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カテゴリ:新宿区
かねてから呑みに行きたかったというようなことを毎度毎度枕詞にしてしまうのに我ながらうんざりしてしまうのですが,読んでいただいている皆様にとってはなおのことマンネリなのは承知していてもつい言ってしまうのでした。それ位,随分前から来よう来ようと思っていたお店なのでした。立地が悪いわけではない,なんといっても代々木駅からせいぜい徒歩3分ほどであります。代々木が嫌い,というのはまあ大袈裟にしてもけして好きな町ではないことは確かです。それでも折に触れ訪れている町です。つい先だって,「代々木ミルクホール」と「馬鹿牛」をハシゴしたばかりですし,「珈琲専門店 ロード」,「珈琲の店 ぴいぷる」の素敵な喫茶店のハシゴもしました。何より,目指すお店の目と鼻の先にある「珈琲専門店 TOM」は気に入って何度も通っているほどでした。鼻先によさそうな居酒屋をぶら下げられながらもお邪魔せずにいたのは値段の表記がないからといったうわさに聞く特異な事情があったからばかりではなく,単にぼくの怠慢さが起因するところなのでありました。
代々木のことをそれなりに御存じで,居酒屋を夜な夜な訪れるような方であれば「東ぎく」のことはきっとご存じなのではないでしょうか。この晩,同伴したのはT氏で,代々木はいやいやとむずかるのを何とか引きずり出したのでした。ここであっさりと前言を撤回するのではお叱りを受けてしまいそうなものですが,やはり値段がわからんというのは独りではちょっと不安なものです。T氏は店さえ渋ければそれでそこそこの満足感を得られることもあり,自信をもって連行したわけですが,どうも実際に店を目の前にしても気乗りのしない表情を浮かべています。ビル自体が新しいので,その1階の店子もまた歴史が感じられないようなのでした。確かに店にいくら歴史があっても建物に年季がないようでは物足りないと感じてもいたしかたありません。ぼくにはビルの様式も現在では見られなくなったものであるし,文字のかすれた看板や入口に切妻屋根風の軒が突き出ていたり,縁起の良い八角形の窓があったりして興味深く思えるのですが。ところが店に入ると互いの印象は逆転,ぼくには店内は案外凡庸に思われたのに対し,T氏はどこがいいかは判然とはせぬものの気に入ったようです。お喋り好きな女将さんに乗せられるままおでんなどを注文します。やはり短冊品書きには価格の記載がありません。われわれ2名と女将さんだけの店内はひっそり静まり返っていて,この経験がこの店の雰囲気のスタンダードになりそうです。肴の味は特筆すべきものではありませんでした。通常の居酒屋より3割増し程度の見当で脳内にてソロバンを弾いていたのですが,それをちょっと上回っていました。勘定を済ませる際,この店が1964年創業であることを伺いました。軒先には毎朝,大量の鳩の糞が地面に散乱していて始末が大変なのだそうです。 南新宿駅方面に進みます。新しいしゃれた雰囲気の気取ったお店ばかりがある中,やがて黄色いテント庇に黒字の看板を掲げたちょっとだけ渋い居酒屋があったので,お邪魔することにしました。黄色い看板と言えば「酒蔵 駒忠」がすぐに連想されます。今でも京橋やら秋葉原,御茶ノ水なんかに店がありますが,近頃めったに行かなくなりました。かつては好きでもなんでもないにも関わらず,居酒屋チェーンが今のような明るくて健全な雰囲気ではなかった当時の重苦しさを現在にも留めているのが逆説的ですが魅力となっています。どの店舗も繁華街から随分外れた裏通りにポッとある辺りは「養老乃瀧」と通じるところがあって魅力です。「養老乃瀧」の赤地に黒字の看板というのも思いがけない地方都市の外れで突如遭遇する「大吉」系列同様,看板装飾の一典型です。ともあれ,そんな古臭さが郷愁を掻き立ててくれたのでしょうか,黄色の看板につられて入ったのが「おつかれちゃん」です。店主夫婦のとりわけ奥さんが元気すぎて興ざめしたところがありますが,まずはごくごく普通のありふれた居酒屋さんだったので安心したのでした。ちなみにこちらのトイレは店を出てぐるっと回り込んだビルの中にあるので,財布の中身がさびしい際にはお出かけにならないことをお勧めします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2014/02/27 08:36:16 AM
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