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本の森で呑んだくれ、活字の海で酔っ払い

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2020.09.03
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テーマ:お勧めの本(7219)
​​・南さんの4作目、同業者の医師でもあり在宅医療にも関わっているらしい彼女の作品はコンプリートしている-実は全部図書館本なので申し訳ない。ミステリーにするなど変に加工することなく、同業者から見ても「あるある」的なリアルな医療小説として面白かった。「安楽死」と「尊厳死」の違いやあいまいさなどについても正しく書かれていたと思うし問題提起されているのだと思う。

過去の3作品の感想
「サイレント・ブレス」
「ディア・ペイシャント」
「ステージ・ドクター菜々子が熱くなる瞬間」
1作目「サイレント・ブレス」と「ディア・ペイシャント」はTVドラマ化もされている。3作目の「ステージ・ドクター菜々子が熱くなる瞬間」はちょっと新境地開発的で異質かもしれない。


2020.9.2読了


・4作目にあたるこの作品は、東京の大学病院救急救命センターで仕事をしていた主人公の女医白石62歳―ワシとほぼ同年齢じゃ!―が、ある事件をきっかけに退職して地元の金沢に帰り、知人の診療所で在宅医療を始めることになる。彼女の父親も元神経内科医で開業医。彼女の在宅医としての奮闘や成長と並行して、骨折から誤嚥性肺炎に続く負のスパイラルに陥っていく父親の物語も進んでいく。

〇お父さんを楽にさせてくれ。十分に生きた。そろそろお母さんのところへいくよ。
・神経内科医であった父からそう言われた主人公、おそらく救急救命センターで仕事を続けていたとしたらまた別な判断で違う選択をしたかもしれない。故郷に帰ったことと在宅医療の現場に身を置く中で考え方が醸成されてこういう決断になったのだということがよく分かって違和感はゼロではないにしても強くはない。

・患者さんや医療従事者でない人からみたらどうなのかわからないが、かなりリアルというか医療従事者の自分の気持ちに近い気がして受け入れやすい結末ではあった。最後に110番する必要があったのかというのがちょっと疑問、というか最終判断するのは警察や検察なの?と思った。できれば最終判断の前に倫理委員会であればベストだがそうでなくても複数の立場の違う人たちを含めてディスカッションするべきだったと思う。(そんなことを言ったら小説にならないじゃんというのは十分わかっているのだが・・・)
・小説であるにも関わらずリアルにACPについて考えさせられる教材でもあった。

「スケッチブックの道標」
 救急救命センターで働いていたので在宅医療はやれるだろうと思っていたが、そうは簡単にいかないと洗礼を受ける。在宅医療の現場では「あるある」であるが、経済的問題や家族が死を受け入れることの難しさや受け入れる過程などリアル。

「フォワードの挑戦」
・癌ではない、進行性の神経難病でもない。外傷性の脊髄損傷と闘っている人を最先端医療につないでいく在宅医療。

「ゴミ屋敷のオアシス」
・これまた在宅現場で「あるある」のゴミ屋敷と患者さんと家族、スタッフとの関係性、医療や介護がどう介入していくかがテーマ。こんなにはうまくいくことは難しいとは思うがハッピーエンド。主人公の父親が転倒して大腿骨を骨折した。

「プラレールの日々」
・厚労省の高級官僚が末期がんになり、「病院から在宅への転換」を訴えてきた自分の矜持として生まれ故郷の金沢に帰って妻とともに最期を迎える決心をした。周囲は反対、息子も反対している。
〇「何もあなたのようなエリートが実践されることはないじゃないですか」
●大学病院の教授の言葉、めっちゃ腹立つ!自分たちは別!?政治家たちや多くの官僚たちもこういうエリート感覚で政策を決めているんだろうなと思うと悔しい。
〇「一度でも厚生労働省に身を置き・・・者として、身をもって示したい」
●さすがエライ!しかし、高級官僚の高い理想があったとしても庶民と同じように身体的だけでなく心理的社会的な苦悩に苦しまなければならないのだ。
・患者が最後にみつけたやるべきこと、その中で息子との和解に役に立ったのがプラレールだったのだ。

「人魚の願い」
〇「癌の子でごめんね」
・もうこれは反則だ!小児の話は泣ける。現場での経験はないが、癌末期の少女と若い両親の在宅医療と看取りの話。
〇「酷なことを申しますが、萌ちゃんはベッドの上にいてもいなくても、命はあとわずかです。だからこそ、特別な一日がほしい。そういう心からの願いなんだと思います」
・海に行きたいという萌ちゃんの希望を叶えるために行ったのが、石川県の千里浜なぎさドライブウェイというのがまたご当地的だった。
・主人公の父はリハビリ中に脳梗塞を発症、痛みに苦しむようになり、その疼痛コントロールに苦慮している。

「父の決心」
〇「はっきり言おう。積極的安楽死を頼む」
〇「これ以上、痛みに耐えていると必ず錯乱する。思ってもみん暴言を吐いてしまうかもしれん。みっともない声を出すかもしれん。そういう姿はさらしたくないんや」
・神経内科医である父親からそう求められたらどう答えたらよいのか?東京の大学病院でまだ救急医療をやっていたら別な答えだっただろうと予想されるが、地元の金沢に帰って在宅医療に関わりながら父親と生活するようになった主人公が選んだ答えは?
・厳密にいえば、判断はいくら娘であっても一人で決断するのではなく倫理委員会的な場かできなくても複数の医師や医療介護スタッフと話し合うべきだったと思うし、非がん疾患としての緩和ケアが本当に十分なされていたのかどうか検討の余地があると思った。

・決してこの小説を否定するつもりもなく、実はいい小説だと思っているのだが、誤解があると良くないと思って念のため。同じようなテーマを扱った小説は見つけたらなるべく読むようにしている。さすが現役の医師である南さん、「安楽死」と「尊厳死」の違いについて正しく書かれていて安心して読むことができた。







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Last updated  2020.09.07 20:54:30
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