カテゴリ:演奏会(2010年)
大植英次/大阪フィルによるブラームスの演奏会を聴きました。
来年2月まで4回にわたって行われる、交響曲4曲と協奏曲4曲のブラームスチクルス、その第1回。 ブラームス:ピアノ協奏曲第1番 (ピアノ:ジャン=フレデリック・ヌーブルジェ) ブラームス:交響曲第1番 7月2日 ザ・シンフォニーホール 折しも7月1日から3日まで出張で名古屋に来ていたので、ならば大阪の19時開演はぎりぎり射程距離、すきあらば大阪へ、と考えていました。なんとか強引に足を伸ばして聴きにきた次第です。大植さんとピアニストの歌心でブラームスをじっくり味わえた貴重なひとときでした。 ピアノ協奏曲は、第二楽章アダージョの詩情が絶品でした。そして第三楽章の躍動感も立派なもので、充分に聴き応えのあるブラームスでした。 アンコールももちろんブラームス、六つの小品(作品118)の第二曲の間奏曲。じつに暖かみのある演奏で、思わず涙がにじんできてしまいました。この若いピアニストの歌心に脱帽しました。 休憩のあと、第一交響曲。第二楽章と、ゆっくりめに演奏された第三楽章、このふたつの中間楽章が、暖かく豊かな歌で歌われ、うっとりと魅了されました。大植さんの魅力全開!大阪フィルの木管は本当にすばらしいです。さらに特筆すべきは、第二楽章最後近くのコンマス長原さんのソロの凛とした圧倒的な美しさ。本当に心打たれました。 一方両端楽章は、なんとなく重厚で粘る演奏を予想(期待?)していたのですが、それに反して、第一楽章の序奏は軽めにあっさりと始まるし、また第四楽章の第一主題をゆっくり歌わせて、もしかしてこのまま遅いテンポで突き進むのかと思うと急にギアチェンジしてテンポを速めたり、終結部のトロンボーン隊を筆頭とするコラールもややパワーセーブ気味(?)で、全体として重厚さあるいは突き抜けたパワーを目指すのとはまったく違った路線でした。 特にその傾向が如実に現れたのが、曲の終結でした。一番最後の最後の長い主和音を、アタックのあとすぐにかなり音量をさげて(!)、短めにあっさり切り上げて終わりました。ちょっと肩透かしをくらった感じでした。うーんこの曲の最後は重厚に鳴らしきって締めてほしかった、と思う僕が古い人間なのでしょうか(苦笑)。 曲が終わって、カーテンコールがすすみ、さて大植さんが団員をひとりずつ立たせようというとき、真っ先に立たせようとしたのがコンマスの長原さんでした。大植さんもあの第二楽章のソロにきっと深く感動し、それで最初に立たせようとしたのでしょうか。長原さんは遠慮して、他の人を先に立たせるべきだとかなり一生懸命粘って断っていましたが、最後にはやむなく(^^)立ち上がりました。 きょうはちょっとハードスケジュールでしたが、心にじわっとしみてくるブラームスをたっぷり聴けて、聴きにきた甲斐がありました。大植さんと大阪フィル、それにヌーブルジェさんに、感謝感謝です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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仰るとおりだと思います。
思い返せば、ブラームスの作品のかなりの部分が歌曲と合唱曲であることに思い至ります。ピアノ以外の器楽は、この人の中で、ほんの一部分に過ぎないのかもしれませんし、ましてや、今回のシリーズの8曲にセレナーデ2曲とハイドンヴァリエーション1曲を数えるのみの管弦楽曲などは、マイルストーンとしては大きな意味を持つ一方、この人の音楽の本質の全てではない、と(特に今回)考えさせられた次第です。 (2010.07.06 12:37:33)
なるほどぐすたふさん、とても興味深い御指摘です。
ブラームスほどの音楽の才能がある人だから、各ジャンルに大傑作を生みだしてはいるけれど、その音楽の核心はというと、少なくとも大編成の管弦楽が堂々たる響きを轟かすところではなく、もっと違うところにある。それを今回大植さんの歌が、明確に、魅力的に、示したということでしょうか。 こういう演奏を聴くと、チクルスの続きの2番や3番が、ますます興味深くなってきます。聴いてみたいものです。しかし連続の大阪遠征は、ちょっと厳しいです。。。 (2010.07.07 01:24:34)
じゃくさん、ブラチク初日に来られていたのですね。ぐすたふさんとのやり取りが興味深いです。というのも次の週のシューマンを聴いて、予想に反した純度の高い演奏に感銘を受けたのです。僕も2回目意向のブラチクに行きたくなりましたが、日程の都合で涙を飲みそうです・・・
(2010.07.11 00:36:37)
ヒロノミンVさん、コメントありがとうございます!
シューマンの感想を拝見して、感銘を受けました。 > 予想に反した純度の高い演奏 これ、すごく想像できます。 あ~シューマン(とバルトーク)も聴きたかったです。 どんな音楽をきこうかというモチヴェーションに、この作品(作曲者)だから聴きたいというものと、この演奏者(指揮者)だから聴きたい、というものがありますね。 僕は自分自身、かなり前者の比重が大きい人間だと思っていますが、数少ない例外が大植さんです。大植さんの指揮なら、どんな作品でも聴きたい、大植さんの歌を聴きたい。いろんな制約はありますが、これからもできる範囲で大植さんを聴いていきたいですね! (2010.07.12 01:54:20) |
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