拙作SF『恐竜境に果てぬ』先取り物語公開
拙いSF物語、目下の下書き本文などを掲載します。生意気なようですが、「挿絵画像」のない駄文羅列が、いかに退屈か、「小説」と自称するかたがたは、参考に・・、いえ、やめましょう。私には私の流儀があるとだけ書いておきます。『恐竜境に果てぬ』第1章『先史時代』第3節・冒険と陰謀その2「恐竜と敵(仮題)」(2016年1月13日開始)田所「早苗さん、短いあいだでしたけど、この世界、感想はいかがですか ? 」早苗はいきなり問われていくらかあわてたようだが、やがて田所の考えを察したようで、穏やかに答えた。早苗「何んだかまだ夢見心地ですけど、私自身の目で見たことなので、驚きと感動に浸っています」田所「それは上々です。ただ、思わぬ出来事で、狭いところに一泊させることになって、申し訳ありません」早苗は「いいえ」と言って、チラと私のほうを見てすぐ、「村松さんのベッドを借りることになって、おかげで手足を伸ばして、休むことが出来ました。村松さん、床(ゆか)にごろ寝で、大丈夫だった ? 」私「ああ、何んてこたねえよ。第一、初めは居住区も便所と風呂だけで、俺たち床(ゆか)に寝たんだぜ。佐々木の野郎相手にいい運動したんで、ぐっすり眠れたよ」早苗「それから、田所先生も、教授にベッドお譲りになって、操縦席の椅子を、それも二つの椅子のあいだに台を入れたりして、高さを調整して、大変でしたね」田所「ははは、そう言えば教授、あなたの長身では、ベッドが短過ぎて、寝にくかったでしょう」ヒル「ナニね、私、若い頃、特殊部隊志願して鍛えたから、どこでも睡眠オッケーよ。それにしても、日本人は、互いを思いやる精神が備わっていて、いいムードね」紅一点の早苗ちゃん。やはり女性を登場させて良かった。なお、更新時は、新たな画像を掲載することは申すまでもありません。田所「では早苗さん、一時帰還していただきますが、あなたのバイクは住まいの駐車場に転送しておきますから、忙しいでしょうけど、出発日時正確に転送しますので、お仕事の支度など、お願いします。ところで持って来た荷物は一旦持って帰りますか ? 」早苗「いえ、連絡用のパソコンだけ持ってけば大丈夫です。村松さん、あたしのカバンの中、見ちゃダメよ」私「頼まれても見るか ! ? どうせ下着や着替えだろ。ほっとけ」田所「それでは、まず早苗さんの身一つを転送して、すぐあとにパソコンを住まいの部屋に転送します。身軽が安全につながるので。くどいようですが、あなたのプライバシーを尊重する設定になっているので、その制限下で追尾し、再びこちらへ来ていただく時は、パソコンに連絡します」早苗「わかりました。あの、あたし、どのへんにいればいいんですか ? 」田所「その位置でいいですよ。では、転送します。転送準備」早苗はベッドと操縦席のあいだのごく狭いところに立っていた。早苗「あの、田所先生、また必要な時は、必ず呼んでくれますよね」田所「うれしいお言葉ですよ。それでも決して変な意味ではなく、あなたにはご自分の生活を守る権利があります。では現代世界で、少し違和感を覚えるかも知れませんが、すぐ慣れます。改めて、転送準備」早苗「本当に少しでも役に立つのなら、ここに呼んで下さいね」田所「了解しました。では、転送開始」田所が操縦席に装置した何かのスイッチを押した。しばらくすると、早苗の姿が後ろの居住区風景に溶け込み始め、その時彼女が「何んだか、名残惜しいわ」とつぶやく声がかすかに聞こえたが、やがて姿が消え、居住区の景色だけとなった。私「やれやれ、どこまで役に立つのか、わかんねえで、うるさいばっかの小娘が去って、ようやくいつもの感じに戻れた」ヒル「おお、むらまつ、ユーはそんなに早苗さんが嫌いなのですか ? 」教授に口答えや、彼女の性格、これまでのいきさつの説明は考えものと判断し、答えに窮していた。田所「教授、村松は、早苗さんを拳法の門下生として、特に力を入れて指導した経験があるので、そのぶん、親しくなり過ぎたことも否定出来ません。私の判断したところでは、良きカップルですよ」ここに至って、私は相手が田所ゆえに、言葉を返すことが出来た。私「おいおい、冗談もほどほどにしろよ。俺たちのどこがカップルだ。教授が誤解するじゃねえか」ヒル「おう、そうなのね。むらまつは、はなかみ屋なのね」田所「教授、そこは『はにかみ屋』と言うんです」ヒル「おお、わたし、まだまだね」田所「意味は要するに『照れ屋』ということです」ヒル「なーるほどね。むらまつは照れ屋ね。早苗さんが嫌いじゃないのに、わざと冷たく言うのね。アイアイサー」勝手にしろと思った。だが次の田所の言葉は、いきなり緊張感を伝えるものだった。田所「村松、早速で済まないが、敵状視察に向かってくれないか。俺は探検車を守る仕事があるし、ヒル教授も、この動力機能のほかに、いろいろ俺と話し合い、相談することがある。俺が教わることもある」私「一つ聞いていいか ? 」田所「ああ、何んなりと」私「敵のここでの本拠地はどうやって突き止めたんだ」田所「これは一種のレーダーでな、敵が張ってあるバリアーをさがして突き止めたのだ。もちろん、この探検車の位置は移動することもあるが、ほとんど常に電波を発射して、こちらの位置を知らせる態勢でいたから、向こうも同様の操作をしているのは、ほぼ確実だ」私「で、俺の任務はなんだ。ただ視察ってだけじゃ、具体的なことがわからねえ」田所「これから説明するつもりだ。バリアーの探り合いだと、敵味方の位置はわかっても、肝心の敵の本拠地の形や人員数、装備までは突き止められぬ。そこで村松に頼みたいのだ。お前の身体には、既にバリアーを張ってあるから、自動小銃か拳銃を携行して、万一に備えてもらいたい。村松、お前とて、これは敵地に潜入する初めての経験となる。やってもらえるか ? 」私「やってもらえるかは愚問だぞ。俺は生死をかけると約束したはずだ」田所「よしわかった。単独行動は、村松ならではの信頼を置いてのことだ」私「で、敵の本拠地が見つかったら、・・そうか、人数と装備を確かめるんだったな」田所「だが深追いだけは禁物だ。無論、俺がここからお前の行動を追尾するけれど、これからまだまだお前には活躍してもらわねばならぬから、情勢不利に陥る予感などを覚えたら、即座にこちらでお前を転送する。人体バリアーと言えばわかると思うが、追尾可能なのは、俺が装置した村松の姿や様子だけだ。くれぐれも無理な行動はしないでくれ。なお、敵バリアーについても、昨日から教授と鳩首協議の連続だが、もうしばらく時間がかかりそうだ」私「ってことは、俺が敵のバリアー、つまりよ、敵の本拠地に監禁されたりしたら、絶体絶命ってことも覚悟が必要だな」田所「答えにくいが、現時点ではその通りだ。あえて周波数に例えると、敵のバリアーの中に入ったら、周波数の違いにより、お前の位置確認が不可能になる。だから繰り返すが、深追いはせぬよう、くれぐれも慎重に行動してくれ」早苗の一時帰還の意味も読めた気がした。彼女は恐いもの知らずのところがある。仮に彼女と一組になって行動しても、危機に陥ったら、かえって足手まといになるおそれがある。これは決して田所が私を都合のいいように利用しようというのではないと判断した。彼の表情にも、かつてない緊張が感じられたし、何より指示の言葉の一つ一つが真剣さに満ちていた。決意が固まった。事実上の自営業経営を、母に任せっきりで、その自営業も、仕舞屋になり、さらに尽力図り知れぬ母亡きあと、前途に未練はなかった。ただ、命をかけた何かをやりたいとだけ願ってかなわないと思っていた矢先、田所からこの上なき仕事の依頼を受けた。最悪の場合、田所の役に立てないまま死んでもいいと、原始の恐竜境に果てても本望と思った。服装は軽装を事とし、万一に備えた銃火器も、最高装備の自動小銃は機動性を損なう点で、必ずしも役立つとは言えない。特に田所は、私の俊敏さに重きを置き、荷物は必要最低限にとどめ、水分補給の水筒・非常食・ナイフを主な携行品として、このうちの非常食をリュックに入れ、そのリュックを背負うことで、両手の動きを常に自由に生かせるよう、図らってくれた。ナイフは至近距離の敵を殺傷する主目的があるが、私は拳法練習時代、短剣投げにも没頭し、10メートル前後なら、まず百発百中の技術を習得していたから、状況いかんで投げることも視野に入れた。敵の銃撃を浴びる時は、バリアーが身体を保護するが、防御エネルギー消耗は、銃弾の数と銃撃距離により、消耗度は不確定、複数の敵による一斉射(いっせいしゃ)を浴びた時は、バリアー消耗の度合が、一種の衝撃の強さで体感出来るから、射撃の雨にさらされ続ける時間をさけるため、物陰に隠れるなどするうちに、エネルギーは自動補充されるとのこと。敵は私の生命を断つことも辞さぬ冷酷な性質を常識と心得ている者共ばかりだから、先手・後手を随意に駆使し、基本に敵殺害を心がけるべしと、田所は特に強調した。殊に白人の人種差別は依然、根強いと心得るべしとも。私は一通りの説明を受け、荷物を身に着けると、あらかじめ確かめておいた敵本拠地バリアーの方向へ徒歩で出発した。なお、心強い味方にはなろうが、確かに自動小銃はズッシリ重いばかりでなく、その銃身の長さが、身体の自由を損ないそうなので、フルオートに切り替え可能な拳銃を腰に差し、充分な弾倉をリュックに詰めた。方向にズレを生ずるつど、田所が私にだけ聞こえる例の装置により、例えば『現在位置から、10時の方向へ転ぜよ』と、調整指示を飛ばし続けた。行く先々の風景が植物の変化に表われた。丈高い草むらや、逆に草原のように一面草が足元に広がるところや、南洋のシダ植物が点々と生える一帯や、様々な景色を視界に認めながら、ひたすら目指す方向へと歩いた。小型の肉食竜が飛びかかることもあったが、ヤツらは私に食らいつこうとする瞬間にバリアーにはじき飛ばされた。この程度ならバリアーの消耗はゼロである。徒歩での前進は私の体力では、いくら歩いても疲れは全く感じず、のどのかわきもなかった。突然、視界がひらけ、一頭の竜脚類恐竜を遠望することとなった。その体形と巨体から、ディプロドクスまたは近縁種と判断したが、おおむね温厚で何より草食だから、私は目的地を優先し、この巨獣に次第に接近する光景となった。仮にディプロドクスと独断すると、コイツは私を視認しながらこちらへ向かって来る気がした。昨日のんびり見たブラキオサウルス群とは違う攻撃性を感じたが、知識もないので、思い過ごしとみて、真っ直ぐ歩き続けた。田所「村松、バリアーの保護はあるが、一時さけて通れ ! 」間に合わなかった。ディプロドクスの歩みは見た目はゆったりしているが、巨体ゆえに、速度はかなりあり、みるみる私に近づいた。私は象の発情期に、オスが凶暴になることは何かで読んで知っていたが、巨体の草食恐竜にも当てはまるに相違ないと思い、いよいよ踏みつぶされそうな位置に来ると、まず前足の攻撃を、つまり私を踏みつぶさんとする動きから、素早くよけたが、きびすを返すと、コイツも意外な速さで方向転換して、再び私に向かって来た。バリアー消耗を懸念しての動きを考え、さらに前足でキックしようとするのを、すんでのところでかわした。ディプロドクスは何んとも言えぬ大音を発して、威嚇の意思を見せたが、私はまんまとヤツの巨体をすり抜けて、長い尻尾の射程外へ逃れることが出来た。巨獣は、恐らく群れを離れた一頭なので、理由はわからないが、感情がたかぶっていたようだ。ただ、私を追い越すと、あきらめたようにそのまま立ち去って行った。田所「村松、どうやら無事なようだな。俺にもよくわからないが、あるいは肉食竜から何んとか逃れるうちに、群れから遠ざかって、今の行動に出たようだ」私「田所よ、これくらいの思いをしねえと、冒険に出た気がしねえ。少し運動になったがな。それじゃ、所定の方向に戻るから、指示をくれ」田所「2時の方向へ修正して前進続行頼む」私「了解」田所「なお、敵に遭遇したら、俺からの話しかけに対する返事をお前の判断で選んで欲しい」私「ああ、わかった。会話機能を悟られねえようにってことだな。いや、了解 ! 」この時、私は敵に察知されていることに気づかなかった。それは田所によって知らされた。田所「村松、先ほどのディプロドクスは、敵が何らかの威嚇などで、お前の進行方向に追い込んだような気もする。12時の方向に警戒せよ」隠れるに適当なところはなかった。ほどなく人影が現われた。二人を目視したが、どうやら自動小銃を構えて接近する様子と見た。至近距離に敵が来ないうちに田所に問うた。私「おい田所、どうやら敵の小銃の的になりそうだ。一斉射(いっせいしゃ)を浴びて、バリアー消耗すると、どんな感じになるんだ ? 」田所「銃弾が貫通することはない。ただ、バリアーがゴム風船のように、お前の身体に圧力をかける」私「ゼロパーセントになったらどうなるんだ、お陀仏か ? 」田所「お前の身体自体にも、俺の仕事場でバリアーを内蔵装備したから、それはない。ただ・・」私「田所よお、お前の話、長いんだよ。前に、銃撃を浴び続けたら、身体も生命の危険にさらされることがあるって説明したんじゃねえのか」田所「言わば最後の『とりで』だ。銃弾は身体にぶつかり、その衝撃力をまともには受けるけれど、防弾チョッキを着ていると思ってくれ。隠れるところは全くないのか ? 」私「ないよ。そろそろ接近間近だ。会話終えるぞ。お前は生命の危険と言ったはずだ。時間がなくなった。俺からの話、とめるぞ」○プロット1 早苗の一時帰還 2 村松と竜脚類 3 村松の拉致と拷問(田所追尾) 4 村松の逆襲(拳法炸裂) 5 脱出(恐竜と敵) 6 肉食竜の凄惨(敵要員殺害) 7 探検車への帰還(早苗の帰還含む) 8 早苗の決意(村松の危機を知り、激怒と覚悟)