カテゴリ:マーラー演奏会(2011年)
二日目から一夜あけた6月19日、三日連続3番公演最終日のレポートです。 開場前、きょうも昨日と同じ場所でコーヒーを飲んでいると、やはり今日も来ました来ました、先生方に引率された男女数十人の中学生くらいとおぼしき生徒たち。目の前を通り過ぎるとき、生徒の人数を数えてみたら、ちょうど50人でした。児童合唱の生徒たちですね、3日連続お疲れ様です、きょうも頑張ってください。 今日も大入り満員の会場で、佐渡さんのトークが始まりました。昨日に続いて六甲おろしの話をしようと思っていたらしいのですが、うっかりそれをし忘れてしまったようでした。今日は「没後100年」は順調に出ましたが、連日何かと突っ込みどころの多いトークとなっていました(笑)。 僕の今日の席は1階のかなり前寄りの、ほぼセンターでした。自分としても初めての、3日連続3番体験が、いよいよ始まりました。 第一楽章から、きょうはオケの音がしっかり噛み合い、まとまって、すばらしいです!席の違いもあるので厳密な比較はできないですが、僕の感覚としては昨日とは全く違う次元の、圧倒的なパフォーマンスです。 金管部隊は、なんといっても特筆すべきはホルン隊の威力です。初日から高いレヴェルだった強力ホルン隊、きょうはますますパワーと安定性が増し、圧倒的なパフォーマンスです。これは凄い。ホルンを筆頭に、他の金管群もすばらしい。柔らかい音色が魅力の1番トランペット(おそらくMCO奏者)も、3日目が一番良かったですが、それでもやはり突き抜ける輝きが欲しい場所でも遠慮がちに聴こえたのが、唯一の、物足りなさを感じたところでした。 木管も、昨日までは奏者ひとりひとりはいい音を出していても、何かそれがしっくり他の音と合わず、微妙な違和感を感ずることが多かったのですが、きょうはそれがなく、オケ全体の音の一部としてふさわしく響いています。 弦も、ますます好調。僕のきょうの席は、佐渡さんとチェロやヴィオラの第一プルトが、かなり間近にかぶりつき的に見れる席でしたので、初日・二日目とも好印象だったチェロとヴィオラの演奏を間近で見聞きできて、ますますその魅力に惹かれました。第一楽章で佐渡さんが、弦へのキューをかなり多く出していることがあらためてわかりました。特にヴィオラやチェロへの弱音部分で、えぐりこむような強いキューが印象的でした。それにこたえるヴィオラやチェロのジャワジャワっとした弱音が、シャープで鮮やかで、実に素晴らしいです。 なにしろ第一楽章の持つ多面的な魅力を、岩山のごとき峻厳さも、夏の行進の歓びも、弱音部でのえぐりこむ緊張感も、十分なパワーとスケールで、表してくれたのは驚異的です。三日目にきてついに、佐渡さんと二つのオケがしっかりひとつになった音楽が鳴っています。これを、これを待っていました! 第三楽章のポストホルン、僕の席はかなり前寄りで、舞台下手奥のドアがあいたとき、ドアの上部が開いたのがわずかに見えるという位置でした。それが幸いしたのか、初日ほどには近くから聴こえず、二日目と同じように、まずまずの距離感を持って響いてきました。佐渡さんは今日もとても遅いテンポでポストホルンを吹かせましたが、頑張っていい演奏でした。なお、このポストホルンの伴奏部分で、二日目の演奏では名手の1番クラリネットが、途中の入りのタイミングを間違えて、かなり音がずれてしまったという、ご本人にとっても悔しいであろうアクシデントがありましたが、きょうは完璧でした。 第三楽章が終わり、合唱団、ついでヤングさんの入場です。今日はヤングさんは、初日、二日目の青緑色のドレスでなくて、漆黒のドレスでの登場です。この歌が本当にすばらしかったです。歌いだしの絶妙な弱音、そして「O Mensch!」のschとか、「Gib Acht!」のchtとか「Ich schlief!」のfとかの語尾の子音が巧みに強調され、そのたたずまいに深い余韻があり、引き込まれて聴きました。名唱です。昨日までの青緑のドレスも美しい色でしたが、夜の闇の深さを歌うこの楽章には、黒いドレスがとても似合うと思いました。なお第四楽章の半ばで、ホルンの本数が増えて独唱者の伴奏の和音を奏でるところ、二日目の演奏ではホルンの音がちょっとばらけて不揃いでまとまらなかったのですが、きょうはここも完璧にクリアしたホルン隊でした。 第五楽章への入り方は、佐渡さんは第四楽章が終わってから合唱団に起立の指示を出し、譜面をめくって、振り始めるという方式でした。それから終楽章への入り方も、第五楽章が終わってから独唱者が座り合唱団を座らせてから振り始めるというやり方でした。どちらも、二日目までと基本的には同じ方式です。二日目までは、間合いが間合いとして感じられ、各楽章が別個のものに途切れ途切れになった感じがしました。しかし今日は、間合いそのものがおそらく二日目までよりも短かったように思いますし、間合い自体に緊張感が保たれていて、アタッカに近い雰囲気となっていました。これならば、興をそがれることなく、4,5,6楽章が一続きの音楽として感じとれます。 そして終楽章。あぁ三日目にして、ついにミューズの神は降りてきてくれました。非常にゆっくりとしたテンポ、フレーズの終わりから次のフレーズにはいるところの粘り。CDに聴くバーンスタインの演奏が想い起こされます。そしてオケの奏でる音の美しさ。節目節目で出てくるホルン隊の強奏の、なんと力強く、なんと神々しい響き!PAC+MCO+ジョナサン・ハミル氏による終楽章のホルンの響き、忘れられないものとなりました。 最後近くの金管コラールの1番トランペット、二日目は惜しくもはずした最高音も、きょうはきっちりと決まりました。 ティンパニの最後の一打ち、二人のティンパニ奏者の打撃が、二日目は微妙にずれてしまいまいたが、今日はびしっとそろって、画竜点睛の一打ちが決まりました。 きょうは本当に何もかもが決まった、ミューズの神に祝福された演奏でした。 またひとつ、幸せな3番体験ができました。佐渡さん、PACとMCOの方々、ヤングさん、合唱の皆さん、すばらしき3番をありがとうございました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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マーラーの3番ということで、もしかして、じゃく3さんがいらっしゃるのかな?と思っていましたが、3公演連続聴きに行かれるとは流石です!
この公演、行こうかと思ってチケット取っていたんですが、出張が翌週にずれたため、オークションに出しました。2000円が6500円で売れました。凄い人気です。 やっぱり4~6楽章の流れがキモなんですね。 兵庫芸文、いい劇場ですよね。僕はすでに地元民ではありませんが、あの劇場は誇りですね。 (2011.07.02 02:56:13)
ヒロノミンVさんこんにちは、コメントありがとうございます!
中毒が昂じてとうとう三日連続の暴挙(^^;)に及んでしまいました。初日が終わったときには実はちょっと後悔の念を抱いたりもしましたが、「毒を食らわば皿まで(??)」と開きなおったら、結果的には素晴らしい体験になって、良かったです。 出張がずれて、残念でしたね。それにしても佐渡さんの人気はすごいですね。 兵庫芸文、とっても素敵なところですね。はいってすぐ巨大な豆のようなモニュメントに、びっくりしました。館内の雰囲気がとても良いし、大ホールは、中も良いし、3階には緑の庭園もあるし、あちこちにロッカーなどの設備も整っていて、来客が快適にすごせるように工夫されているのがとても気にいりました。いずれ中、小ホールにも訪れてみたいです。 (2011.07.02 12:33:53)
じゃくさんも本当に3番がお好きですから、3公演連続というのは素晴らしい体験をされたと思います。
私は大野さんの京響も聞くつもりだったのですが、チケット発売日を間違えて、ちょっと遅れたら完売・・・がっかりでした。 この公演は日曜公演(定期会員)だったので、こなれた演奏が聴けました。私の印象は管楽器とティンパニの威力。 MCOは若いオケでPACも・・・その若さがちょっと邪魔をしていたように感じたのは贅沢というものですね。 小ホールも素晴らしいです、最近ではグスタフ・レオンハルトのリサイタルに行きましたが、感動の連続でした。 中ホールは、あまり私は好みではありません。 7月には大植さんの4番がありますが、こちらも楽しみです。 (2011.07.02 20:30:33)
Jupiterさんコメントありがとうございます!
>じゃくさんも本当に3番がお好きですから、3公演連続というのは素晴らしい体験をされたと思います。 3日連続がどういうことになるのか想像つかなかったですが、佐渡さんと若いオケから生まれる音楽が、日毎に内容が充実していく様子を目のあたりにできて、いい体験ができました。 >この公演は日曜公演(定期会員)だったので、こなれた演奏が聴けました。私の印象は管楽器とティンパニの威力。MCOは若いオケでPACも・・・その若さがちょっと邪魔をしていたように感じたのは贅沢というものですね。 この公演の前の週に、東京でハーディング指揮、MCOによるマーラー4番などのコンサートを聴きました。ハーディングのすばらしさもさることながら、このときのオケの各自がのびのび弾いていて全体として出てくる音がすばらしいことに驚き、MCOはすごいオケだと思いました。今回の3番も、3日目にはMCOらしさがだいぶ出てきていたように思います。 >私は大野さんの京響も聞くつもりだったのですが、チケット発売日を間違えて、ちょっと遅れたら完売・・・がっかりでした。 京響の3番は、1回だけで、しかも定期演奏会ですから、激戦を予想していましたが、なんとかゲットできましたので、聴きにいこうと思います。 >小ホールも素晴らしいです、最近ではグスタフ・レオンハルトのリサイタルに行きましたが、感動の連続でした。中ホールは、あまり私は好みではありません。 そうですか、小ホールいずれ聴いてみたいです。レオンハルトは僕も先日東京文化会館小ホールで聴きました。とても良かったですね! (2011.07.03 22:16:22)
記事拝見して、ちょっと悔しいなあなどと(笑)。いやいや、でも、よかったですねえ、3日目にしてここまでの演奏になって。
私は、京響の方に参加の予定です。京都百科さんと行ってきます。これは1日こっきり・・・外れないといいなあ。 (2011.07.16 01:28:26)
ぐすたふさんこんばんは!
>記事拝見して、ちょっと悔しいなあなどと(笑)。 なんとなく、お気持ちお察しいたします(爆)。 >いやいや、でも、よかったですねえ、3日目にしてここまでの演奏になって。 初日はもちろん、二日目終わった段階でもその後の展開を予想できませんでした。3日目だけでも、ぐすたふさんに聴いていただきたかったです。 >私は、京響の方に参加の予定です。京都百科さんと行ってきます。これは1日こっきり・・・外れないといいなあ。 京響を聴くのは初めてですので、どんなになるか、楽しみです。1日だけなので、最初からテンションあげてほしいですね! (2011.07.17 00:00:37) |
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