14.アーリア人の侵入でできたカースト制度【世界史】 Text:鈴木 旭
カースト=異民族間の婚姻・同居禁止は風土感染症予防策だった?
前15世紀頃、インドに侵入したアーリア人はインダス川流域のパンジャーブ地方に定住した後、更に前11世紀にはガンジス川流域に進出する。この間、自然神への讃歌(リグ)を集めた最古の聖典で、古代インドの姿を伝えているという『リグ・ヴェーダ』が成立している。
ところで、ガンジス川流域に定着すると、牧畜民であったアーリア人が農業生活を始める。鉄製農具と牛を使った農作業の普及が生産性を飛躍的に伸ばしたためで、その結果、階層分化が急速に進み、新たな社会の仕組みが必要になった。それが「カースト制度」になる。
インドに特有の身分制度で、生まれを意味するヴァルナと職業集団を表すジャーテイからなる。ヴァルナはバラモン(バラモン教の司祭)が一番上にいる。次がクシャトリヤ(武士又は貴族)、ヴァイシャ(農耕牧畜民、手工業者などの生産者)で、最下位にシュードラ(隷属民)がいた。
以上がインド侵入時から徐々に形作られてきた身分制度であるが、ガンジス川流域に進出後、さまざまな職業集団に遭遇する度に再編成を余儀なくされたため、世襲の職業集団ジャーテイに分かれて所属するようになった。ヴァルナか、ジャーテイか、いずれかに属し、通婚禁止などの他、生活の細部まで規制されたのである。
ところで、このヴァルナとジャーテイから成る身分制度をカースト制度と呼ぶが、これはポルトガル人が初めて遭遇したとき、自国語で血統を意味する「カスト」を用い、「カースト制度」と呼んだのが始まりで、アーリア人の用語ではない。
また、現代では経済的、政治的階層を反映せず、貧しいバラモンや豊かなシュードラもいる。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界史』
著:鈴木 旭 日本文芸社刊