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2021年12月24日
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カテゴリ:エッセー

和歌山毒カレー事件とその真相-その1-
(犯罪の証拠とされた砒素鑑定の成否を検証する資料集)
Wakayama Poison Curry Incident and its Truth
和歌山毒カレー事件とその真相(資料集)

(タイトル)
和歌山毒カレー事件とその真相(犯罪の証拠とされた砒素鑑定の成否を検証する資料集)-その1-
(本文)

月例卓話 和歌山カレーヒ素鑑定の問題点 河合潤pdfファイル(京都大学大学院工学研究科材料工学専攻教授 第 287 回京都化学者クラブ例会(平成 26 年 5 月 10 日)講演)

 以下はpdfファイルをテキストファイルに変換して掲載しました。「和歌山カレーヒ素鑑定の問題点 河合潤」は、被告がヒ素をカレー鍋に殺意を持って投入した証拠とされた被告宅にあった亜ヒ酸とカレーライスを振舞う地域の夏祭り会場のゴミ袋に捨ててあった紙コップに付着されていたとされる亜ヒ酸が同一の製造履歴とされた中井泉氏による検察からの委託鑑定に証拠能力がないことを論証しております。図表と文章における記号や改行など正確を期する場合には以下の「和歌山カレーヒ素鑑定の問題点 河合潤」(pdfファイル)を原資料としてください。「和歌山カレーヒ素鑑定の問題点 河合潤」は和歌山毒カレー事件が物証と自白のない、あやふやな状況証拠によって裁いたことを概括しております。(計量計測データバンク 編集部)

月例卓話 歌山カレーヒ素鑑定の問題点 河合潤(京都大学大学院工学研究科材料工学専攻教授 第 287 回京都化学者クラブ例会(平成 26 年 5 月 10 日)講演)
https://www.oceanochemistry.org/publications/TRIOC/PDF/trioc_2014_27_113.pdf

1.和歌山カレーヒ素事件

 私はここ数年間,和歌山カレーヒ素事件のSPring-8(スプリング・エイトと読み,兵庫県西播磨にある大型シンクロトロン放射光施設を指す固有名詞)による鑑定の問題点を指摘してきた 1, 2).カレーヒ素事件は,1998 年の和歌山市の住宅街の夏祭りで,紙コップ(写真 1)でカレーにヒ素が入れられ,4 名の死者を含む 67名の被害者を出した殺人・殺人未遂事件である.紙コップはカレー鍋近くのゴミ袋に捨てられていた唯一の物証である.白アリ駆除業者の妻で保険外交員の林真須美が犯人として逮捕され,SPring-8 の超微量分析によって犯人と断定された.和歌山地裁(2002 年),大阪高裁(2005 年)で有罪となり,2009 年に最高裁で上告棄却となり死刑が確定した.


写真 1 紙コップ(証拠 7).As75%,As2O3 換算で 99% の亜ヒ酸粉末が約 35mg 内面に付着していた


写真 2 旧宅のガレージに放置されていたミルク缶とその内容物(As49%)の粉末(証拠 5).透明袋に移された亜ヒ酸粉末,さらに小瓶に分取された亜ヒ酸粉末が写っている.


写真 3 新宅台所プラスチック容器(証拠 6).


2.最高裁の上告棄却理由

 最高裁の上告棄却理由 3)は,「①上記カレーに混入されたものと組成上の特徴を同じくする亜砒酸が,被告人の自宅等から発見されていること,②被告人の頭髪からも高濃度の砒素が検出されており,その付着状況から被告人が亜砒酸等を取り扱っていたと推認できること,③上記夏祭り当日,被告人のみが上記カレーの入った鍋に亜砒酸をひそかに混入する機会を有しており,その際,被告人が調理済みのカレーの入った鍋のふたを開けるなどの不審な挙動をしていたことも目撃されていることなどを総合することによって,合理的な疑いを差し挟む余地のない程度に証明されていると認められる」というものである.

 自白なし・状況証拠のみで死刑が確定したため法学上も議論がある 4).上記の①~③の理由のうち①と②が東京理科大学教授 中井泉鑑定人(検察の要請で起訴前鑑定を行ったので,厳密には「鑑定受託者」と呼ばなければならないとコメントした分析化学研究者もいた)によるシンクロトロン放射光蛍光 X線分析である.私は,①の分析に重大な間違いがあったことをこの 2~3 年指摘してきたが 5-9),新たに②についても鑑定の問題点が発覚した 10).

 「高濃度の砒素」は間違いである.今までに見つかった林真須美死刑囚の頭髪の亜ヒ酸は,0.1 ナノグラムのヒ素が 1 か所に濃集した頭髪が 1 本だけ見つかっているだけである.ビームタイム使用記録を鑑定書の日付と突き合わせると,約百時間のシンクロトロンビームタイムを4 回以上使って亜ヒ酸が付着した第 2 の頭髪を探した形跡があるが,ついに発見できなかったと思われる.鑑定書には第 2,第 3 の頭髪の結果の鑑定結果の報告はない.0.1 ナノグラムの亜ヒ酸粒子はタバコの煙の 1 粒と同じ大きさである.これが 1 本の頭髪の 1 か所に,間接的な方法で付着しているらしいことがわかったことをもって「高濃度の砒素」というのは間違いである.

3.SPring-8 の実験

 1997 年末に西播磨で稼働を始めた大型シンクロトロン放射光施設 SPring-8 が翌年末にカレー事件の鑑定で使われ,100μm 径の亜ヒ酸微粒子 1 粒に含まれる数 ppm ~数百 ppm のBa,Sn,Sb,Bi,Mo などの微量不純物元素を検出し,「組成上の特徴を同じくする亜砒酸」によって犯人が特定できたとされている.直径100μm の亜ヒ酸粒子は 2μg であるから,その1ppm は 2pg,つまり〜10-12g である.1W の X線管を用いた全反射蛍光 X 線分析の検出下限が〜 pg であり同程度である.後述するように精密すぎるハカリは何の役にも立たない.しかし裁判ではそういう超微量成分の測定ばかりが取り上げられ,本稿で問題にする主成分のヒ素濃度の矛盾点には,私以外,いまだかつてだれも着目した人はいなかった.主成分が一致するか否かは,まず最初にチェックすべきことであり,SPring-8 の分析は,分析化学の基本を忘れた分析であった.

 SPring-8 は,建設に 1,000 億円をかけた加速器施設である.円周 1.5km の超高真空パイプ内を電子が光速度に近い相対論的速度で周回し強力な磁気制動放射 X 線を発生する.カレーヒ素事件の鑑定のための分析費用(電気代を含めた SPring-8 使用料,実験機材,実験および公判で証言するための旅費,鑑定謝礼など)として税金から少なくとも 1 回,1,500 万円支払われたことがわかっている.このような鑑定は2 回行われた.SPring-8 を鑑定に使うという提案は,中井泉鑑定人の提案である.16 年前の当時は SIMS(2 次イオン質量分析)や SEMEDX(走査電子顕微鏡・エネルギー分散 X 線分析)などが半導体工業用に高度に発達しており,これらの分析法を用いる方が適切であった.

4.科学警察研究所(科警研)の ICP-AES 分析

表 1 丸茂鑑定による 7 種の証拠亜ヒ酸中の微量成分(Na, Mg, Al, P, Ca, Cr, Mn, Fe, Ni, Zn, Se, Sn, Pb, Bi, Ba)濃度(ppm)と主成分 As 濃度(%)とデンプン(IR およびヨウ素デンプン反応)
証拠亜ヒ酸 Na Mg Al P Ca Cr Mn Fe Ni Zn Se Sn Sb Pb Bi As (%) デ Ba
1 M 緑色ドラム缶 35 6 0 5 3 0 1 36 2 203 99±19 23±3 27±1 198±4 57±6 77.0±3.4 無 無
2 M ミルク缶 32 5 0 5 6 0 1 28 2 201 96±24 23±2 27±1 195±3 55±3 77.6±4.0 無 無
3 M 白色缶(重) 59 105 308 85 3965 2 17 303 2 178 104±13 24±6 28±7 175±8 62±2 68.6±2.2 有 2
4 茶色プラスチック 70 49 170 86 147 4 15 861 4 205 96±2 20±2 23±2 166±3 49±1 65.7±1.6 無 21
5 旧宅ミルク缶 87 203 2266 234 >10000 4 7 153 7 124 62±7 14±2 16±2 120 55 48.7±0.8 有 7
6 新宅プラスチック SP8 SP8 SP8 36, 24*
7 紙コップ 393 16 138 7 79 12 3 146 7 297 111 25 23 180 55 74.8 無 5
デ:デンプン.
SP8:SPring-8 で 3 元素のピークにより他の証拠品(1,2,3,4,5,7)と傾向が同じことを確認した(中井鑑定).*2 粒子のそれぞれ個別の Ba 濃度.

 科警研の丸茂ら 11)は,紙コップに付着した「その全量(29.1mg)を 0.5mL の濃硝酸を加え,加熱分解し,さらに超純水0.5mLを加え,5 分間加温攪拌した後,0.5mL の濃塩酸を加えた.溶液を濾過し,不溶物を除去した濾液を超純水を用いて,2.9mL とし,分析用溶液とした.」このとき紙コップから採取した亜ヒ酸の一部は,IR(赤外),SEM-EDX,ヨウ素デンプン反応等に消費した.

 紙コップ以外の亜ヒ酸の「粉末については250mg を精秤し,2.5mL の濃硝酸を加え,加熱溶解し,さらに超純水 2.5mL を加え,5 分間加温攪拌した後,0.5mL の濃塩酸を加えた.」ろ過後,超純水を用いて 25mL とし,科警研ではセイコーインスツルメンツ SPS-1700HVR 型ICP-AES で分析した.ミルク缶などから内容物全量を透明袋(写真 2)へ移し,さらにそれを透明小瓶(写真 2)へと和歌山科捜研で分取して東京の科警研へ運んだ.科警研では,その透明小瓶の異なる場所から5回繰り返し250mg ずつサンプリングし,サンプリングごとに酸溶解し ICP-AES 分析を繰り返し,5 回の測定から得られた平均濃度と標準偏差を算出した.標準偏差計算の際には n=5 で割らずn−1 で割って正しく計算してあることは科警研に確認した.このような分析で得られた分析値を表 1 に示す.和歌山科捜研で透明小瓶に分取する際に,基本にのっとってサンプリングしたか否かは不明である.

 林家新宅台所プラスチック容器(証拠 6)はプラスチック容器に付着した微粒子だったのでICP-AES 分析は行われなかった.表 1 のヨウ素デンプン反応の結果は,後の二宮鑑定 12)と谷口・早川鑑定 13)の IR 分析結果とを比較し,丸茂鑑定書のミスプリと思われる点を丸茂氏に確認の上,修正して示してある.

表 1 を詳細に調べてわかること,他の鑑定書と突き合わせてわかることは以下のように列挙できる.

(1)証拠 1 と 2 は純粋の亜ヒ酸で,ppm レベルの微量元素を含んでいる.Ba は含まれていない.
(2)証拠 3~7 は Ba を含んでいる.
(3)証拠 3 と 5 は Ca 濃度が高く,セメントが混ぜられていたと考えられる.Ba は酸に可溶なので Ca 化合物(例えばセメント)の不純物と考えられる.
(4)証拠 4 は Ca が少なく,SEM-EDX で Siが多いことがわかっている.酸に不溶成分中に Ba が含まれていたことから,Baを含有する SiO2(例えば砂)が混合された亜ヒ酸であったと思われる.砂にBa が含まれることはそれほど珍しい事ではない
(5)証拠 1~7 は SPring-8 によって Sb,Sn,BiのKα 線の相対強度比がほぼ同じで,Mo も含んでいたため,中井鑑定では,「いずれもモリブデン,アンチモン,錫及びビスマスという 4 つの重元素不純物を含有していることが判明した.」したがって,これらの亜ヒ酸は「同一物,すなわち,同一の工場が同一の原料を用いて同一の時期に製造した亜ヒ酸である」と結論した.「同一の工場が同一の原料を用いて同一の時期に製造した亜ヒ酸である」とは同一起源であることを意味するが,それを「同一物」と断定したことにより,「組成上の特徴を同じくする亜砒酸」という文言だけが最高裁まで独り歩きした.検察から中井教授への鑑定嘱託内容は「異同識別」であった.デンプンや Si や Ca などの軽元素は SPring-8で検出できなかった.体積の半分近くデンプンが混ざっていても,SPring-8 ではその差異は検出できず,混ざっていない亜ヒ酸と同一物にしか見えない.
(6)ヨウ素デンプン反応と赤外吸収によって,証拠 3 と 5 にはデンプンが混ぜてあったが,証拠 4 と 7 にはデンプンは混ぜられていなかったことがわかっている.
(7)紙コップには 99%亜ヒ酸が入っていたが,Na 濃度(393ppm)が他に比べて有意に
高い.また Ba も含んでいた.Na 濃度が他の証拠亜ヒ酸に比較して高いという事実は,その原因を解明する必要がある.
(8)証拠 6 は微量のため,SPring-8 の Sb,Sn,Bi,Ba と KEK-PF(高エネルギー研フォトンファクトリー)の Mo 検出以外の分析はされていない.科警研はSEM-EDX 分析したが,正八面体結晶形をした粒子 1 個の EDX スペクトルを測定してヒ素を確認しただけで,その近隣の不定形粒子の組成分析はされなかったことは科警研に確認済みである.

5.紙コップによる高純度化

 検察が裁判に提出した「論告」では,林真須美が昔住んでいた旧宅のガレージのミルク缶入り白アリ駆除剤(写真 2)(As49%)を,新宅台所のプラスチック容器(写真 3)に一部移し,それを夏祭りに紙コップ(写真 1)に入れてカレー鍋に投入したという理由により死刑を求刑した.論告には「Ⓔのプラスチック製容器(写真 3)付着の亜砒酸及びⒻの雪印ミルク缶入り亜砒酸(写真 2)からもバリウムが検出されたことから,それらの鑑定結果によって,被告人が T 方(善明寺の被告人方旧宅)ガレージ内の棚上に残しておいたⒻの雪印ミルク缶(写真2)から亜砒酸を取り出し,これを園部の被告人方に持ち込んで,自分が管理していたⒺのプラスチック製容器(写真 3)内に入れて隠し持っていたとする事実が,科学鑑定によって裏付けられたことになるが,さらに,Ⓗの青色紙コップ(写真 1)付着の亜砒酸並びにⒾ及びⒿのカレー中から取り出された各亜砒酸からもバリウムが検出されたとする鑑定結果が加わったことにより,被告人が,犯行現場に近い自宅で隠し持っていたⒺのプラスチック製容器(写真 3)内の亜砒酸をⒽの青色紙コップ(写真 1)に入れて犯行現場に運び,これを東鍋のカレー中に混入した事実も科学鑑定の側面から裏付けられたといえる.すなわち,Ⓕの雪印ミルク缶(写真 2)入り亜砒酸,Ⓔのプラスチック製容器(写真 3)付着の亜砒酸,Ⓗの青色紙コップ(写真 1)付着の亜砒酸,Ⓘ及びⒿの東鍋のカレー中から取り出された亜砒酸が,いずれもバリウムを含有するという科学鑑定によって,1 本の線で結ばれたことになるのである.」と書かれている.

 紙コップ(写真 1)は As75% であるが,旧宅ミルク缶(写真 2)は As49% であり,亜ヒ酸とほぼ同体積のセメントやデンプンが混ざっていた.したがって写真 2 →写真 3 →写真 1 へ亜ヒ酸を移動すると 49% → 75% に高純度化する.したがって検察の論告は間違いである.

 写真 2 では,ミルク缶の内容物が透明袋に入れて分離されている.新宅の台所プラスチック容器(写真 3)は,写真 2 のミルク缶のほぼ 2倍の容積である(写真 2 と写真 3 のモノサシの長さは 40cm).写真 3 のプラスチック容器に粉末を入れるなら,常識的には半分くらいは入れると考えられるので,写真 2 のミルク缶にはほとんど何も残っていないはずであるが,写真2 の透明袋の中身はミルク缶に戻せば 7,8 割以上となるように見える.体積からも検察の論告が間違いであることは明らかである.

表 2 証拠 1~6 の亜ヒ酸を紙コップ(証拠 7)在中の亜ヒ酸の組成にするために必要な操作.
証拠番号 証拠亜ヒ酸 紙コップの亜ヒ酸とはなり得ない理由
1 M 緑色ドラム缶 Ba を含む砂かセメントを 1% 加える.
2 M ミルク缶 同上.
3 M 白色缶(重) デンプン粉を完全に取り除き,セメントを一部だけ残してほとんど取り除く.
4 茶色プラスチック 砂を一部だけ残してほとんど取り除く.
5 旧宅ミルク缶 デンプン粉を完全に取り除き,セメントを一部だけ残してほとんど取り除く.
6 新宅プラスチック 低濃度 As を高純度化する.

6.なぜ重要な主成分濃度が見落とされたか?

  和歌山地裁は判決で,写真 2 のミルク缶中の亜ヒ酸(証拠 5),写真 3 のプラスチック容器(証拠 6),その他 4 点の亜ヒ酸を含めた合計 6 点(証拠 1~証拠 6)の「いずれかの亜砒酸を,本件青色紙コップに入れてガレージに持ち込んだ上,東カレー鍋に混入したという事実が,合理的な疑いを入れる余地がないほど高度の蓋然性を持って認められるのである」と結論した.裁判官は,論告よりも拘束条件をゆるめて 6 点の亜ヒ酸の「いずれか」とぼかした表現をしているが,表 2 に示すように,証拠 1~証拠 6 のどの亜砒酸も紙コップ(証拠 7)の化学成分とはならない.証拠 6 は正確な As 濃度は不明であるが,難解な私の鑑定書 14)を石塚がわかりやすく解説 15)している通り,証拠 6 のヒ素濃度は低い.

 証拠 1 と 2 を紙コップ在中の亜ヒ酸とするためには,砂かセメントを混ぜればよいので比較的簡単であるが,証拠 3~証拠 6 を紙コップ在中の亜ヒ酸と同じ組成にするためには,化学の知識とそれなりの化学実験設備が必要である.

7.雑魚を数えて呑舟の魚を取り逃がす

 100μm 径の微粒子 1 粒の中に含まれる ppmという濃度ばかりに気を取られて,主成分のヒ素が 49%だったのか 75%だったのかという大きな矛盾に誰も気づかなかったのが,和歌山カレーヒ素事件裁判である 9).

 バリウムの分析値は 2ppm や 36ppm であり,検出下限(3.8ppm)ギリギリだったこともあって,そのバラツキは大きい.これに対してヒ素濃度は 49% や 75% であり,ヒ素濃度に矛盾があればその矛盾は極めて重大である.標準偏差σ=0.8%(表 1)の意味も大きい.このようにppm という細部にこだわって全体を見失うことは,SPring-8 のような精密すぎるハカリを用


図 1 I の頭髪中ヒ素濃度を 3mm 刻みで ICP-MS分析した結果 16).


いる場合に注意すべきことである.電子顕微鏡のように 1 個の原子を見ることができる最先端の分析装置で濃度を分析することはできない.ヨウ素デンプン反応,赤外分光,比較的高濃度の Ca や Si のような軽元素分析なども含めた総合的判断を行うべきであった.

8.亜ヒ酸経口摂取者の頭髪の ICP-MS 分析

 科警研鈴木氏ら 16)は保険金詐欺のために亜ヒ酸を経口摂取させられた I 氏の頭髪を 3mm刻みで ICP-MS(誘導結合プラズマ・質量)分析した.毛髪約 80 本を毛根から 3mm ずつ切断し,毛根からの長さが同じ区画を合わせて,硝酸 1mLを加えてマイクロ波加熱分解後10mLに希釈しセイコー電子工業 SPQ8000 でICP-MS 分析を行った.その結果を図 1 に示す.

 ヒ素濃度は頭髪重量基準で最高 11ppm であった.頭髪の長さ方向のヒ素濃度は,経口摂取した特徴を有し,経口摂取した日にちを推定可能と考えられた.頭髪の先端部においてヒ素濃度は高く,経口摂取した場合には指数関数的に毛根部に向かって As 濃度が減少する.実はこれは正しくない.経口摂取した場合,頭髪中にヒ素がすぐに排出された後,排出が一旦極小となり,再び排出量が増加するという二山構造の濃度分布となる 17).

9.林真須美頭髪の KEK-PF での線分析

 山内鑑定書 18)は平成 10 年 12 月 16 日に東京理科大学 中井泉教授が高エネルギー研フォトンファクトリー(KEK-PF)で林真須美の頭髪を 4mm 刻みで蛍光 X 線により線分析した結果(図 2 左),および,聖マリアンナ医科大学 山内博助教授(当時)が頭髪を水酸化ナトリウム水溶液に溶解して「超低温捕集-還元気化-原子吸光」法で定量した結果(表 3)からなる.「頭髪は約 50mg を耐熱性のプラスチック試験管に取り,これに 2N -水酸化ナトリウム溶液 2mLを加え,100℃で 3 時間加熱分解し,測定試料とした」.山内鑑定を 3 価,5 価,有機 As に分類し,有効数字を勘案して表3 に示した.50mg の頭髪は約 50 本で,頭部 4 か所の最高ヒ素濃度は 160ppb であった.このうち海産物等の日常的な摂取によるバックグラウンドが70ppb で,外部付着と考えられる 3 価ヒ素は90ppb であった(表 3).中井鑑定書 19)は山内鑑定 18)で測定した頭髪と同一の林真須美頭髪(一本)を,より短い間隔の 1mm 刻みでヒ素蛍光 X 線測定した結果である(図 2 右).対照資料として中井教授自身の頭髪に亜ヒ酸を指で付着させて約 1 か月通常生活を送り,切断した頭髪のヒ素蛍光 X 線測定を行った結果(図 3)と比較した.中井鑑定書ではヒ素濃度を算出していないため正確な濃度は不明である.頭髪中の平均的な硫黄濃度を5%として20),KEK-PFビームラインBL-4Aで長年使われてきた物理基礎定数(ファンダメンタル・パラメータ)から,13keV入射X線に対するヒ素と硫黄の質量吸収係数・蛍光収率等をもとに鑑定書のスペクトル(図 4右)から中井頭髪のヒ素濃度を算出したところ,~0.1%となった.上述した 3名の頭髪のヒ素濃度は,林真須美(~100ppb)<I 氏(~10ppm)<中井泉(~0.1%).(1)となる.桁数が 4 桁違うヒ素濃度を故意に比較して結論を導いていることになる.林と中井教授の頭髪の線分析結果をピークで規格化するのではなく,式(1)に従って共通の強度でプロットすれば図 3 のように,林頭髪の線分析のピークは,横軸の線の太さに入るほど低いピークとなる.


図 2 (左)山内鑑定 18)の林頭髪のヒ素濃度(4mm 刻み)プロット,(右)左と同一の頭髪を中井鑑定 19)で 1mm 刻みで再測定した結果.左右の実験で測定した頭髪は別の頭髪であるという説もあるが,その場合,切断部から同一の距離にヒ素が検出されたので,経口摂取の可能性が高い.


3 林真須美頭髪 As の原子吸光分析結果.
測定部位 * 5 価無機ヒ素 3 価無機ヒ素 DMA 総ヒ素
左前頭部 90ppb  0ppb 30ppb 120ppb
右前頭部 30 90 40 160
右後頭部 30  0 30  60
左後頭部 40  0 30  70
正常値 60  0 20  80
* 表の縦の順は左→右→右→左と頭頂部から見て右回転順に表示されている.
DMA:ジメチル化ヒ素.

10.外部付着か経口摂取か


図 3 中井頭髪グラフの横軸の線の太さに入るほど林頭髪のヒ素濃度は低かったことを模式的に示す図.実際には左のグラフ中の長方形の縦の高さは,横軸の線の太さに比べてもはるかに低


図 4 KEK-PF BL-4A で(左)1998 年 12 月に測定した林頭髪 1 本のスペクトルと(右)1999 年 5月に測定した中井頭髪 1 本のスペクトル 19).


 山内鑑定書によると,林頭髪のヒ素濃度は,表 3 に示したように,60〜160ppb であり,一般人の正常値は 80ppb なので,林のヒ素濃度は正常値と大差ない.右側前頭部頭髪に 3 価As が出ていることが外部付着の根拠である.

 しかし 1980 年の論文 21)では,外部付着の可能性がないコントロールの頭髪からも有意な量の3 価 As が検出されており,裁判ではこの論文には触れられなかった.

 地裁判決(pp.395-396)では,「毛髪から検出された砒素が,体内に摂取された砒素が毛髪内に残留しているもの(以下,『体内性の砒素』という)なのか,あるいは毛髪の外部に付着しているものなのかについては,一般人の毛髪からは無機砒素やジメチル化砒素(DMA)は検出されるが,無機の 3 価砒素は検出されないと
いう砒素の形態からの判別が可能であり,また,体内性の砒素は,どの部位の毛髪を分析しても,全体的に計測されるのに対し,外部付着の砒素は,付着部位に特異的に砒素が計測される.さらに,1 本の毛髪で見た場合には,体内性の砒素の場合はなだらかなピークとなるが,外部付着の場合は付着部位だけのシャープなピークとなる」と,外部付着と体内性のヒ素の区別が可能であることを述べている.このような比較が合理的な意味を持つのは,ヒ素の濃度と絶対量が同程度の場合である.100 倍,10,000 倍ヒ素濃度が異なる頭髪の比較による外部付着の結論は間違いである可能性が高い.

 山内助教授は,ヒ素の外部付着を示す最も重要な証言として「髪の毛の部分に外部汚染した場合は,外部汚染した場所にのみ砒素が検出されます.それに対しまして体内性の砒素中毒の患者さんですね,急性の砒素中毒の患者さんですけども,その場合は,和歌山の 63 人の人たちの検査を私は全部しておりますけれども,そうしますと,必ず一過性の一つのピークの山が出ることは決してございません.必ずなだらかなピークが出てまいります.急性の砒素中毒の方ですと,体内に入って数日後からヒ素が毛髪に移行しだします.

 そうしますと,毛髪のヒ素濃度は上昇します.上昇した後,体からヒ素が抜けますと,今度は減衰をしていきます.そうしますと,ピークは当然なだらかなピークをしていきます.それに対してこのようなシャープなピークが一本だけ出た場合には,これは外部付着と考えるべきだと思います.」(37 回公判速記録 p.83)と証言している.

 しかしながら,和歌山ヒ素事件被害者の生存者 63 人全員の頭髪の毛根から先端にかけてのヒ素濃度の蛍光 X 線による線分析(上記下線部の実験)はなされておらず,4 名だけ(内 2名は胎児としてヒ素に被曝)しか測定されていない.2001 年厚労省科研費報告 17)では「従来の砒素の分析法においては,一本の毛髪を用いて毛髪中砒素を外部付着砒素と内部砒素とを区別することは不可能なことであった.この研究において,それらの問題に対して可能性が示された」とあり,頭髪の線分析だけでは,外部付着か経口摂取かの区別は不可能で,厚労省科研費で新たに行った断面マッピングによって初めて外部付着か経口摂取かの判断が可能になったことを報告している.

11.スペクトルの疑問点

 中井鑑定 19)の林頭髪(図 4 左)と亜ヒ酸を故意に塗りつけた中井教授自身の頭髪の蛍光 X線スペクトル(図 4 右)との差異は大きい.いずれも 1 本の頭髪を同一のビームライン(KEKPF BL-4A)で,それぞれ 1998 年 12 月 16 日(図4 左)と 1999 年 5 月 17 日(図 4 右)に測定したものである.この 2 つのスペクトルの違いは合理的な説明ができない.図 4 左のバックグラウンドは大まかに 100 カウント,図 4 右は 10カウントのオーダである.空気中のアルゴンが検出されるはずであるが図 4 左は 2.9keVに小さなショルダーしか観測できない.また図 4 左は縦軸が大きく拡大されており,3〜5 keV 付近に帰属不明の強大なピークが存在する.図 4右の縦軸を拡大してもこのようにはならない.

 図 4 左には硫黄ピークが見られない.図 4 右には 2.3keV に明確な硫黄のピークがある.上述したように個人差はあるが頭髪中には約 5%の硫黄が含まれている.アルゴンは空気中に0.9 体積 % 含まれているので,空気中で蛍光 X線スペクトルを測定するとアルゴンが観測できる.

 両者とも 1 本の頭髪を分析しているので,同一の実験条件ならバックグラウンド強度は同一となるはずである.図 4 左は大気中で試料と検出器の距離を図 4 右より相当に離して測り,かつ図 4 左だけ検出器前に X 線フィルターを入れて硫黄とアルゴンの X 線を減衰させて測定した可能性もあるが,3〜5keV 付近のピークは説明が不可能である.図 4 左と図 4 右とは同一の測定条件ではなく,大きく異なる実験条件で測定されている.

 何よりも不思議な点は,中井頭髪のX線スペクトル(図 4 右)を測定した 1999 年 5 月17日にも林頭髪のX線スペクトルを測定したはずであるにもかかわらず,中井鑑定書にはわざわざ 1998 年 12 月 16 日測定のX線スペクトル(図 4 左)を掲載している点である.5 月 17 日の測定では林頭髪のX線スペクトル測定ができなかった可能性がある.

12.ヒ素が検出できなかった頭髪のデータはどうなったか?

 林頭髪中のヒ素は SPring-8 では検出できなかった.「いや,それは実際に測定してみまして,砒素すら検出できなかったので,残っていません」(第 43 回中井泉証言公判速記録 p.29)と検出できなかった実験データを破棄したことを証言している.KEK-PFのビームタイム使用記録をチェックすると,1999 年 2 月 5 日から 120時間,5 月 13 日から 96 時間,6 月 22 日から96 時間,10 月 10 日から 96 時間のビームタイムを使っている.

 このうち 5 月は検甲 1232号 19)として図 3 の中井・林合計 2 本の頭髪の線分析と図 4 右の中井頭髪スペクトルを測定している.10 月は検甲 1294 号 22)として亜ヒ酸
を強制付着後約半年経過した中井泉頭髪 1 本の線分析結果を報告しているだけである.2 月と6 月のビームタイムに対応する測定データはない.厚生労働科学研究費補助金の研究にもKEK-PF BL-4A は使われたようであるが,それは 4 名の和歌山ヒ素事件被害者(2 名の乳児を含む)の頭髪・乳児 2 名のへその緒,半導体工業従事者 2 名の頭髪の測定,中国内モンゴルのヒ素中毒患者の皮膚等であり,400 時間を超えるビームタイムは多すぎる.林真須美の 2 本目のヒ素付着頭髪を何百時間をかけて探したが,結局見つからなかったので,ヒ素が検出できなかった頭髪測定データを SPring-8 のように破棄した可能性もある.検出できなかったなら検出できなかったことを示すのが鑑定である.

 図 2 をプロットするためには,極めて長い測定時間を要するので,測定する前からあらかじめヒ素が確実に検出されることがわかっている特定の 1 本の頭髪を最初に選んで測定したはずである.ヒ素が検出されるのかどうかさえわからない未知試料を最初に測定したのでは,長時間スキャン後にヒ素ピークが検出できなかったとしても,ヒ素が検出できなかった理由が,実験条件が不適切であったのか,そもそも頭髪にヒ素が含まれていなかったのか,判定できないからである.複雑な実験条件(ビームサイズ,試料と検出器の距離,1 点当たりの測定時間,試料と検出器の間に入れる X 線フィルターの種類等)を設定する上で,鑑定書に記述されたような実験手順はありえない.したがって,最初の測定では,まず確実にヒ素が検出されることがわかっている頭髪試料を測定したはずである.

 どのようにして,林右前頭部のこの一本の頭髪にヒ素が確実に付着していることが測定前からわかっていたのであろうか?図 2 のヒ素量を計算すると,1 [mg] × 90 × 10-9 ~ 10-10 [g] (2)即ち 0.1 ナノグラムの 3 価 As が集中して付着していたことになる.亜ヒ酸の密度を知れば,このヒ素重量から~3μm 径の亜ヒ酸粒子が 1本の頭髪の 1 か所に付着していたことが,間接的な測定法(電子顕微鏡のような直接的な方法ではなく)でわかっただけにすぎない.しかも,様々な危うい仮定,たとえば 3 価ヒ素が外部付着であって,付着後長期間 3 価を保ったまま頭髪に付着し続けることなど,を基にした間接的な付着証拠である.

 このことは,山内鑑定書や中井鑑定書などを詳細に比較・計算した結果,今回初めて判明した事実である.最高裁が「②被告人の頭髪からも高濃度の砒素が検出されて」いるとした事実認定が間違っていることを示している.最高裁の上告棄却理由の文章は,最高裁が事実誤認していたことを示すものであることが今回初めて明らかとなった.中井鑑定書の目的は,「悪事は裁かれるという科学の力を示すこと」23)であったために,最高裁のこのような誤解は避けられないことであったかもしれないが,こんな危うい証拠を死刑判決の重要な根拠としてよいとは思えない.

13.鑑定結果の学会発表は可能か

 2014 年 9 月 17 日~19 日に広島大学で開催された分析化学会年会において「裁判の鑑定・分析は学会発表可能か ?」と題するポスター発表を行ったところ,百名近い研究者がポスターを訪れた.再審請求中の事件について,学会発表できないとする学会の意見が最近強くなったので,それに対する研究発表を行ったものである.

 刑訴法 47 条(訴訟書類の非公開)には「訴訟に関する書類は,公判の開廷前には,これを公にしてはならない」とあるが,公益上の必要があれば公表も可とされている.今回のような鑑定結果の公表に関しては,
(1)裁判所の命令や弁護人の依頼によって鑑定書を作成した場合:裁判所や弁護人への提出前に無断で公開することはすべきではない.
(2)公開によって鑑定書の証拠能力が無くなることはない.
(3)弁護人が承諾すれば,事前の公表も可.
(4)被告人が犯人かどうかを裁判で判断する以前に,被告人を犯人だと勝手に断定す
るような鑑定書の公表は,慎むべきで,裁判所が審理に臨む前に予断を抱かないようにしなければならない(予断排除の原則).
(5)鑑定書の公表を禁止する法律はない.
(6)再審請求中の鑑定書でも公表可.
(7)検察や裁判所が命令した鑑定書の場合は特別で,検察や裁判所の権威が無ければ知り得ない情報を含んでいる場合が多く,鑑定人は勝手に公表できない.
(8)刑訴法 53 条(訴訟記録の公開)では,刑が確定した裁判の記録は,誰でも閲覧
することができる.
(9)再審請求中の事件に関しては,裁判のやり直しを請求中の状態であって裁判ではないので,過去の鑑定書の問題点を調査したり学会で議論を尽くすことは,分析化学研究者の責任である.学問的に研究して問題点を指摘したり議論を尽くすべきである.
と列挙できる.広島の学会発表でも反論はなかった.

14.米国の状況

 米国では,DNA 鑑定をやり直してみると,DNA 鑑定以外の法科学鑑定によって多くの冤罪が発生してきたことが明らかになった.そこで「イノセンス・プロジェクト」24, 25)と呼ばれる雪冤プロジェクトが1990 年代Barry ScheckとPeter Neufeldによって開始された.

 この結果,DNA 鑑定によって130人が自ら犯していない罪のために投獄され,そのうち何名かは死刑となった事実が判明した.

 DNA鑑定以外でも,例えば2004年のスペイン・マドリッドの列車爆破テロ事件において,指紋照合で米国ワシントン州の回教徒弁護士ブランドン・メイフィールドに一致し,爆破犯として逮捕されたが,後に誤認逮捕であったことが判明し問題となった(ブランドン・メイフィールド事件)26).

 このように科学鑑定が誤審の原因となっていることが次第に明らかとなると,「NRC レポート」27)と呼ばれるレポートが2009年に米国科学アカデミーの提言として発行された.これは,米 国 National Research Council(NRC)が,裁判所のみでは法科学の欠陥を克服することはできず,(1)鑑定方法・分析プロセス・結果報告書の改善,(2)第三者監督の強化,(3)鑑定官の教育とトレーニングの強化,の 3 点を米政府に対して提言したものである.

 本稿でわかるように,和歌山ヒ素事件においても,亜ヒ酸を紙コップに移すと濃度が 64% →99% へ増加したり,頭髪にタバコの煙大の亜ヒ酸の粒子が全頭髪中で 1 粒発見されただけで「合理的な疑いを差し挟む余地のない程度に」有罪が証明されているとした誤りを知れば,鑑定書の妥当性に関して,第三者監督の強化等を日本においても実施すべきであることがわかる.

謝辞

 本稿は 2014 年 5 月 10 日(土)の京都化学者クラブでの講演内容を基に,その後判明した頭髪鑑定の矛盾点を追加したものである.当日は多数の参加者に,しかも多様な分野の方から肯定的なコメントを頂いた.なかでも明治10年創業の京都の老舗「箔屋野口」の野口康さんからは,本稿で言及した東京理科大 中井教授が尾形光琳の屏風絵の鑑定に関して「金箔偽装論争」(いわゆる「金箔・金泥問題」)もあることを教えていただいた.

 金箔・金泥問題で学説が中井教授と対立する東文研の早川泰弘さんは,東文研から発言を禁止されている事も鉄鋼分析研究者に広く知れわたっており皆が気にかけている.

 自由な論争を行うことは科学にとって重要である.5 月末には神田の学士会館で開催さ
れた東大三鷹クラブで講演を行い,東大OBから有益なコメントを頂いた.関西の多数の大学をはじめとして,高エネルギー研,科警研,科捜研の分析化学研究者および再審請求弁護団には,私の初歩的な質問に対して細かくご教示いただいた.ここに感謝する.

参考文献

 1)河合潤:X 線分析の進歩,43,49(2012).
 2)J. Kawai: X-Ray Spectrom., 43, 2 (2014).
 3)最高裁判決の全文は,http//www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090422180047.pdf
 4)豊崎七絵:法学セミナー,No.655(7),124(2009).
 5)河合潤:X 線分析の進歩,44, 165(2013).
 6)河合潤:現代化学,No.507(6),42(2013).
 7)河合潤:X 線分析の進歩,45, 71(2014).
 8)Anthony T. Tu,河合潤:X 線分析の進歩,45, 87(2014).
 9)河合潤:現代化学,No.519(6),64(2014).
10)河合潤:ACADEMIA(全国日本学士会),No.148,33(2014).
11)丸茂義輝,鈴木真一,太田彦人:検甲1168 号,平成 10 年 12 月 15 日(1998).
12)二宮利男:職権 5 号証,平成 13 年 9 月 26日(2001).
13)谷口一雄,早川慎二郎:職権 6 号証,平成
13 年 11 月 5 日;職権 7 号証,平成 13 年
11 月 15 日,職権第 8 号証,平成 13 年 11月 22 日(2001).
14)河合潤:弁32号証,2014年1月26日(2014).
15)石塚伸一:法律時報,86(10),96(2014).
16)鈴木康弘,丸茂義輝:検甲 627 号,平成11 年 2 月 9 日(1999).
17)急性砒素中毒の⽣体影響と発癌性リスク評価に関する研究(総括研究報告書)(2001年度 総括)http://research-er.jp/projects/view/127346(2002).
18)山内博:検甲 63 号,平成 11 年 3 月 29 日(1999).
19)中井泉:検甲 1232 号,平成 11 年 7 月 23

https://www.oceanochemistry.org/publications/TRIOC/PDF/trioc_2014_27_113.pdf

和歌山カレー砒素事件鑑定資料―蛍光 X 線分析 河合潤
Reviews on Forensic Analysis of Wakayama Arsenic Case–X-Ray Fluorescence Analysis– Submitted to Court Jun KAWAI (公社)日本分析化学会X線分析研究懇談会

X線分析の進歩 第 43 集(2012)抜刷 Advances in X-Ray Chemical Analysis, Japan, 43 (2012)アグネ技術センター ISSN 0911-780

本稿の結論はすでに第1節で述べた.中井鑑定は,谷口・早川鑑定に比べると大雑把なもので,その分析結果の信頼性は,専門的に見ると高くはない.もし弁護側が中井鑑定の穴(例えば ① 帰属されていないスペクトル線の起源,② 同一試料から得られた検体間のばらつきの大きさ,③ 出所の異なる試料間の差異の大きさ,④ シンクロトロン放射光を別の日時に測定したり,別の測定者が測定したためのデータのばらつき,⑤ テーリング,⑥ レーリー散乱ピークの欠如,⑦ 定量値の欠如,⑧実際のカウント値の欠如,⑨ Moのスペクトル線が1本しか観測されていないこと,などについて反論をおこなったとすれば,「パターン認識」で異同識別を行ったという結果は覆る可能性も大きく,判決の内容が正反対となった可能性も考えられる.犯罪現場からのサンプリング(試料),検体(または試験片)間の異同,異なる日の測定による変動,異なる分析者による変動,ビームラインの相違によるスペクトルの変化など分析研究者ならあって当たり前の変化が,無いと仮定して示された結果は信頼性に問題がある.スペクトルはいつも同じ結果が得られるとは考えられない.一方,谷口・早川鑑定は,同一試料の位置の違いによって,スペクトルすなわち分析結果がどのように変化するのかなど,データのばらつきの範囲を詳しく調べ,その差はけっして小さくはないが,出所が異なる試料はさらに有意な差異があることを示した.裁判官は谷口・早川鑑定の重要性を見抜き,Mo部分の拡大スペクトルを要請して,当初含まれていなかった決定的な有罪の証拠をスペクトルの中から見つけ出すことに成功している.分析結果を十分に理解して用いた裁判官の判断が正しかったと考えられる.早川氏は,100 keVを超ええる高エネルギー蛍光X線分析法の新しい手法を確立したと言うことができる.論文として出版されなかったのは惜しいが,いまやSPring-8の分析では,レーリー散乱で割り算するなどの手法が,誰にオリジナリティーがあるかという文献引用もなく,日常的に当たり前に使われている.谷口氏の証人尋問において,「類似」を「同種」へ訂正する場面がある.その後この用語の意味の違いをめぐって長時間を費やしている.再審弁護団へX線分析データのレクチャをした際に,最初の質問は,分析化学では「類似」,「同種」,「同一」などの定義はどうなっているのか,と言うものであった.分析化学の分野にはそのような用語の定義は無い.X線スペクトルを裁判に用いる場合,丸茂鑑定のX線スペクトル表示は,すべての観測ピークを帰属しているという点では見本となるべきものである.谷口・早川鑑定は,シンクロトロン放射光における同一試料の位置の違いによる分析値のばらつき,2次的なサムピーク,エスケープピーク,バックグラウンドの引き方など,慎重に検討して分析結果を得ており,その信頼性はきわめて高い.証拠物品の異同識別に関して信頼できる結論を得ている.鑑定書のページ数が長大で弁護側も検察側も十分消化できなかった可能性がある.SPring-8 の放射光蛍光 X 線分析が注目されたため,ICPで分析した軽元素,特に As と同族のPや混ぜ物とした小麦粉,セメントなどの構成元素である軽元素の分析が軽く見られることになった.判決文は入手しなかったので詳細は不明であるが,SPring-8で,しかもBL-08Wという高エネルギーX線ビームラインで分析できる元素だけが最終的に証拠として重要視された可能性が高い.放射光蛍光X 線は特に感度が良いわけでも,試料量が少なくすむ唯一の分析法でもない.元素分析法に限ってもICP-MSやSIMSなど,代替分析法が多い.蛍光 X線分析法を専門とする私としては複雑な心境であるが,放射光蛍光 X 線でしかも 1 つのビームラインで分析した結果だけからは確実な分析結果を得るのは難しい.シンクロトロン放射光を用いる鑑定の問題点は次のように列挙することができる.(1)ビームラインの適切な選定は,あらかじめ目的の元素が分からなければできない.(2)1 つのビームラインは万能ではなく,そのビームラインでもれた元素が重要な役割を果たす可能性がある.今回は Se や Pb が測定できなかった.(3)シンクロトロン放射光で測定できなかった元素を軽視する傾向があった.今回は軽元素を軽視する傾向があった.(4)シンクロトロン放射光の検出下限は他の分析法と比較しても決して良くはない.今回の検出下限はppm.ICP-AESではppb,pptなどまで分析できる.(5)シンクロトロン放射光の定量方法はまだ十分なノウハウが蓄積されていない.本稿がノウハウ蓄積の一助になればと思う.(6)強い入射光のために,サムピークも強く,重要なピークの妨害となる.今回はMo KβがAsのサムピークのテールに重なった.(7)シンクロトロン放射光は複数のビームラインで測定が必要となったとき,ビームタイムを必要に応じて取ることが難しい.(8)シンクロトロン放射光での実験は,実験終了後には実験配置をいったん解体するので,再現性の良い実験ができない.などの問題がある.2006 年パリで開催された EXRS(EuropeanConference on X-Ray Spectrometry)会議では,シンクロトロン放射光の初期に,化学分析に応用したChevallier教授を記念してシンポジウムが行われた.その中でリスボン大学のMaria Luisade Carvalhoは,ナポレオンI世の毛髪を分析する際に毛髪を1本紛失して大騒ぎになったという講演をした.毛髪はシリンダー型で,測定結果は解釈が難しいと言うことである.また生前,死後の毛髪外部の影響によって変化し易いために注意が必要だと言うことである.ナポレオンI 世の毛髪は 1960 年代初頭に,中性子放射化分析されており,10~38ppmあったことからAs中毒とされたが,20年後に行われた分析では,Asは正常値でむしろSbが高い濃度を示した.中性子放射化分析では AsとSbの分離が難しい.Chevallier ら19)の分析結果では再び高い濃度のAs が検出されたが,Carvalhoの言う様に,死後の保存状態による可能性もあってナポレオンの死因とすべきかどうかは難しいということのようである.中井氏の毛髪中の砒素の分析については詳細は述べなかったが,中井氏は自身の毛髪に砒素をこすりつけて数ヶ月間通常の生活をした後,毛髪のAsが放射光によって分析できたという画期的な結果を示した.外部からこすり着けることによって As と毛髪との間に化学結合が生じたことを示している.毛髪は断面の元素マッピングもシンクロトロン・マイクロ・ビーム分析で可能になっているので,そういう分析によって中井氏の分析がどういうものであったのか詳しく調べる必要があると思われる.ICP 分析が大きな役割を果たしたことを述べたが,最近は 1 ワットの X 線管を用いる小型ハンディー型全反射蛍光 X線分析装置でも 1pgの絶対検出下限が得られることが示され,SPring-8で得られた fgにあと3桁まで迫るところまで来た.全反射蛍光 X 線分析でも,ICP と同様に試料は水溶液とするが,試料台に滴下乾燥して測定するので,その試料の永久保存が可能となる.プラズマ中で試料を燃やしてしまう ICP 法に替わる方法となるのではないかと思っている.「パターン認識」という言葉が素人用法で裁判に頻出したが,パターンの一致度を数量化する研究は古くから行われている.たとえば樹状図(dendrogram)を用いる統計的な手法もある.こうした手法が使われなかったのは不思議である.(抜粋).........-1 (kyoto-u.ac.jp)

無罪を訴え続ける林眞須美死刑囚 再審の経緯と争点は NHKクローズアップ現代+ 2021年7月16日 午後2:12
和歌山毒物カレー事件の裁判は10年にも及び、1000点を超える状況証拠が審理されたのち、2009年5月に最高裁判所で死刑が確定しました。しかし、犯行を直接裏付ける物的証拠がなく、状況証拠を積み重ね、有罪が認定されたことや、動機も解明されていないことなどから、林死刑囚は引き続き無罪を主張して再審=裁判のやり直しを求めています。争点①:ヒ素の鑑定方法。再審請求の中で最も重要な争点になっているのは、有罪の決め手とされた「ヒ素の鑑定」の正確性です。事件現場から検出されたヒ素と林死刑囚の自宅などにあったヒ素が同じだとする鑑定は、当時最先端だった「スプリング8」と呼ばれる分析装置が使われたことで注目を集めました。しかし、林死刑囚の弁護団が材料工学に詳しい京都大学の教授に改めてデータの分析を依頼した結果、それぞれのヒ素に混ざっていた不純物などが違い、由来が異なることがわかったとして、この鑑定結果を新たな証拠として裁判所に意見書を提出。さらに、警察側の鑑定書には違うヒ素だとわからないようにデータの数値を変えるなど意図的なごまかしがあったと主張しています。2017年3月、和歌山地方裁判所は「ヒ素の組成上の特徴が一致しているという事実は、すべての証拠を検討してもなお認められる」として訴えを棄却。林死刑囚はこの決定を不服として大阪高等裁判所に抗告しましたが、2020年3月、大阪高裁も「自宅にあったヒ素が犯行に使われたとするもとの鑑定結果の推認力が、新証拠によって弱まったとしてもその程度は限定的だ。新旧の証拠を総合して検討しても、判決確定の事実認定に合理的な疑いが生じる余地はない」として、再審を認めない決定を出しました。林死刑囚はその後、最高裁判所に特別抗告を行いました。争点②:死因に関わる証拠。さらに林死刑囚は今年5月、「第三者の犯行である証拠が見つかった」として、新たに和歌山地裁に再審請求を行いました。林死刑囚の代理人の弁護士は記者会見で、カレーを食べた全員からヒ素のほかに青酸化合物も検出されていたという鑑定結果などを挙げ、裁判で死因に関わる証拠が十分に審理されていないと指摘。「ヒ素ではなく青酸化合物が死因だった場合、林死刑囚は無罪だ」と主張しています。再審請求中でも死刑は執行されるのか?。法務省によると、7月11日現在、死刑が確定している死刑囚112人のうち64人が再審請求をしています。再審請求自体に刑の執行を止める効力はないものの、2017年以前には、法務省は再審請求中の死刑囚の執行を避ける傾向にありました。しかし、2017年7月、18年ぶりに再審請求中の死刑囚の刑を執行。その翌年に死刑が執行された13人のオウム真理教元幹部も、うち10人は再審請求中でした。執行後の会見で、上川陽子法相は「再審請求をしているから死刑執行をしないという考え方はとっていない」と答えています。再審請求と死刑執行をめぐっては、「死刑執行を引き延ばすだけの実質的な意味のない再審請求の繰り返しを避けるためにも再審請求中でも執行すべきだ」という意見がある一方、「死刑が執行された後に再審が認められる可能性も否定できない以上、再審請求中の死刑執行は避けるべきだ」という指摘もあります。

7/16放送「#カレー事件の子どもたち」 映画監督・森達也さん放送後トーク NHK 2021年7月20日午後6:00

カレー事件とは? 発生から23年 当時の詳細とその後 NHKクローズアップ現代 1998年7月25日
和歌山市園部で、住民同士の交流のために行われた地区の夏祭り。近所の主婦たちが調理したカレーが振る舞われると、住民たちが次々と激しい吐き気に襲われました。67人が中毒症状に見舞われ、小学生や高校生、自治会役員の4人が亡くなりました。後日、カレーからヒ素が検出され、毒物を使った無差別殺人事件として社会を震撼させました。林死刑囚は大阪拘置所に収監されていますが、2021年5月、新たに再審の申し立てを行い、無罪を訴え続けています。

メディアスクラム〟の象徴に・・・ 問われた事件報道のあり方 NHK 2021年7月16日 午後2:12

林死刑囚の再審請求、地裁が棄却 和歌山カレー事件 朝日新聞デジタル 2017年3月29日
2009年から続く再審請求審で弁護団は、X線分析が専門の河合潤(じゅん)・京都大学大学院工学研究科教授の鑑定をもとに、林死刑囚の自宅などから押収されたヒ素と、事件現場のゴミ袋にあった紙コップ内のヒ素、カレー内のヒ素は同一のものとは言えないと主張。放射光施設「スプリング8(エイト)」(兵庫県佐用町)などを使った当時の鑑定に「『同一』と見せるための不正があった」と訴えていた。また林死刑囚がカレーを調理したガレージでの見張り中、「カレー鍋のふたを開ける不審な行動をした」という住民の目撃証言も次女と見誤った可能性があり、信用できないとしていた。

林死刑囚再審、高裁も認めず 和歌山毒物カレー事件 nikkei 2020年3月24日
和歌山市で1998年、夏祭りのカレーを食べた4人が死亡した毒物カレー事件で殺人などの罪に問われ、死刑が確定した林真須美死刑囚(58)の再審請求で、大阪高裁(樋口裕晃裁判長)は24日、林死刑囚側の即時抗告を棄却し、再審を認めない決定をした。弁護団が明らかにした。弁護団は再審開始要件の「無罪を言い渡すべき新証拠」として、祭り会場にあり、カレー鍋混入分の残りとされる紙コップのヒ素が、林死刑囚の自宅で見つかったものとは異なることが判明したと主張。京都大の研究者へ独自に依頼して調べた結果、事件当時に実施されたヒ素の鑑定は手法に問題があるとしていた。しかし決定理由で樋口裁判長は、紙コップ内のヒ素は粉末として付着している程度で、鑑定のため科学警察研究所に送られるまでに検査などで試薬が加えられるなどし「カレー鍋混入時に含まれていた元素の組成比や成分比、濃度比をそのまま反映しているとみることはできない」と指摘。「元素や濃度の違いから、紙コップと死刑囚宅のヒ素が異なるとすることは適切でない」とした。林死刑囚は捜査段階で黙秘を続け、公判で無罪を主張。2002年に一審和歌山地裁、05年に二審大阪高裁がいずれも死刑を言い渡し、09年4月に最高裁が上告を棄却しその後確定した。同年7月に再審請求し、和歌山地裁は17年3月に棄却。林死刑囚側は不服とし、即時抗告していた。〔共同〕

和歌山毒物カレー即時抗告 林死刑囚再審 高裁も棄却 東京新聞 2020年3月25日
和歌山市で一九九八年、夏祭りのカレーを食べた四人が死亡した毒物カレー事件で殺人などの罪に問われ、死刑が確定した林真須美死刑囚(58)の再審請求で、大阪高裁(樋口裕晃裁判長)は二十四日、林死刑囚側の即時抗告を棄却し、再審を認めない決定をした。弁護団が明らかにした。弁護団は再審開始要件の「無罪を言い渡すべき新証拠」として、祭り会場にあり、カレー鍋混入分の残りとされる紙コップのヒ素が、林死刑囚の自宅で見つかったものとは異なることが判明したと主張。京都大の研究者へ独自に依頼して調べた結果、事件当時に実施されたヒ素の鑑定は手法に問題があるとしていた。しかし決定理由で樋口裁判長は、紙コップ内のヒ素は粉末として付着している程度で、鑑定のため科学警察研究所に送られるまでに検査などで試薬が加えられるなどし「カレー鍋混入時に含まれていた元素の組成比や成分比、濃度比をそのまま反映しているとみることはできない」と指摘。「元素や濃度の違いから、紙コップと死刑囚宅のヒ素が異なるとすることは適切でない」とした。林死刑囚側は高裁決定を不服とし、最高裁に特別抗告する方針。





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最終更新日  2021年12月24日 19時41分45秒
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