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カテゴリ:昔の面白いブログシリーズ
「昔の面白いブログシリーズ」の第19回目です。2012年1月24日付けの「モンゴル人の心の中?(1)」を載せます。
世界に散在しているモンゴル帝国の末裔たちに語り掛ける、モンゴル人の想いが2回に渡って書かれてます。1回目です。 以下、掲載します。 モンゴルからのニュースで、とても気になる文章がありました。それはモンゴル永住権プログラム(ブルー・カード)についてのことです。 このブルー・カード・プログラムというのは、今後大きな経済発展(年率20%)が見込まれるモンゴルへ、世界中に散らばってしまったモンゴル人、モンゴル系民族に帰って来てもらい、ともに新しい国を作って行こうではないかと呼びかけるというもので、首相も大統領も呼びかけています。 呼びかける理由は、300万人に満たないモンゴル国の人たちだけでは、新国家建設には足りないだろうという見込みと、海外各国で知識や技術を積んだ人たちに戻って来てもらいたいというのはもちろんあります。 が、より大きな視野で見れば、チンギスハーンの打ち立てた世界最大の帝国後、世界各地に散り散りになってしまったモンゴル系民族の数百年に渡る帰国願望を叶えてあげたいということも入っているのだと思います。 モンゴル人と会ったことある人はよくわかると思いますが、彼らは大変誇り高い民族です。 時として、誤解されることもありますが、根底には長く続く遊牧民としての誇り、チンギスハーンの末裔としての誇りが感じられます。 社会主義時代には、チンギスハーンの「チの時」も口にしてはならない(ロシアにとっては、チンギスハーンは史上最大の悪人?)こともあっただけに、自由になった現代では、誰もがその誇りを口にします。 「民族とは何か?」の定義は、研究者の間でも実に様々な意見があります。つまり、特段難しくもないこの「民族」という言葉の定義すら、実ははっきりしていないのです 私はある民族学者が言った言葉に「なるほどなー」と思ったことがあります。それは「同じ記憶を持つ人々」という定義です。 記憶にはいろいろあると思います。学校で教育する「歴史」はもちろんですが、もっとフォーマルでない形での記憶、例えば「神話」とか「言い伝え」などもあるでしょう。共有化した「道徳観」「習慣」などもこれに含まれるでしょう。 モンゴルの場合は、教科書でチンギスハーンのことを教えられるようになったのは、わずか20年前です。 それまではロシアによって禁止されていましたから。ロシアの前は満州人の支配があり、その前は・・・となると、当然、フォーマルな形での教育というものには乏しかったでしょう。 それでも、モンゴル人、モンゴル民族はだれもがチンギスハーンのことを知っています。物語を知っています。これは偉大な「共通の記憶」と言えるのではないでしょうか? こういう歴史的認識を持つ現代のモンゴル人300万人が、世界中に散らばってしまったモンゴル系民族700万人に対して呼びかけているのです。 本当はもっと前から呼び掛けたかったのでしょうが、政治的経済的事情などを考えると、したくてもできなかったのでしょう。 ですが、大きな経済発展が、もう目の前に来ている今、ついに呼びかけることができるようになった、というのだと私は理解しました。 前述のように、首相も大統領も応援していますが、活動主体となっているのは「ツァヒム・ウルトゥー・ホルボー」というNGOです。 その声明文が、とてもモンゴル人の気持ちを表しているように感じたので、ここに抜粋させて頂きます。 なお、日本語訳責任者は、モンゴルで不動産などのビジネスを手掛けているTulgatさんです。京都大学出身で、日本語を完璧に話せる人です。 「800年前、モンゴル人は繁栄を極め、世界の四方を騎馬で駆け抜け、世界帝国を築いた。その後、時が流れると共に、戦士としてのモンゴル人はなりを潜め、さらに満州人の支配下に置かれて世界からは忘れ去られ、その後70年間社会主義のカーテンに閉じ込められ、民族の家であるこのモンゴルの地にわずかな人口で暮らしながら21世紀を迎えた。」 という文章から始まります。 世界帝国後のモンゴル人の置かれた立場に、無念さが感じられます。ここで読者のみなさんに気にして頂きたいのは、「満州人の支配下に置かれ」とあるフレーズです。 これは清国を意味します。「え、清?だったら、中国なんじゃないの?」と思う方もいるかも知れませんが、モンゴルでは決してそうは言いません。 モンゴル人と話していると「私たちには辛い時代もあったが、中国の支配下になったことは一度もありません!」言います。 「え?清に支配されてたのではないですか?」と言えば「あれは、中国人ではなく、満州人です。確かに満州人には支配されていました。」と素直に認めます。 モンゴル人にとって満州人とは、先祖は同じ騎馬民族であり、根本的に農耕民族の漢民族とは違うのです。 騎馬民族同士であれば、遠い昔から、領地を取った取られたはあったことなので、「基本的には先祖が同じ民族」と受け止められ、屈辱感はあまりないのです。 声明はさらに続きます。 (続く) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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お早うございます。
「誇り高い人達」。やっぱりそうなのね、と納得しました。 私の場合わずかな滞在経験ですが、 どんな暮らし方をしていようと卑屈な感じはなかったですし。 過去の経緯を盾に強請りたかり恫喝の外交をしてくる国ではないし・・・ 私は不思議な魅力を感じています。 先生のブログ、本当に面白くて読み応えあります。 私なんかにも分かるように書いてくださってるので本にされたら買います(^^) (2019.08.14 07:37:57)
じょんたのおばあちゃんさん、ありがとうございます。
そうですね、日本人の多くは「モンゴル人はプライド高いね」と言います。彼らは別に威張っているわけではないのですが、遊牧民としての誇りがあるのでしょうね。なので、どこかの東アジアの国とは違って、過去へのイチャモンはほとんどありません。 本?そういう話もないことはないですが、そもそも「モンゴルに興味を持つ日本人って何人いるの?」という話になってしまいますね。中国やベトナムのことなら、興味を持つ人はたくさんいるでしょうけど。 (2019.08.14 08:59:51) |