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カテゴリ:まんが・小説・テレビなど
マンガなんだから酒場にせよ喫茶店にせよ、もっと大胆で奇想を巡らせた描写が見られるものと期待していましたが、多くのマンガ家たちの描くそうして店舗は、案外現にどこかにありそうなリアルっぽい描写が多くて、マンガでしか表現できそうもないような描写に出逢うことは極めて稀であることが分かってきました。そんなマンガにおける酒場や喫茶店描写において、諸星氏の場合はリアルとワンダーを自在に描き分けていて飽きることがありません。そこにはイマジネーションの特異さと、けして端正というわけでもないにも関わらずつい見入ってしまうその描線なりの個性的な技術が融合しているからなしえるもののようです。いずれかに秀でている者はそれなりに存在するかもしれないけど、両者を兼ね備えたマンガ家は稀有なのかもしれません。
『コンプレックス・シティ/諸星大二郎傑作集』(双葉社, 1980) 「人をくった物語」、「むかし死んだ男」 『瓜子姫の夜・シンデレラの朝 電子書籍版』(朝日新聞出版, 2013) 「竹青」 『碁娘伝』(潮出版社, 2001) 『子供の王国 諸星大二郎珠玉短編集』(集英社, 1984) 「子供の王国」、「食事の時間」 『西遊妖猿伝 第4巻』(潮出版社, 1998) 『西遊妖猿伝 第11巻』(潮出版社, 1999) 『西遊妖猿伝 西域篇 第3巻』(講談社, 2011) 『地獄の戦士』(集英社, 1981) 「復讐クラブ」 『天孫降臨』(集英社, 1993) 「天孫降臨」 『夢みる機械』(集英社, 1993) 「地下鉄を降りて」 『無面目・太公望伝』(潮出版社, 1989) デビュー時から一貫して、計算されたような狂ったデッサンだったり、不可解な読み取りにくい表情のキャラクターだったり、手書きの綿密に書き込まれた背景だったりが完成されているかに見えて、その実、どこかの時点でさらなる驚くべき変貌を遂げるのではなかろうかという期待を抱かせつつも、その実、少しもぶれないという安心感にも氏が支持される所以があるのではないかと思うのです。氏の作品は思い出したかのように新作が発行されてみたり、過去の作品が復刻されてみたりと必ずしも系統的に読んでこなかった怠慢な読者たるぼくには、デビュー以来変化などという事象とは無縁のままに淡々と執筆活動を継続しているように思われ、そこにこそ驚愕を感じるんのでありました。
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Last updated
2020/12/20 08:30:06 AM
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