デリヘル体験記その1
介護ストレス解消の一手段と言うと、懸命に生きている母に不孝を働くようで、いささか忸怩(じくじ)たる思いをふっきれないのが正直なところだが、実は数年前から、この『デリバリー・ヘルス』という風俗業界へは関心があった。ただ、元々は当時学習塾が著しく傾いて、水準レベルの月収が望めないことが原因で、デリヘルで募集していたドライバーつまりデリヘル嬢の運転手のパートをやろうとの思いつきがきっかけだった。地理に疎いので、地元の客優先のデリヘル店しか選べず、ターゲットはすぐに決まった。ここから先は、店の名前も、さらに源氏名であっても、デリヘル嬢の名前も明かすわけにはゆかないので、仮名(かめい)で通す。また、デリヘル嬢それぞれのサービスも、詳しい内容を書くことは、本人の仕事生命を直接左右することだから、必ず書かないことにする。店名は伏せて、デリヘル嬢の仮名を作ることとする。先日のインファント・レディのブログに採用した『サトミ』を使う。デリヘル店のホームページで、サトミの名と年齢を知ったのは既に3年ほど前である。ほかのデリヘル店では、デリヘル嬢の顔写真を公表しているところもあるが、この店ではすべて顔を『のっぺらぼう』のように修整してあるから、美醜はもちろん、好みかどうかもわからない。ドライバー応募がきっかけではあったが、条件の中に、自家用車持ち込みなどとあり、ヤワな軽自動車を短期間に傷める不利が不満で、応募は即座にとりやめた。今にしてみれば、やがて甚だしく体調を崩す母の介護が必要となるので、これはやめて正しい判断だった。いっぽう、私はデリヘル嬢リストをざっと見て、一人に標的を絞った。身長・淡白な性質・年齢などを条件に決めた。色気のホルモンをしたたらせるような女はご免こうむりたいとの思いは、この業界に興味を持つ身ながら、つとにあった。爾来3年、本人もそのぶん年齢を重ねたが、私はいずれかようなら、顔もわからないこのデリヘル嬢にしようと、なぜか決めた。私は交流ある知人たちなどには、実はこの手のことに全く興味がなく、ひたすら童心を持ち続けるものであると、つまりウソをついて来た。また、ずっと以前、産経新聞の読者投稿欄に、およそ以下の文章がとり上げられた。○「自分の一生はかけがえのないものだから、私は結婚・所帯に縛られる生活はいやです」と、独身主義を主張・全うする人が増えているらしいが、年金制度前途多難の折から、私たちまともに家庭を築く人々が、このような身勝手な人たちのためにさえ年金保険料を支払わなければならないのは不公平である。こんな人々の老後を支えるために保険料を払うのは勘弁願いたい。○当時、私はこの意見に共感し、己れの境遇を申し訳ないとも思った。だが今は正反対の考えである。第一、何様か知らぬが、この投稿者は思い上がっている。結婚し、子供をもうけ、家庭を築くことが、人間生活の義務であると決めつけている。結婚するも未婚を通すも、人それぞれの好みである。離婚する者もいる。その理由に共感出来ることも少なくない。暴論を言うなら、結婚する者共は、若い頃のホルモンの勢いで結婚するのであり、家庭を築き、国民皆、平等に老齢年金を分かち合おうなどとの計画無しに、するはずである。現に、年金保険料は、この者たちに支えられているとは限らず、自らの預金から払っているのが事実である。投稿子は、将来に向かうにつれて、自分たち若者三人に一人が、やがて二人に一人が、老人の年金受給額を負わなければならない時代が到来することを不満に思い、そんな勝手な独身老人のための支払いは不公平だと言いたいのだろうが、世の中、所帯を持って無事に夫婦共々添い遂げるとは限らぬご時勢である。繰り返すが、私は己の収入・預金の中から、たいした金額でない将来の年金のために、毎年保険料を払っている。行き着く先も、孤独な独居老人の行く末の不安を抱えている。それを承知で、乏しい受給額をたのみにして、将来に備えている。少子高齢化は自然現象である。私は相棒のインファント・レディとは実に30年来のつかず離れずの付き合いだが、事情を知らない人は簡単に「同居すればいい」と言う。大きなお世話である。母子家庭の子供は、母親の再婚を嫌う傾向がある。私がかよい出したデリヘルのサトミも、若くして離婚し、母子家庭である。離婚理由は書けないが、本人に充分同情出来る原因がある。我が子の生活環境の不自由を考えて、かねて再婚をしない強い決意である。現実は様々ある。投稿子もまた身勝手と言わざるを得ぬ。さて、私は58になったばかりの今でも、趣味の特撮・怪獣・バイクとは別に、女との情交に興味がある。デリヘル嬢のサトミの仕事はハッキリ言ってかなりキツい。3,40代で、単に女体に好奇心を持つ者は、デリヘル嬢のサービスに、股間の一物怒張を期待だけして、金策は可能でも、勇気が出ない者が少なくないとも聞いた。なお、決して安くはないデリヘルがよいの資金は、乏しい学習塾収入を貯蓄して、さらにリスクはあるものの、100万円で外国国債を買って、今後のストレス解消に備えている。ついでに書くと、本年2010年、12月分の配当金はおよそ8800円である。今後の様子次第では、もう一口預けて、倍額の配当金を期している。一度かよえばわかるが、ここは思ったほど過激な行為の場ではない。少なくもサトミは、私のオシャベリに閉口して、いささか迷惑そうな表情を見せるのが常である。妙な体験記となるかも知れないが、デリヘルでの行為や、デリヘル嬢のテクニックで快感をどのように覚えたかなどという生々しいことばかりをつづる気は毛頭ないし、お互い慣れて来ると、会話もくだけたものになり、相手も、性格にもよろうが、かなりずけずけ言うようになり、いつまでも客面(づら)でデカイ態度でいるわけにもゆかない。まず感心したのは、サトミの衛生管理のていねいさである。風邪などでのどを傷めて病院へゆくと、場合により『イソジン』という、うがい薬を処方する。赤茶色の液体である。デリヘル嬢はこれを二種類常に携行している。風呂の準備が出来ると、お互い全裸になり、浴室でイソジンのうち、石けんの泡が立つタイプのもので、我が股間をていねいに洗ってくれる。間違ってこれでうがいをすると、苦い味でとんでもない不快感を味わうめにあう。浴槽に湯を満たすのはデリヘル嬢の仕事だが、こちらがボーっとしているあいだに、次から次へと、かいがいしく準備をしてくれる。次に浴槽へ入るよう促される。ここで歯磨きをさせられる。その準備は相手がてきぱきやってくれて、こちらは湯船につかったまま、歯磨きし、コップで口をゆすぐ。また、彼女らには、必ずある時期に『性病』感染の有無の検査が義務付けられていて、淋病・梅毒・クラミジアなど、医療機関で一通り検査を受ける。特にクラミジアの検査は、膣内を何かの用具でかきとられ、やや痛いのを耐える。クラミジアは、客の一物くわえるサービスから感染するおそれがある。この点、客も同様である。一物くわえるサービスのあと、ディープ・キスを行ない、そのままにしておくと、相手のだ液からのどへ菌がうつり、クラミジアに感染するおそれがある。サービス終了後、再び入浴し、イソジンのうち、もう一つのイソジンうがい液できちんとうがいをすることが不可欠である。なお、初めの入浴をさっさと済ませると、いよいよベッドインとなるが、本番をある程度黙認されているソープランド、かつてのトルコ風呂とは違い、本番行為厳禁である。客にもよろうが、私の場合は介護ストレスその他の生活のストレス解消を目的の第一義としてかよい始めたので、ダブルベッドの上での、格闘で言う組んずほぐれつの如き激しく身体を絡ませる行為はない。なお、私はソープランドのサービスを、その主な内容から『泡踊り(あわおどり)』と名づけている。ご当地のかたがた、許されたし。ただし、私は相棒のインファント・レディにもしたことがない、女体陰部の最も敏感な場所、俗語の一つである『サネ』を舌で直接刺激する行為を、我が一物くわえるサービスのお返しとして、このデリヘル嬢相手に初めて行なったが、これは女体にとって、かなり快感が身体中を走ることがわかった。言うまでもなく、デリヘルがよいは金銭的に我がほうに打撃がある。私はそれまでの学習塾収入のタンス預金の一部と、先ほど書いた投信の配当金を使っている。また、その目的もあり、私はデリヘル嬢のせっかくのサービスを妨げるようにかなりおしゃべりが多く、これまで数回かよったものの、一度も『イって』いない。ついでに言うならば、このサトミも、我が舌による奉仕でも、一度も絶頂には達していない。女子の中には、これだけで達する者も少なくなかろうが、やはり女もそれぞれである。それでも私は指名を替えることなく、サトミ一人で通している。くどいが、私も目的がやや変わっているのである。そして数回一人に絞ってかよえば、お互い慣れて来て、彼女もなかなか毒舌を浴びせることも多くなった。その反対に、彼女は好意的なところもあり、私の誕生日には、「たいしたものではないけれど」と断わりながらも、マフラーをプレゼントしてくれた。「バイクで走るから冬は首に風が当たって寒いでしょ」と、なかなかの配慮だ。この日は私にとって、一つのカケだった。プレゼントをもらえるかどうかカケて行ったから、何ももらえない時のうぬぼれを恥じねばならぬ不安もあった。 彼女本人は「せっかくのプレゼントのマフラーだから使ってよ」とせかすが、私は思いやりがうれしく、もったいなくて、プレゼントの梱包を解かぬままだ。私もその後、早めのクリスマス・プレゼントに、クリスマスカードと共に、洋菓子のセットを渡している。デリヘルによって、サービスの手順ややり方は異なろうが、不定期ながら次回書くときは、デリヘル嬢のサービスの様子をもう少し細かく書くこととする。恥ずかしき話、以上、お粗末でした。