の上には火焔つきの輪光背を負った地蔵菩薩半跏坐像。蓮台の下のユニークな形の石塔は、酒井さんの解説によると上部は六部さんのかぶる笠、下の石塔部は六部さんが背負う箱を模したものらしい。その石塔部正面「奉納大乗妙典六十六部供養塔」下の台の正面両脇に當所 遊馬□□右衛門、江戸吉原町 桔梗屋 平□と刻まれていた。右側面に造立年月日。その下に爲先祖代々兩縁 法界萬霊菩提也。左側面の銘からは円福寺が四国八十八箇所のうち徳島県の国分寺の移霊場であること、与野上峰出身の行者直入と徳島出身の僧圓心ふたりが順礼を成し遂げたことがわかる。裏面には導師として林光寺住職の名前が見えるが、調べてみると円福寺は西区植田谷本にある同じ真言宗智山派の寺院 林光寺の末寺ということだった。境内は整備されていて気持ちが良い。山門を入って正面に本堂。その右手が墓地になり、墓地の中に釈迦堂が建っていた。江戸時代の古い石仏はこの釈迦堂の周りに集められている。堂の周りを時計回りに回ってみよう。お堂の北側には二基の石仏が並んでいた。右 地蔵菩薩立像 寛文7(1667)全体に白カビが多くお地蔵さまは顔がつぶされている。舟形の光背右脇「奉造立地蔵菩薩」左脇に造立年月日。下部両脇に武州新座郡上宗村と見えるがこれはどこだろう？左 弁財天塔 宝永5(1708)大きな石塔の上に弁財天坐像が乗る。以前桜区上大久保の常泉寺北路傍で見た月待供養塔(角柱型の石塔の上に八臂の弁財天坐像が乗る)とよく似ている。八臂の弁財天像。それぞれの手には法具や武器を持っていた。頭上には人の顔のようなものが乗っているが、蛇の化身、宇賀神というらしい。石塔の正面中央 梵字「ソ」の下に「奉造立辨財天□像福智圓満」右脇に造立年月日。左脇に武州足立郡與野領上峯村。右下に施主敬白とあり下部に９名の名前が刻まれている。お堂の裏面には無縁仏などが集められている。奥には廃寺になった二つのお寺の供養塔も立っていた。お堂の南側には歴代住職の墓石。手前の三基には正面に五輪塔が彫られている。その奥にスケッチの聖観音菩薩立像 寛文9(1669)舟形の光背上部を欠くが、白カビはなく風化もほとんど見られない。左手に未敷蓮華を持ち右手は与願印、気品あふれる聖観音菩薩。光背右脇「奉造立正観音菩薩一切菩提也」続いて武州足立郡上峯村 円福寺□□。左脇に権大僧都法印永□自造。逆修供養塔だろうか？さらにその脇に造立年月日が刻まれていた。

  2019.12.13

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  石仏画集観音菩薩塔編 大宮区三橋4丁目 阿弥陀堂墓地

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら26P目、27P目は寄居の二十二夜塔で主尊はどちらも如意輪観音坐像。11月26日の記事でまとめて紹介してあります。28P目 大宮区三橋4丁目 阿弥陀堂墓地の如意輪観音坐像 元禄7(1694)観音像の上に「念佛供養」とあり、酒井さんはこれを念仏供養塔として紹介している。新大宮バイパスの西、大宮西高校から東の道をまっすぐ南へ800ｍほど進むと信号交差点の手前、道路右手に墓地があった(大宮区三橋4-930)信号を右折すると鴨川にかかる藤橋、その西詰付近には「六部堂」がある。墓地の入口は南北2か所あって、南の入口の左脇、ブロック塀の前に庚申塔が立っていた。庚申塔 元禄3(1690)舟形光背に日月雲 青面金剛立像 合掌型六臂。光背の上部中央に「奉造立」右脇に「青面金剛庚申待供養二世安樂」左脇に造立年月日。青面金剛の顔と合掌した手は破損していた。足の両脇に二鶏。その下に顔が削れた三猿。元禄期の青面金剛像の特徴だろうか、足元に邪鬼は見あたらない。左脇 鶏の下に講衆とあり、三猿の下には8名の名前が刻まれている。北のほうの入口から入ってすぐ左脇にスケッチの如意輪観音塔が立っていた。光背右上が欠け、一部に白カビがついているが像の主要部分、銘文はクリアに残っている。上部、梵字「キリーク」の下に「念佛供養」右脇に武州足立郡植田谷領側谷戸村。左脇に造立年月日。足元の部分、正面には十数名の名前が刻まれているが、その多くはひらがなで、やはり女人講中なのかもしれない。

  2019.12.10

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  石仏画集観音菩薩塔編 緑区高畑 埼玉スタジアム北墓地

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら23P目は桜区栄和 重円寺の如意輪観音坐像 寛文12(1672)こちらは6月3日「地蔵菩薩編」で紹介したものだが、写真を再掲しておく。寛文期らしい堂々とした古仏。胸に梵字「キリーク」が刻まれていた。光背に惣信女拾數人とあり、女人講中による造立。酒井さんのコメントにあるように如意輪観音は月待塔、特に十九夜、二十一夜、二十二夜塔の本尊とされていて、そのほとんどは女人講、念仏講によって造立されたもの、埼玉県では二十二夜塔が多く「越谷の石仏」シリーズではかなりよく見かけた。24P目 中央区上落合地蔵堂の如意輪観音坐像 貞享2(1685)こちらは3月29日「庚申塔編」の記事で紹介した。やはり写真を見ていただこう。こちらは六臂像。右手が思惟相、如意宝珠、数珠、左手は宝輪、未敷蓮華、左足に添える。六臂の如意輪観音像の基本的な像容を示している。光背は一部欠けているが右脇に「此如意輪講奉供養志二世安樂所」銘はしっかり残っていた。25P目は緑区高畑 埼玉スタジアム北の墓地の如意輪観音坐像 安永5(1776)舟形光背も江戸時代中期以降だんだん形が変わっり、上の三体の如意輪観音像と比べるとだいぶ雰囲気が違っている。光背右脇「奉造立觀世音菩薩爲二世安樂也」下の台の正面、中央に高畑村講中十八人とあり、その脇にひらがなの名前が刻まれ、やはりこちらも女人講中なのだろう。現地は埼玉スタジアムの北入口前、後ろには新しく建て替えられた高畑神社があった。この墓地の石仏は2017年2月9日の記事で紹介したものだが、その時は埼玉スタジアムの東の墓地にあり、新しい六地蔵とそのまわりの石仏はみな東向きに並んでいた。その後また訪ねてみると、その墓地は影も形もなくなっていて、まわりを探し回ってやっとこちらにたどり着いたのだが、どうやらここがもともとの墓地のあった場所で、スタジアム東にあった墓地は仮の安置所だったようだ。墓地の中央付近、新しい六地蔵の両脇に石塔が並んでいた。左脇の三基の一番後ろがスケッチの如意輪観音塔。前の石塔の陰になり正面から写真を撮ることは難しい。白カビは目立つものの銘はきれいに残っていた。像も彫りは丁寧で生き生きとしている。二臂の観音様。どのようにして衆生を救済していけばいいのか、深い思索に沈む様子がうかがえる。なお、現在は酒井さんのスケッチで描かれていた像の下の台は無くなっていて、前の二基と同じ台の上にじかに置かれていた。右脇の三基の後ろには庚申塔 元禄5(1692)が立っていた。日月雲 青面金剛立像 合掌型六臂。左手にショケラをつるす「岩槻型」青面金剛像である。蛇冠を頭に青面金剛は怖い顔をしてにらみつける。ショケラがちょっと変わっていて、髪をつかまれつるされているにもかかわらず、左手を上げて挨拶をしているようなポーズ。足の両脇に二鶏を半浮き彫り。その下に正面向き、上半身のみの邪鬼が彫られている。邪鬼の下にはやはり正面向きの三猿。さらにその下の部分、正面から側面にかけて40人ほどの名前が刻まれていた。多くの人たちの信仰を集めていたのだろう。

  2019.12.08

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  石仏画集観音菩薩塔編 大宮区大成町 普門院

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら22P目 大宮区大成町 普門院の三界万霊塔 文化13(1816)大きな石塔の上、舟形光背に浮き彫りされた如意輪観音坐像を乗せる。江戸時代初期の重量感のある如意輪観音とはだいぶ趣が変わり、華奢で優雅な姿が印象的。なお、4月3日の記事でこちらの二基の庚申塔を紹介しているので、そちらも合わせて見ていただきたい。中山道大成町2丁目交差点から西に入ると普門院の前に出る。入口を入ってすぐ左側は大きな駐車場になっているが、その南側の一角、塀沿いに多くの石仏が集められていた。左側には頂上に阿弥陀如来坐像をいただいて、無縁仏が積み上げられている。正面には大きな舟形光背を持った寛文、元禄の如意輪観音などが見られたが、頂上の阿弥陀如来像までは近づくことはできなかった。その奥、フェンスの向こうに八基の石塔が二列に並ぶ。前列には五基の丸彫りの地蔵菩薩立像。一番手前が前回「庚申塔編」で紹介した「地蔵庚申塔」である。後列には三基。左は順礼供養塔 宝暦7(1757)塔の正面に「南無觀世音菩薩」右側面に西國 秩父 坂東 奉順禮諸願成就之攸と刻まれていて、観音霊場順礼供養塔ということになる。中央は延宝2年の古い文字庚申塔で、下部に向かい合う二鶏と二猿を彫るという非常にユニークなもの、こちらも4月3日の「庚申塔編」の記事で紹介した。後列右端がスケッチの三界万霊塔 文化13(1816)角柱型の石塔の上に如意輪観音坐像が乗っている。如意輪観音像というと二臂像か六臂像だが、二臂像のほうが一般的だろうか。右足を立てた半跏像で頭を右に傾けて、右手はひじを膝の上にのせて手のひらを頬のあたりに添える思惟相というのが如意輪観音の特徴だが、酒井さんのコメントにあるようにこの如意輪観音では右手は顎に当てられていて、これはとても珍しい。さらに今まで見てきた六臂の如意輪観音像では、数珠を持つ手は右足のかげに垂らしている例が多かったように思うのだが、ここでは肩の上のほうに掲げ持つ形になっていてこれもユニーク。おなかの前に如意宝珠と未敷蓮華を持つのはいかにも如意輪観音らしい。塔の正面中央に「三界萬霊等」両脇に天下泰平・國家安全。左側面に造立年月日。続いて「念佛講中」その下に下大成邑とあり世話人三名の名前が刻まれているが、そのうち二名は女性だった。右側面には願主を含め六名の名前が刻まれている。江戸牛込、同下谷、同湯嶋などとあるが、大成村出身の人たちなのだろう。願主を含め三人は「妻」とあり、この村から江戸に嫁いでいった人たちなのかもしれない。

  2019.12.05

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  石仏画集観音菩薩塔編 南区 沼影観音堂

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら20P目は中央区下落合 落合霊園の観音菩薩立像 元禄16(1703)でこちらは9月26日の記事で紹介済みです。21P目は南区 沼影観音堂の聖観音菩薩立像 元禄10(1697)舟形光背に右手与願印の聖観音菩薩像を浮き彫り。スケッチはとてもクリアに描かれている。JR武蔵浦和駅から田島通りを西に250m程進むと、信号交差点の右手前に沼影観音堂があった。入口両脇に大きな二基の丸彫り重制の石塔が立っている。右 地蔵菩薩立像 享保17(1732) 大きな蓮台、重厚な敷茄子の上に丸彫りのお地蔵様。錫杖の先を欠き、首には補修跡が残る。石塔部正面「三界萬霊」右側面に造立年月日。左側面に 天下泰平 國土安穏。裏面中央「奉納四十八度供養」その右脇に信州善光寺浅草觀世音。左脇に武州足立郡沼影村とあり願主名が刻まれていた。左 聖観音菩薩立像 元文4(1739)石塔部正面に「一切供養」左側面に造立年月日。右側面に武州足立郡笹目郷沼影村 続いて願主二名、さらに施主 村中。裏面には願文が刻まれている。観音様の左脇、東向きに庚申塔 宝永５(1708)2月7日の記事の中でさいたま市内の丸彫り青面金剛坐像を整理した際にこちらの庚申塔を紹介した。大きな石塔の上に青面金剛付きの四角い台が乗り、その正面に邪鬼と三猿が彫られている。石塔の正面 梵字「ア」の下に「奉造立庚申像為二世安樂也」両脇に造立年月日と願文、さらに下部に九名の名前。塔の右側面に足立郡笹目領沼影村と刻まれていた。参道左脇の小堂の中に六地蔵菩薩立像。台には宝暦8年と宝暦9年の紀年銘、講中、武州足立郡笹目領沼影村などの銘が確認できる。小堂の右脇に丸彫りの地蔵菩薩立像 明和４(1732)台の正面に「十方施主二世安樂」右側面に沼影村と刻まれていた。参道を進んでいくと右側の一角に多くの石塔が並んでいる。2列目の右のほうにスケッチの聖観音立像 元禄10(1697)光背上部が一部欠け、塔全体を白カビが厚く覆いつくしていた。近づいてみると観音様の顔は一部破損しているものの、銘は比較的しっかりと残っている。光背右脇に「念佛供養爲十□□菩提」左脇に造立年月日。その下に沼影村 願主 念心と刻まれていた。

  2019.12.02

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  石仏画集観音菩薩塔編 川口市小谷場 阿弥陀堂墓地

  ホームページ「私家版さいたまの石仏」はこちら15P目は桜区新開の真光寺の三基の馬頭観音塔、16P目は寄居の馬頭観音塔で、それぞれ10月29日の記事、11月26日の記事で紹介済みです。17P目は与野の円乗院の六観音六面石幢 寛文12(1672)造立年も古く貴重な石仏ですが、現在円乗院では境内での写真撮影は全面的に禁止されていて取材は難しい状態です。今回は酒井さんの丁寧で細密なスケッチだけでもお楽しみください。18P目は南区大谷口 旧安楽寺墓地の聖観音菩薩供養塔ですが、こちらは11月3日の記事で紹介済みです。19P目は川口市小谷場 阿弥陀堂墓地の聖観音菩薩立像。酒井さんはそのユニークな立ち姿のためにこちらを取り上げられたようだ。南浦和駅東口から蕨駅東口まで京浜東北線沿いにまっすぐに続く道。南浦和陸橋の下をくぐって400ｍほど先、左手の細い道に入り少し進むと左側に阿弥陀堂の墓地があった。写真右の入口から入ると参道両脇に小堂が立っている。写真左側、ブロック塀のはずれにも小堂が立っていた。入口左側の小堂の中 不動明王坐像。造立年などは不明。剣と羂索を持ち火焔の光背の前に坐る。下部に矜羯羅・制多迦両童子を従え、その間には「成田山」と刻まれていた。参道左脇の小堂の中には二基の石仏。右がスケッチの聖観音菩薩立像。下の台の正面右隅に「正徳」とあるだけで、その他詳細は不明。前掛けで見えないが、左手に未敷蓮華を持ち、その開花を促すように右手を添える。たおやかな立ち姿だが、風化がほとんど見られないのはちょっと不自然のような気もする。足元のセメントも比較的新しい感じで、あるいは下の台が本来のものではないのかもしれない。下半身が厚く充実していて普通の観音像らしく見えるのだが・・・横から見ると膝のあたりが極端に前に出ていて、バランスがユニーク。まるで「膝かっくん」されたような姿勢で、これは他では見たことがない。

  2019.11.30

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