こんにちは
総合政策部政策局総合教育推進室です
若者の海外留学を官民挙げて支援する
「ほっかいどう未来チャレンジ基金」
により教育先進国のノルウェーで、ものづくり関係の職業教育をカリキュラムに組み入れている学校で職業観の育成についての日本との違いを学び、北海道の持続可能なものづくり産業への貢献を目指す学生留学コース立花洋太朗さんから1月の活動の様子が届きました 立花さんは、2月上旬に帰国しています。
1月は実践活動を中心に行いました。ノルウェーのベルゲン市内の公立高校3校を訪問し、施設・授業見学、意見交換、インタビュー等を行いました。
1校目はAmalie Skram Videregående Skole (Amalie Skram 高校)です。2014年設立の市内最大級の高校です。こちらの学校ではICTを使ったスペイン語の授業を見学しました。
この授業では課題の配布や提出、授業のプリントなどをデジタル化し、教師、生徒ともにGoogle Driveを使って管理しています。語学の授業では他の授業とは異なり、「話す」ことに重点を置いて授業が行われたり、課題を提出することが多いそうです。そこでAmalie Skram高校ではICTを活用し、ユニークなスピーキング課題を課しています。
先生から提示された課題文を音読している様子を生徒が各自のコンピュータで録画し、それをクラウドシステムであるGoogle Driveを通して先生に提出します。この課題はオンライン上に動画としてアップロードされるため繰り返し聴けるなどの利点があり、生徒一人一人良いところや発音などの改善点を先生が容易に発見できたり、フィードバックを逐次見ることができるといった利点があります。
日本でも小学校3年生から外国語活動、5年生から外国語科の授業があり、今後ICTの普及が進めば、このようなビデオを活用した教材や課題なども利用できると感じました。
2校目はSlåtthaug Videregående Skole (Slåtthaug 高校) です。
こちらの高校はものづくりに関わる工業学科(電気コース、機械コース、自動車コース)や看護学科など複数の学科を設置している高校です。この学校に通う生徒は高校生の時から専門的なスキルを学ぶことで、卒業後に即戦力として社会で活躍することができます。
この学校では電気科と看護科が学科の枠を超えた先進的な授業を展開しています。近年ノルウェーでは日本同様に、高齢化が社会問題となっています。この高齢化社会に対応するため、スマートホームの技術が一つの解決策として検討されています。スマートホームとはAIやIoTを利用して住まいの快適さや利便性を向上することです。このスマートホームを実現するため、電気科と看護科がお互いの専門性を生かして授業を行なっています。
電気科がスマートホームの設備づくりや整備について、看護科は高齢者が快適に過ごせるスマートホームを目指すにはどのような設備が必要かについて話し合ったり、それらの技術を利用して介護の負担軽減を図るにはどうしたら良いかなどを検討しています。住まいに関わる「ものづくり」という視点で社会問題の解決に向けて高校生の時から学ぶ場が提供されていることを今回の学校訪問を通じて学びました。
日本でもこれから益々高齢社会が進むにつれてスマートホームが普及する可能性が考えられます。特に北海道では高齢化に加え、過疎化が深刻な問題となっています。北海道でも高校生が課題解決の手段として「ものづくり」について学ぶ場が必要だと実感しました。
3校目はStend Vidaregåande Skule (Stend 高校)です。
こちらの学校は12月から複数回、訪問させていただいており、1月は、主に数学やドッグトレーニングの授業見学を行いました。
数学の授業では、電子教科書やGeoGebraと呼ばれるフリーの数学アプリを用いて演算やグラフの作成を行なっておりました。
生徒にソフトウェアを利用した数学の授業について尋ねたところ「エクセルのようにセルに数値を入れるだけでグラフを描いてくれるから便利」、「変化や数値を変えた時にどうなるか、シミュレーションができ理解につながる」などの意見を伺うことができました。
ドッグトレーニングの授業では先生が黒板で写しているスライドをクラウドシステムを使って、生徒が自分のパソコンで閲覧や書き込みができるようなシステムが整っています。したがって、授業ではスライドを書き写す時間が削減され、その分をディスカションの時間に充て、自分の意見を考えて、まとめ、発表するといった機会が多く与えられている印象を受けました。
アンバサダー活動としては、Stend高校において、日本の学校生活や習慣とノルウェーの学校の印象についての発表会を開きました。日本では当たり前のことがノルウェーに住んでいる人にとっては当たり前ではないなど、双方の文化比較による交流を行うことができました。
例えば、ノルウェー(ホルダランド県)の公立学校では生徒一人につき1台パソコンが支給され、高校生のほぼ100%がパソコンを所持し、授業等に活用されていますが、日本の高校生のノートパソコン所持率はおおよそ27%*にとどまり、大きな差が見られました。多くのノルウェー人が日本はものづくりやデジタル技術において先進国であるという認識を持っていますが、教育の現場ではICTが普及の途上にあることに驚いていました。
1月末で全ての活動が終了しました。
支援いただいている企業様やサポートしてくださった皆様、現地でサポートしてくれたベルゲン大学の学生や公立学校の先生やスタッフの皆様、6ヶ月間大変お世話になりました。この場を借りて感謝申し上げます。
帰国後は今回の留学で得た貴重な資料や情報を大学での研究に生かし、北海道のICT教育や、職業教育についてノルウェーでの経験を生かし貢献していきたいと考えています。
また、これから留学を考えている高校生や大学生の方を後押しできるような活動も考えております。
これからもよろしくお願いします。
*平成30年度 青少年のインターネット利用環境実態調査
▼「ほっかいどう未来チャレンジ基金」についてはこちら
▼「みらチャレ」公式facebookページについてはこちら