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カテゴリ:葛飾区
全国の酒場好き垂涎の町,堀切菖蒲園にまたもややって来たのでした。これといった目当てがなくても目に付いた酒場に適当に飛び込めば,大外れも少なく最低限,この店以外にはないという個性的な呑みを堪能―とまではいかずとも十分味わえる―のがこの町の魅力です。さて,今晩はどんな酒場と出会えるのやら,いやがうえにも興奮で足取りは軽くなります。そこまでの興奮もなく後からはいつものS氏がじれったいほどにのんびりと付いてくるのでした。
最初の一軒は「染谷酒店」です。ご想像通りの角打ちであります。あららこれまでこの有名店に来たことなかったのと思われる方も多いかもしれません。時折,メディアなどでも紹介されているのでご存知だったでしょうか。ぼくも以前一度訪れていたはずですが,記憶は定かではありません。確か卓球台のある角打ちだったかと思いますが,それもはっきりしません。物珍しいはずの卓球台さえまるで記憶にないというのはなんとも解せないことです。ところで,この酒店の場所がどうも記憶と違って感じられます。車道に面した店だったと思いますし,店内も見通せないもっとボロッとした店だったように記憶しているのです。レジ台の並びにチューハイやらビールの並ぶ冷蔵庫があり,先客が並んでいます。商品を取ると一旦店を出てから再入店,大きなテーブルが店を分断しているのでした。このでかいテーブルが卓球台なのでしょうか,店内も狭苦しいのでここで卓球をするのはちょっと厳しそうです。S氏とは必然的に横並びになって常連たちを眺めながらの呑みとなります。女教師風に教壇ならぬレジ台に控えるご店主は柔和な笑顔で黙然と呑むわれわれを見つめていたのでした。 京成線の線路沿いの通りにまったく存在すら気づかずにいた「食堂 一八」を見出してしまいました。間口が一軒ほどで若干入口扉が道から下がっているのもありますが,普通であれば見逃すこともなさそうです。素通りしてしまった何よりの原因はガラス越しに漏れる光の暗さのせいであったようです。地元のくたびれた爺さん,婆さんばかりが狭い店内にびっしりと入っているのではなかろうか,その連中から一斉に視線の集中砲火を浴びるのではなかろうかという予感が去来して,いくらかの緊張感をもって店に入ったわけですが,案の定,予感どおりの洗礼を浴びる羽目になったのでした,10席ほどのカウンターにいる老人たちの遠慮会釈のない視線はすぐに引っ込んだのですが,2人掛け2卓のえらく腰高のある小上りに独り佇む爺さんの目線は鋭いままです。女将さんはこの面々にあってはとりわけ若く感じられます。こちらのボール(酎ハイ)は梅エキスの下町風ではなくてレモンの風味が利いたさっぱりとした酸味が利いていてなかなかのおいしさ。サービスのお通しであるシャケほぐしをいただきながら乾杯したのでした。ニラ玉や玉ネギ肉炒めといった素朴な肴もボールにぴったりでいい感じ。店を出る際には,婆さんたちがいい男ねえ,また来てねえと日頃言われたこともない台詞を投げかけられ,その視線には好色な気配が漂っていたのでした。 久しぶりに「哈爾濱餃子(ハルビン餃子)」をお土産に持ち帰ることを思い立ち,店に足を向けます。6席ばかりの客席は珍しく空っぽなのでせっかくなので1杯引っ掛けて帰ることにしました。ご夫婦はご健勝そうで何よりのこと。久しぶりに食べたハルピン風の餃子は,行ったことはないけれどまさに現地そのものの味であろうと思われるもので,以前食べた時に感じた卒倒しそうなほどの旨さという訳ではなかったものの,肉や野菜のジュースがほとばしるようないくつでも食べていたくなるような飽きのこない味だったのでした。もちろんお土産も3人前ほど買い込んでしまったのでした。そういえば10年ほど前に池袋の三業地の路地にもハルピン餃子のお店があり,ここはそれこそ絶品でかつ1人前100円程度で食べれたのですが,店主はいつの間にやら帰郷してしまわれたことをふと思い出したのでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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