場末っぽい町で呑むのが年齢とともに益々好きになっています。好きになっているというよりは、非常に落ち着くといった方が適当でしょうか。繁華街の雑踏の穴場の目立たない酒場ってのも魅力ではありますが、そこに至るまでの雑踏を思うと二の足を踏んでしまうのでした。だからハナから場末っぽい町であれば人混みに辟易するまでもなく目的の酒場へと至れるから、どうしてもそうした町を目当てに向かうことになります。ネット上では、酒場巡りをテーマ(テーマなんていうとさも崇高なことについて語らねばならないようで気が引けるのですが、どうも適当な言葉が浮かんできません。話題という語が少しは近いかな)に据えた記事(記事ってのも新聞記者かお前はと突っ込まれそうな高邁な言い方に思えてその使用を躊躇ってしまいます。といって雑感なんてのも作家ぽくてカッコつけすぎかな)では、町と酒場との結び付きについてあまり配慮していない内容が多いように思えます。一部、陸の孤島(という呼び方をぼくは非常に嫌悪しているのですが)へ至る道中をやけに大袈裟に描写してみせるものなども合ったりする訳ですが、それは町と酒場の関係を見つめようという気持ちとはかけ離れた内容であることが多いようです。むしろいくつかある酒場巡り番組の日中の散歩だったりに可能性を見出せるように思えるのです。片っぽは自身の趣味的欲求を満たすため、一方は単なる尺稼ぎのためにも思えますが、まあ酒場のみひたすら撮影した番組作りよりは好意的な印象を抱かせてくれます。となると今回訪れた北松戸が場末っぽい町かってことになりそうですが、ぼくにとっては北松戸はちっとも場末っぽい町ではなくて、単に工場団地と競輪場と住宅街を従えただけの発展し損なった残念な町でしかないのです。
そんな残念な町にもしっかり町に根付いた酒場があります。チェーン系の酒場はこの町にも数軒はあるけれど、独立した個人店でそこそこのオオバコとして確固たる存在となっている「た古八」は、大いに気に入っているとまではいかずとも好感が持ててたまには訪れたくなる酒場なのです。ぼくは大概のそこそこ通っている酒場に決まって頼む肴があります。ここでもそれは同じことで、大概決まったばかりの肴を頼んでしまうのです。ここだとネギちくわ、マカロニサラダはその日の200円のサービス品になっていたらまず間違いなく頼むし、この店の一番人気の品らしい焼鳥4種盛合せもほぼ3回に2回程度の割合で頼んでしまうのです。呑みも終盤になってもう1杯、いや2杯ってタイミングになるとフレンチポテトはほとんどマストオーダー品となっています。それは酒の種類が変わったとて揺るがないのです。熱燗の松竹梅豪快にフレンチポテトはおかしいと言われようともそこは曲げられないし、今回のように初オーダーの鶏の唐揚げを食べた後であってもきっちり頼んでしまうのです。特段、この店でしか食べられない品ではないのだからさぞ好きなんだろうねって思われたら、そうではないと声を高くして言いたい。単なるコスパを考慮しただけのことなのです。以前頼んで失敗したなと思ったものは二度と頼まない。今となってはその失敗が冷静な判断に基づいた結果であるとは判じかねるけれど、そう思いこんでしまったら頑ななのです。ならばその他数ある注文をしたことのない品々はどうなのだ。そうした未経験の品で頼まないのは単なる先入観でしかないのです。だから他人と訪れるとこちらがまず頼まない品を頼んでしまって、勝手なことをするんじゃないと思ったりするけれど、それが実は当たりッてなこともあったりして、だから日増しに狭くなる視野を広げるためにも他者との交流はやっぱり必要なんだなあ。