カリオストロ伯爵夫人を、
ベティ・デイビスの眼技を参考にして
演じたというクリスティン・スコット・トーマス。
【ベティ・ディビスの爪はいつも真紅☆】
「偽りの花園」と
「イヴの総て」は美輪明宏さんの「観ておくべき美女」・
映画リストのベティ・ディビスの項目にあげられています。
【美輪明宏著 天声美語】
映画のモチーフをあげてみると、伯爵夫人は
黒蜥蜴のモデルかもと。
宝石、ボートのアジト、仮面、異形の手下、不老美麗、小瓶をあおる手つき。
英仏の探偵物から多大なヒントを得ていたと思われる
江戸川乱歩の小説に
散りばめられた題材が東西の作品で華開くのを観られるのは心愉しいこと。
【女賊三様】
また映画は100年前の古色に陥らぬよう気を配り、19世紀末というよりは、
むしろ1930年代のファッションにヒントを得たとか。
黒蜥蜴を現代に蘇えらせた美輪さんがまったく同じことをおっしゃっていたのも
興味深く。
(最も洗練され、見るべき学ぶべきもののある最後が1930年代だと言及されています。)
「お洒落上手な強烈な個性を持つ一風変わった女性で、どこにいても
観客も登場人物も驚かせる、
幻想(ファンタスム)を象徴する存在」
映画の美術担当・ラロック氏の言葉にも、二人の魔女の共通性を感じます。
愛するものに対峙する方法はどうでしょう。
怪盗紳士ルパンが探偵事務所を開くという作品もあるのですけれど、
黒蜥蜴のセリフにもあるように、探偵が怪盗とイコールすることも
特に恋においてはままあるようで。
「冷静と情熱と優雅」
永遠の若さ美しさを求める二人。
黒蜥蜴の不老の手段は、宝石を蒐つめ、若者を剥製にすること。
明智小五郎に自分の心を知られ、自らの死を選んだのは、
その愛と美しさを永遠に留めるためでもある。
映画の伯爵夫人の方は、恋人が裏切っても、
彼らが目の前で彼女の歳を越えて老いてしまっても、
なお自らの若さを保ち、生き抜かねばならない。
一方は死によって、片方は骸を背負うような生によって
永遠を手に入れてしまった者たちの、凄絶な愛し方。
「男の中で一等卑劣なあなた、これ以上みごとに女の心を踏みにじることはできないわ。」
「すまなかった。・・・しかし仕方がない。君は女賊で、僕は探偵だ。」
「でも心の世界では、あなたが泥棒で、私が探偵だったわ。あなたはとっくに盗んでいた。
私はあなたの心を探したわ、探して探して探しぬいたわ。でも今やっとつかまえてみれば、
冷たい石ころのようなものだとわかったの。」
(三島由紀夫 「黒蜥蜴」 1951年)
宮崎駿監督の「カリオストロの城」のセリフにもこのようなものがございましたね。
CMにご一緒に出演されているのを拝見しても、繋がっているなとつくづく。
【二つのお城】
♪誰が夢を叶えてくれる?♪
「あなたの心です☆」
連れ去り、奪い、虜にし、教示していたつもりが、
いつのまにか立場が逆転していたときに
いさぎよく手放すか、あくまで求め続けるか。
相手に選ばせるか、自ら去るか。
永遠のテーマでございます。
「ルパン」鑑賞・恋と魔女とファントムの系譜